「~になります」は間違い? 社会人として覚えておくべき正しい敬語と使い方

日常生活で非常によく聞く間違った敬語の1つが「~になります」です。今回は「~になります」の正しい意味や使い方と、注意の必要な間違った使い方を現役フリーアナウンサーの酒井千佳が解説していきます。

「~になります」は間違い? 社会人として覚えておくべき正しい敬語と使い方
「~になります」は間違い? 社会人として覚えておくべき正しい敬語と使い方

「この商品は200円になります」「こちらが本日の資料になります」など、日常生活でよく耳にする「~になります」という表現。実は今挙げた2つの例は間違った敬語です。ビジネスの場面でこうした間違った敬語を使ってしまうと相手からの信用を損なってしまうかもしれません。

今回は「~になります」の正しい意味や使い方と、注意が必要な間違った使い方を現役フリーアナウンサーの酒井千佳が解説していきます。

関連記事:【正しいビジネス敬語】間違いやすい使い方やメールの言い回しをアナウンサーが解説【例文あり】

<目次>
そもそも「~になります」の意味とは
「~になります」の間違った使い方
「~になります」を言い換えたい場合は?
「~になります」の正しい使い方
「~になります」と「~となります」の違い
まとめ

そもそも「~になります」の意味とは

「~になります」というのは、「~になる」を丁寧に表現した敬語です。敬語には、大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つの種類がありますが、このうちの「丁寧語」にあたり、立場の上下に関係なく、事実を丁寧に表現するために使われる言葉です。また、「~になる」というのは、動作や作用の結果を表すもので、何かが新しく生じたり、状態が変化したりする場合に使う表現です。

「~になります」の間違った使い方

「~になります」の間違った使い方として代表的なのは、以下のようなものです。

【例文】
「(お店で)こちらの商品は1000円になります」
「(レストランで)こちらがご注文の品になります」

商品の値段は変化するものではなく初めから決められていますし、注文した料理も届いた時には完成していて特に変化するようなものではありません。状態が変わったり、新たに生じるものがあるわけではなく、単に事実を述べる場面で「~になります」というのは誤った使い方です。

しかし、こうした間違った使い方の「~になります」は日常でよく聞く言い回しでもあります。こうした表現が広がっている背景には「~です」と言い切らないことで、より丁寧で柔らかい印象を与えたいという意図があるのかもしれません。

また、例文にあげたような場面で、「お会計は、合わせて3000円になります」という場合は、複数の金額を足し合わせた結果、3000円という金額が算出されたと解釈できますので間違いとは言えません。レストランの例でも、オープンキッチンなどで食材や調理工程を見せながら「こちらがご注文の品になります」という場合は、今はまだ料理として完成していないものの、調理をすすめた結果注文の品に仕上がると解釈できるので間違いとは言えないでしょう。

このように、状況の微妙な違いで正しい表現にも間違った表現にもなりうることも、誤用が増えている一因かもしれません。

「~になります」を言い換えたい場合は?

変化のない事実について話す場合は、「~になります」ではなく「~です」とシンプルに言い切るのがよいでしょう。より丁寧に伝えたい場合は「~でございます」という表現で言い換えることもできます。

「~になります」の正しい使い方

特に変化のないことに対して「~になります」というのは適切ではありませんが、前述のお店の会計やレストランでの例でも説明したとおり、状態が変化したり、動作の結果を表す場合に「~になります」というのは正しい表現です。「~になります」の正しい使い方の例文を以下に示します。

【例文】
「部署の統廃合が行われて、来年度から新体制になります」
「雪が溶けると、まもなく春になります」

「~になります」と「~となります」の違い

「~になります」と「~となります」の意味に大きな違いはありません。「に」や「と」は格助詞で、いずれも動作や変化の結果や内容を表します。「~になります」と「~となります」は基本的に同じように使うことができます。
普段の会話や文章においてこの2つの表現のどちらを使うかは、微妙なニュアンスの違いで選択されることが多いようです。

・口語的か文語的かの違い
日常会話では、多くの場合「~になります」という表現が使われます。「~となります」は、「~になります」に比べると文語的でやや堅苦しい印象を与えるため、フォーマルな場や、不特定多数の人に向けて発信する場面で使われることが多いようです。

【例文】
(知人との会話で)
「次にお会いできるのは来週になりますね」

(会見などで)
「正式な発表ができるのは、来週となる見通しです」

・想定できる結果かどうかの違い
「~となります」は「~になります」に比べて、示される結果が想定していないものである場合が多いという違いもあります。「~になります」は当然の結果や周知の事実を表すのに対し、「~となります」という場合は、その結果を強調する効果があり、「(意外にも・想定外に)~となった」というニュアンスを含みます。

【例文】
(~になる)
「まもなく日が暮れて夜になります」
「オタマジャクシは成長してカエルになります」

(~となる)
「検証を行ったところ、このような結果となりました」
「本日の会議は中止となります」
「荒天のため、全線で運転見合わせとなります」

まとめ

「~になります」という表現は、「~になる」を丁寧に表した敬語表現で、これ自体は正しい日本語です。ただ、「~になる」は動作の結果や状態の変化を表す言葉ですので、変化のない場面で「~になります」というのは適切ではありません。日常生活でも非常によく聞く表現ですので、直感的には誤りに気付きにくいかもしれませんが、注意が必要です。

ビジネスシーンではより丁寧で正しい敬語を使うことが求められますので、この機会に間違った使い方と正しい使い方の違いを確認してみてください。

■執筆者プロフィール
酒井千佳
酒井 千佳(さかい ちか)
フリーキャスター、気象予報士、保育士。
京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。
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