オードリーは「東京ドーム」、出川哲朗は「横アリ」……お笑い芸人の“大箱”イベント急増の理由とは?

なぜ、芸人たちが大きな会場でイベントを開催するのか? その裏側に、元テレビ局スタッフの筆者が切り込みます。(サムネイル画像出典:『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』公式Webサイトより)

“ANNブランド”でラジオイベントが今後も増加か

いきなり、生臭い話をしてしまいましたが、ラジオやテレビ局が収益のためにイベントを開催するのは事実です。とはいえ、「稼ぎたい!」という気持ちだけで、イベントは成功しないでしょう。しっかりとファンを集められるビジネスモデルが確立されたから、ここ最近ではイベントが頻繁に行われていると考えます。

まず、ラジオ番組は、「公開収録」などファンイベントを開催し、パーソナリティとリスナーの交流を行っていた過去があります。よりパーソナリティとリスナーの熱量が高いメディアが長年にわたり作られているので、イベントを開催しても参加するファンが多いことに。ここ最近の大箱でのイベントにおいて、ラジオ番組発が多いのは納得の理由です。

テレビ番組よりファンとの距離感が近く、イベントを行った場合にお金を払ってでも現地まで来てくれる、ハードなリスナーが多く存在します。オードリーのイベントが東京ドームを超満員とし、チケットが完売したことからも熱量のすさまじさを感じられるでしょう。

かつて、オードリーは2019年3月に『オードリーのオールナイトニッポン 10周年全国ツアー in 日本武道館』を開催。さらに、テレビプロデューサーの佐久間宣行さんは、2022年に横浜アリーナで『オールナイトニッポン55周年記念 佐久間宣行のオールナイトニッポン0 presents ドリームエンターテインメントライブ in 横浜アリーナ』、ナインティナインは『ナインティナインのオールナイトニッポン歌謡祭』を横浜アリーナで開催しています。
 
『男・出川哲朗 還暦祭り』もラジオ番組とのつながりが強く、“オールナイトニッポンブランド”は大箱でのイベントを加速させている印象です。この流れは今後も止まることがなさそうで、さまざまなパーソナリティがイベントを開催していくことでしょう。

自粛期間を経てエンタメの楽しみ方にも変化が

しかし、過去にも人気番組は多かったはずなのに、なぜ最近になって頻繁にラジオパーソナリティによる大規模会場でのイベントが行われるようになったのでしょう? 理由としては、新型コロナウイルスによる行動の自粛が関係していると思います。日々の行動を制限された経験のある我々は、コロナ禍を経てエンタメを生で体感したいと考えるようになりました。

コロナ前よりも音楽フェスの公演数が増えたり、参加者が増加していることからも、ライブを楽しみたいと思う日本人が増えたことを実証しています。世の中的にもイベントに参加するハードルが下がり、コロナ前よりライブを楽しみたいという人が、肌感覚としても増えている気がしませんか?

その中で、ラジオ番組を聞いているリスナーも、実際にパーソナリティに会って、盛り上がりたいと考えるところ。佐久間さん、ナインティナイン、出川さんのイベントは、ミュージシャンも参加してフェス形式のイベントになりました。制作サイドも、みんなで盛り上がることができる構成にし、ハードなリスナーだけでなくライトなファンも参加して楽しめる仕組みに仕上げています。

そういった人たちが、大規模会場なら応募しやすいと考え、結果として参加者も増えたのでしょう。また、実績を積み上げたことで、「大箱」で思い切ってイベントをする芸人が増えていることが予測されます。

テレビの大規模イベントも増加していく?

そんなラジオの成功を見て、テレビ番組でも前述した『テレビ千鳥』をはじめ、『有吉の壁』(日本テレビ系)もイベント『有吉の壁 BREAK ARTIST LIVE THE FIRST』を2024年2月15日に有明アリーナで開催。大盛況のうちに幕を閉じました。今後、ラジオばかりでなく、コアな視聴者を抱えているテレビ番組も、大規模会場でのイベントを増やしていくことでしょう。
 
コロナ禍以降、TVerやradikoなどの見逃し・聞き逃し配信サービスが人気となり、ラジオやテレビの視聴形態が大きく変わりました。そんな中で、番組はライブに参加して一緒に楽しむという、新しい形の聞き方や見方が定番化していくのかもしれません。
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この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。

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