数あるマーケティング手法の中で、近年SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の広がりとともに注目を集めているのが「バズマーケティング」です。従来のマーケティング手法よりも短期的・爆発的な情報の拡散が期待できるとされ、SNS上で「バズる」ことを狙ってプロモーションを行う企業も増加しています。今回は、現役フリーアナウンサーの新保友映が「バズマーケティング」の手法やメリット・デメリットについて、具体的な事例を交えながら詳しく解説します。
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<目次>
・バズマーケティング(Buzz Marketing)とは?
・バズマーケティングの代表的な手法
・バズマーケティングのメリット
・バズマーケティングのデメリット
・バズマーケティングの成功事例
・まとめ
バズマーケティング(Buzz Marketing)とは?
はじめに、「バズマーケティング」の概要と目的について整理しておきましょう。・バズマーケティングの概要
「バズマーケティング」とは、SNSなどにおいて意図的・戦略的に口コミを発生させ、商品・サービスの情報拡散、認知度向上を狙うマーケティング手法です。バズマーケティングの「バズ」は、「(ハチが)ブンブンと音を立てる」「がやがやと話す、ざわつく」という意味の英語「buzz」に由来しています。ある情報や話題がSNS上で爆発的に拡散し、多くの人から注目を集めている様子を表す「バズる」という言葉も生まれており、SNSを利用する世代に広く浸透・定着しています。
「バズる話題」の中には、「偶然SNSで広がった」「たまたま有名人の目に留まって拡散した」といったようなケースもありますが、バズマーケティングは「どのようにアプローチすればターゲット層の目に留まるか」「爆発的に話題を拡散させるにはどうすればよいか」を徹底的に分析した上で、戦略的にプロモーション活動を進めていくことが特徴です。
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・バズマーケティングの目的
バズマーケティングの大きな目的は、自社の商品やサービスの認知度を短期間で向上させ、消費者に興味を持ってもらうことです。近年は消費者の需要が多様化している上、トレンドの移り変わりも非常に早くなってきています。激しい市場競争を勝ち抜いていくためには、多くの人から注目を集め、支持と共感を得ることが何よりも重要だと言えます。
・バイラルマーケティングとの違いは?
バズマーケティングと同様、口コミを活用したマーケティング手法に「バイラルマーケティング」があります。バイラルマーケティングとは、既存のユーザーに対し、口コミで自社の商品やサービスを紹介してもらえるよう働きかける手法です。「バイラル」は、「ウイルスの」という意味で、ウイルスが人から人へと広がるように情報が拡散されていくことを狙うものです。「口コミで広がる」という点は、バズマーケティングと共通していますが、バイラルマーケティングはインターネットが普及し始めた2000年前後に誕生したといわれています。一方、バズマーケティングはSNSの登場以降に広まった、比較的新しい手法です。
また、バイラルマーケティングは消費者の「商品の感想を誰かに伝えたい」という心理を活用し、自然に口コミが広がっていくことを促す仕組みですが、バズマーケティングは素早い拡散を狙って企業が積極的に働きかけていくという特徴があり、両者には明確な違いがあると言えます。
バズマーケティングの代表的な手法
次に、バズマーケティングに活用される代表的な手段を紹介します。・XやInstagram、TikTokなどSNSを活用する
バズマーケティングでは、X(旧:Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSを活用することがほぼ必須です。自社のSNSアカウントによる投稿を、SNSユーザーにリポスト(リツイート)、いいね、ハッシュタグ、シェア、コメントなどの機能で拡散してもらい、「バズり」を狙います。また、SNSのトレンドやおすすめ、急上昇ランキングなどに商品名や投稿を表示させることも、バズマーケティングに含まれます。
・オリジナルハッシュタグを効果的に活用する
プロモーションやキャンペーンのために、オリジナルのハッシュタグを作って活用することも、投稿の拡散に効果的です。ハッシュタグとは、「#」と任意のキーワードを組み合わせて投稿に付加するもので、内容を端的に表したり、分類したりする目的で使われます。ハッシュタグは青色のリンクで表示されるため、SNS内で同じハッシュタグがついた投稿は、検索で簡単に見つけることができます。例えば、SNSキャンペーンを実施する際に、参加条件として「#会社名+◯◯」のハッシュタグを付加して投稿してもらう、といった使い方が挙げられます。
・インフルエンサーを起用する
自社の担当者による発信だけでなく、インフルエンサーを起用することも有効です。インフルエンサーとは、XやInstagramなどのSNSにおいて、多くのフォロワーを持つ投稿者のことです。投稿者は、美容やファッション、グルメなど、ある特定の分野に関する情報を発信しています。「インフルエンサーの投稿を参考に、フォロワーが商品を購入する」ケースもみられ、消費者の購買行動にも大きな影響を与えています。自社の商品・サービスを拡散力のあるインフルエンサーに利用してもらい、フォロワーに向けて紹介・宣伝してもらうことで、「バズり」を起こすことも可能です。
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・画像や動画などのコンテンツも投稿する
特にInstagramやTikTokなどのSNSは、画像や動画コンテンツでのプロモーションが効果的です。視覚で分かりやすく伝えることで、SNSユーザーの注目を集めることが期待されます。また、自社商品の活用方法などを伝えるキャッチーな動画を制作し、SNSに投稿してバズらせる方法もあります。
バズマーケティングのメリット
バズマーケティングはSNSを活用するため、SNSマーケティングのメリットを受けやすいことが特徴です。ここでは、バズマーケティングのメリットを3つご紹介します。・購買意欲の向上につながる
バズマーケティングの大きなメリットは、消費者の認知度と購買意欲の向上が期待できる点です。SNSは、世界中にユーザーが存在し、その規模は数十億人ともいわれていますので、商品・サービスの認知拡大に貢献します。
また、SNSを活用する若い世代を中心に、「商品購入を検討する際、SNSの口コミを参考にする」という消費者が増加しています。このような消費者に対して、「SNSでバズっていたから買ってみよう」と購買を後押しする役割もあるでしょう。
・費用対効果を得られる
バズマーケティングは、成功すれば絶大な費用対効果を得られます。一度投稿がバズると、ユーザーの間で爆発的に情報が広がるため、効率良く需要を掘り起こしていくことが可能です。
テレビCMや街頭広告など、SNS以外の手段で同じような効果を得ようとする場合、莫大(ばくだい)な費用と時間がかかります。一方、SNSへのコンテンツ投稿は、それらの手段と比べると低予算で実施できるため、狙い通りにバズらせることができれば、コストパフォーマンスの高い手法と言えます。
・ターゲット層にアプローチしやすくなる
SNSを活用したバズマーケティングの魅力は、ターゲット層へのアプローチがしやすいという点です。テレビや雑誌などのマスマーケティングは、最大顧客層に対してリーチすることができますが、需要が細分化している今、一人ひとりの消費者に刺さるアプローチは難しいといわれています。
他方SNSは、興味・関心のあるユーザーを自分で探してフォローし、能動的に情報を得る媒体です。ターゲットとなり得る層に対し、絶大な影響力を持つインフルエンサーを起用してマーケティング活動を行うことにより、企業が直接訴求するよりも高い効果を得られる可能性があります。「◯◯さんが紹介していたから」のように、信頼する相手からポジティブな情報を聞くと、購買アクションにつながりやすいといわれています。
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バズマーケティングのデメリット
バズマーケティングは、近年の購買行動にマッチしたアプローチ手法と言えますが、デメリットも存在します。取り組みを進める前に、デメリットと注意点についても確認しておきましょう。・ネガティブなイメージが拡散される恐れがある
バズマーケティングに取り組む際は、商品・サービスに対する好意的な意見だけでなく、ネガティブな声も広がりやすい点を理解しておきましょう。「バズる」目的の投稿が「炎上」してしまったというケースも少なくありません。
・拡散の規模やスピードをコントロールしにくい
もう1つのデメリットは、SNS上での拡散規模やスピードを企業側がコントロールすることが難しい点です。投稿が拡散されて施策が成功したとしても、予想以上に受注が増えたことで注文を断らざるを得ない状態になってしまったり、商品やサービスの質が低下してしまったりすると、ネガティブな印象を残すことにもつながりかねません。事前に全ての可能性を想定しておくことは難しいものの、コントロールしきれないことを考慮に入れておく必要があるでしょう。
バズマーケティングの成功事例
近年は、バズマーケティングの成功事例がメディアなどで取り上げられる機会も増えており、自社でも「バズり」を狙いたいと考えるマーケティング担当者は少なくないでしょう。最後に、バズマーケティングに成功した企業の実例を3つご紹介します。・飲食店
麺類を提供する飲食チェーン店は、エイプリルフール企画で「深海の巨大生物を天ぷらにして提供する」というページを公開しました。このキャンペーンはSNSで話題を呼び、ホームページへのアクセスは24倍に伸びたとされています。SNSでは企業に対する好感を示す投稿が広がったほか、テレビやニュースサイトでも大きく取り上げられました。
ポイントは、「その時のトレンドを押さえている」「誰かに伝えたくなる内容」である点です。また、飲食店としてのブランドイメージを下げないよう、「食べ物をおいしそうに見せる」「本気でやりきる」ことを掲げて企画を実施したそうです。
・食品メーカー
お菓子や健康食品を製造する食品メーカーは、人気商品の記念日に合わせて指定のキーワードをSNSに投稿してもらい、世界記録を目指すキャンペーンを実施しました。また、商品が棒状であることになぞらえて、ロケットを飛ばすプロジェクトを企画し、実際に北海道でロケットの打ち上げを行いました。打ち上げの様子は生中継され、キャンペーンの投稿数は目標を100万件以上上回るという大きな成果を得られました。
このケースでは「目標と時間制限をSNSのユーザーと共有する」「リアルタイムで企画を進め、ユーザーと一緒に盛り上がり、口コミを生み出す」ことがポイントとなっています。
・大手電気通信事業者
大手電気通信事業者は、SNSページ開設の周年記念企画として、「携帯電話料金一生分無料キャンペーン」を実施しました。一生分の携帯電話代に相当する商品券(約500万円分)を1人に、さらに1000円分の商品券を1000人にプレゼントするという内容で、15万人以上の応募があったそうです。
高額のプレゼントに当選するのは1人のみでしたが、ユーザーに大きなインパクトを与えたことで、多数の応募を獲得することができました。
まとめ
消費者の購買行動にSNSが活用されている今、バズマーケティングは注目すべきマーケティング施策の1つと言えます。狙った層へのアプローチが容易になるだけでなく、成功すれば高い費用対効果が得られるという点は大きなメリットでしょう。一方で、ネガティブな口コミの拡散やコントロールの難しさなど、SNSならではのリスクもありますが、十分な分析を行い、適切な対応ができれば、認知度向上や顧客の獲得に大きく貢献するでしょう。■執筆者プロフィール 新保 友映(しんぼ ともえ)
山口県岩国市出身。青山学院大学卒業後、2003年にアナウンサーとしてニッポン放送に入社。『オールナイトニッポンGOLD』のパーソナリティをはじめ、『ニッポン放送ショウアップナイター』やニュース情報番組、音楽番組など担当。2018年ニッポン放送退社後はフリーアナウンサーとして、ラジオにとどまらず、各種司会、トークショーMC、YouTube、Podcast、話し方講師など幅広く活動。科学でいじめのない世界をつくる「BE A HEROプロジェクト」特任研究員として、子どもたちの授業や大人向け講座の講師も担当している。