SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及とともに、「インフルエンサー」という存在が知られるようになってきました。近年はSNSを活用したマーケティングが重要視されており、インフルエンサーを起用した施策に取り組む企業も増加しています。今回は、インフルエンサーの意味や種類、インフルエンサーマーケティングの魅力やメリットについて、現役フリーアナウンサーで日本語教師の阿部佳乃が詳しく解説します。
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<目次>
・インフルエンサーの意味
・インフルエンサーの種類
・【SNS別】インフルエンサーの呼び方とマーケティングの特徴
・インフルエンサーを起用するメリット
・ステマ(ステルスマーケティング)に注意
・まとめ
インフルエンサーの意味
「インフルエンサー」とは、インターネット上で情報を発信し、世間や人々の思考、行動に大きな影響を与える人のことです。「影響を与える」「感化する」といった意味を持つ英語「influence」に由来する言葉です。現代では、「SNSで多くのフォロワーを持っている人」、特にSNSでの発信を通して消費者の購買行動に影響をもたらす「オピニオンリーダー」を指すことが一般的になってきました。・インフルエンサーの人物像
「世間に対して影響力を持つ人」は、広い意味で「インフルエンサー」と呼ぶことができます。これまでの「インフルエンサー」といえば、テレビ、ラジオや雑誌などのメディアに出演するタレントやモデル、スポーツ選手、アイドルといった、いわゆる「芸能人」や「有名人」でした。ところが、ブログサービスやSNSなどが普及し始めてからは、「消費者の購買に関わる意思決定に影響を与えうる人物」であれば、知名度にかかわらず「インフルエンサー」と呼ばれるようになっています。例えば、特定のジャンルや世代から圧倒的な支持を得ている「一般人」も、インフルエンサーに含まれると言えるでしょう。
インフルエンサーと呼ばれる一般人の存在が認知されるようになったのは、ブログサービスが流行し始めた2000年代中頃だったといわれています。当時は、個人ブログでありながら数万人の読者を持つ「カリスマブロガー」と呼ばれる一般人も存在していました。近年では、多くのインフルエンサーがInstagramやX(旧:Twitter)などのSNSを中心に活動しています。
・インフルエンサーマーケティングの魅力
インフルエンサーマーケティングとは、SNS上で絶大な影響力を持つインフルエンサーに、自社の商品・サービスのPRを依頼し、口コミを通して見込み客にアプローチするマーケティング手法です。ここ数年間で広まり始めたことから、ノウハウや実績を多く持つ企業はまだ少ないですが、今後さらなる活用が広がっていくことが見込まれます。
インターネットやSNSの普及は、消費者の購買行動にも大きな変化をもたらしました。これまでは、企業から発信される広告・宣伝を見て商品を買う、という受動的な行動がほとんどでしたが、近年は「購入前にスマホで商品について調べる」「SNSでサービスについての口コミをチェックする」など、消費者が能動的に情報を入手し、購入の意思決定に役立てようとする動きも増えています。インフルエンサーマーケティングは、従来の手法のように、メディアの広告や宣伝によって企業から消費者に直接働きかけるのではなく、インフルエンサーを通して「より消費者に近い視点・立場」から情報発信を行うことが特徴です。「押し売り」のような印象が薄れて訴求力が上がり、消費者からの共感と支持を得やすくなる点が、大きな魅力と言えます。
また、各SNSのシェア機能によって、インフルエンサーの投稿がさらに拡散されれば、そのインフルエンサーをフォローしていない別のユーザーの目にも留まる可能性があります。いわゆる「バズる」状態になった場合、短期間で飛躍的に認知度が高まり、新規顧客の獲得が加速することも見込まれます。
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インフルエンサーの種類
インフルエンサーは、フォロワーの数によって細かく分類されます。影響力の大きさもそれぞれ異なりますので、起用を検討する際の参考にしてみましょう。・メガインフルエンサー
メガインフルエンサーは、SNSのフォロワー数が数百万人規模の投稿者です。知名度が高い芸能人やタレント、アーティストなどが当てはまります。影響力が大きく、圧倒的な拡散力を誇る一方で、フォロワーのエンゲージメント率(いいね・コメント・シェアなど)は低いという特徴があります。
・ミドルインフルエンサー
ミドルインフルエンサーは、SNSのフォロワー数が10万~数十万人程度の投稿者です。ファッションや美容、グルメなど、特定のジャンルに関する発信を行う有名インフルエンサーが多いでしょう。こちらも、リーチ力や拡散力が高いものの、エンゲージメント率やコンバージョン率(実際に購入に至ったか)は、やや低いとされます。
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・マイクロインフルエンサー
マイクロインフルエンサーとは、SNSで数万人のフォロワーを持つ投稿者のことです。あるジャンルにおいて強い影響力を持っており、芸能人・著名人だけでなく一般のインフルエンサーも少なくありません。メガインフルエンサーと比べるとリーチ力が低いものの、近い距離感でフォロワーとコミュニケーションをとっていることが多いため、エンゲージメント率が高いことが特徴です。
・ナノインフルエンサー
ナノインフルエンサーとは、SNSのフォロワー数が1万人以下の投稿者です。拡散力は決して高くないものの、親しい友人のような感覚でフォロワーとつながっていることから、エンゲージメント率やコンバージョン率が非常に高いことが特徴です。狭いジャンル、特定の層を狙って情報を発信したい場合に有効とされています。
【SNS別】インフルエンサーの呼び方とマーケティングの特徴
インフルエンサーは、活躍しているフィールドやSNSごとに特定の呼び名があります。ここでは、各SNSの特徴とインフルエンサーの呼び方についてご紹介します。・YouTube(ユーチューバー)
YouTubeは、動画投稿型のSNSで、日本での利用者は約7000万人とされています。利用者は10~20代が中心ですが、50代前後の中高年層まで幅広い世代に利用されていることが特徴です。YouTubeにおけるインフルエンサーは「YouTuber(ユーチューバー)」と呼ばれます。人気の高さはそれぞれが持つチャンネルの登録者数の多さに比例し、数百万人規模の登録者数を持つYouTuberも珍しくありません。
また、YouTuberはテレビなどのメディアに出演することも増えており、インターネット以外での知名度も高まりつつあります。動画コンテンツを生かした施策を打ち出す場合に適しており、ターゲット層に合ったYouTuberを起用することで高い訴求力が期待できます。
・TikTok(ティックトッカー)
TikTokも、動画投稿型のSNSですが、投稿される動画は15秒~3分程度と短く、スマートフォンを縦にしたまま視聴できる縦型動画であることが特徴です。アプリ内に用意されている音楽やエフェクトなどを使い、誰でも簡単にダンス動画などを投稿することができます。日本国内でのユーザー数は約1,700万人程度で、10~20代の若い世代を中心に利用されています。近年は30~40代前後のユーザーも増加傾向にあります。
TikTokにおけるインフルエンサーは「TikToker(ティックトッカー)」と呼ばれます。動画広告は、広告っぽさを強く感じてしまうと最後まで見てもらえない可能性がありますが、インフルエンサーを起用することで広告感を和らげ、さらにフォロワーにシェアしてもらう、といった効果が見込めます。
・Instagram(インスタグラマー)
Instagramは、画像投稿型のSNSで、国内のユーザー数は約3300万人とされています。主なユーザーは10~30代の若い世代で、コスメやファッション、グルメ、暮らしなど、各ジャンルのトレンドが発信されています。「インスタ映え」という言葉が流行したように、投稿はビジュアルの美しさが重視される傾向にあります。
Instagramで活躍するインフルエンサーは、「インスタグラマー」と呼ばれます。アプリにはショッピング機能があるため、インスタグラマーのPR投稿からすぐに商品の購入ページをチェックすることができます。ユーザーの購買アクションにつなげやすい点は、Instagramの大きなメリットと言えるでしょう。
・Twitter(アルファツイッタラー)
X(旧:Twitter)は、短文投稿型のSNSです。日本でのユーザー数は約4500万人とされています。20代を中心に若年層のユーザーが多いですが、40~50代のユーザーも比較的多いです。一度に投稿できる文字数は140字までと少ないものの、リアルタイムの情報を得られることが魅力です。特に、リポスト(旧:リツイート)機能はXにおける最大の特徴であり、爆発的な情報拡散力があります。企業が認知度向上、販売促進などを目的に実施するプレゼント企画キャンペーンも人気の手法です。
Xで多くのフォロワーを持つインフルエンサーは、「アルファツイッタラー」と呼ばれます。Xにおけるマーケティングでは、拡散力を生かして幅広く訴求していくことが重要です。
・ブログ(ブロガー)
アメーバブログやはてなブログなど、各種ブログサービスで発信し、多くのPV(ページビュー)を獲得する投稿者を「ブロガー」と呼びます。SNSが普及する前の2000年代に、「パワーブロガー」「カリスマブロガー」と呼ばれていた投稿者は、読者に大きな影響を与えるインフルエンサーでした。
その中でも2014年に登場したnote(ノート)は、注目度の高いブログサービスです。マンガやイラストなどのコンテンツが投稿できる、他のSNSと連動できる、記事を有料販売できる、サービス内でタグ検索ができるなどの便利さから、SNSが主流の現代においても広く活用されています。
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インフルエンサーを起用するメリット
マーケティング活動にインフルエンサーを起用するメリットはさまざまですが、ここでは大きく2つのメリットをご紹介します。・ターゲット層へ効率的にリーチできる
1つ目のメリットは、自社の商品・サービスがターゲットとする層に対し、効率的にリーチできる点です。インフルエンサーは、ファッション、コスメ、グルメ、暮らしなど、特定のジャンルに関する情報を積極的に発信しています。フォロワーはそれらのジャンルに興味・関心を持っているため、年代や性別、好みなどの属性が似ている可能性が高いと言えます。
フォロワーの属性とターゲット層がマッチしたインフルエンサーを起用することにより、見込み客に対しダイレクトなアプローチが可能となります。例えば、おしゃれなトラベルグッズをPRしたい場合、旅行情報を発信している女性のインフルエンサーを起用し、製品を紹介してもらうといった事例が挙げられます。
・ブランドの認知向上が期待できる
2つ目のメリットは、ブランドの認知向上効果が高い点です。ユーザーは、自分が憧れている、あるいは趣味や好みが一致しているインフルエンサーを能動的にフォローし、ポジティブな感情で情報を受け取っています。「いつも参考にしているインフルエンサー」が商品・サービスを紹介することで、説得力や信頼感が高まり、ユーザーが好意的に捉えやすくなります。価値や魅力に共感してもらうことができれば、さらにシェアや拡散といった動きが起こるため、認知度の向上に貢献するでしょう。
また、最近のSNSは広告を削除できる有料機能を搭載しているものがほとんどです。インフルエンサーにPR投稿を依頼すると、通常の投稿と同様に商品・サービスの情報を見てもらうことができます。広告を避けるユーザーに訴求できる点も、認知向上につながるポイントと言えます。
ステマ(ステルスマーケティング)に注意
インフルエンサーを起用したマーケティングを行う際は、ステマ(ステルスマーケティング)と受け取られないよう注意が必要です。ステルスマーケティングとは、商品・サービスの紹介案件について、企業から「宣伝を依頼された」という事実を隠し「良い商品を見つけたからおすすめします」と、あたかもインフルエンサー自ら商品を見つけ、能動的に発信しているように見せる行為です。ステマは、2023年10月から景品表示法における違反行為として規制の対象となりました。景品表示法とは、虚偽あるいは故意に商品を良く見せようとする表示などによって、合理的な商品選択が阻害され、消費者が不利益を被ることを防ぐ法律です。ステマ規制に違反した場合の罰則は、依頼元である事業者(企業)にのみ課せられます。企業がSNSなどを活用して商品を宣伝することや、インフルエンサーなどの第三者に宣伝を依頼すること自体は認められています。ただし、「企業の意図によって作成、依頼された広告」であるかどうか判別できない投稿は、ステマとみなされます。
具体的には、以下のような行為がステマに該当します。
・インフルエンサーが企業から報酬を受け取り、PRであることを明記せず商品を紹介する
・インフルエンサーが無償で商品の提供を受け、PRであることを明記せず、商品を肯定的に評価する内容の投稿をする
・一般のSNSユーザーが、PRであることを明記せず、商品についての投稿をする
・自社の従業員でありながら、その事実を隠して商品を紹介する
多くのユーザーは、ステマに対してネガティブな印象を抱いています。インフルエンサーによるPR投稿は、広告感が薄く、ある意味「さり気なく」宣伝が行われます。インフルエンサーマーケティングで成果を出す上では重要なポイントですが、「ステマと誤解されるリスク」があることを理解しておきましょう。
また、インフルエンサーを支持するフォロワーは、インフルエンサーに対する信頼感を持っています。実際にはステマでなくても、誤った解釈が広がると、ユーザーは「裏切られた」と感じてしまうため、批判や炎上につながりかねません。ブランドや企業の信用をなくすおそれもありますので、事前に投稿ルールや決まりごとを定めた上で、丁寧に進めていくことが大切です。
まとめ
さまざまなSNSが普及、拡大している中で、高い影響力を持つ「インフルエンサー」はますます存在感を増しています。消費者の購買行動が変化している今、SNSを活用したマーケティング活動に力を入れたいと考える企業は多いでしょう。各SNSで活躍するインフルエンサーを起用すると、売り込みたいターゲット層にアプローチしやすくなり、消費者の認知度や購買意欲の向上が期待できます。自社の商品・サービスにマッチしたコンテンツやターゲット層を見極めて、適切にマーケティング活動を実施しましょう。■執筆者プロフィール 阿部 佳乃(あべ よしの)
アナウンサー×日本語教師/元TBSテレビあさチャン!報道リポーター。大学卒業後、佐渡ケーブルテレビを経て、UX新潟テレビ21/NHK水戸放送局キャスター/とちぎテレビアナウンサー。現在は、アナウンス講師、ナレーター、イベント司会等、フリーランスで活動しながら、大学や日本語学校で留学生に「日本語」を教えている。趣味は、旅行(47都道府県制覇)と声楽、読書。