ニッポン放送の発表によると、現地には5万3000人が集結。さらに47都道府県の映画館など201会場で行われたライブビューイングなどに約5万2000人、オンライン生配信は約5万5000人が視聴し、計16万人が参加しました。
お笑いコンビとして前代未聞のイベントを成功させたオードリー以外にも、ここ数年お笑い芸人による大規模会場でのライブが多く開催されています。
2024年だけでも、1月には出川哲朗さんの還暦イベント『男・出川哲朗 還暦祭り in 横浜アリーナ』、2月にはバナナマンの2人が演じる「赤えんぴつ」よる『赤えんぴつin日本武道館』、福岡PayPayドームでは『博多華丸・大吉 presents 華大どんたく supportedバイ 洋服の青山』が行われました。
どのイベントも、チケットの入手が困難になるなど、大きな注目を集めています。また、2024年4月29日には、千鳥が『テレビ千鳥』(テレビ朝日系)のイベントとして、「幕張メッセ イベントホール」でイベントを開催すると発表。お笑い芸人による大きな会場でのイベントは今後も開催されていきそうです。
今回は、なぜお笑い芸人による「大箱」でのイベントが多発しているのか、元テレビ局スタッフの筆者が裏側を解説したいと思います。
そもそも、大規模会場はお笑いのイベントに適していない
まず、大前提としてお笑いイベントは、大規模な会場では積極的に行われてきませんでした。集客などの問題もありますが、大きな理由としては「お笑いは大きな会場に向いていない」と考えられているからです。基本、お笑いといえば漫才やコントがベースとなりますが、それらの演芸が大箱に適していません。漫才やコントを劇場で見たことがある人は分かると思いますが、舞台から距離が遠くなれば細かい所作や表情が見えなくなり、マイクを使っても声が聞きづらくなります。
実際、笑いの殿堂となる「なんばグランド花月」は、858席と決して大規模な会場ではないですが、漫才やコントを見るのにちょうどいい規模だといわれています。
また、芸人が開催するイベントは、どれもチケットが売れるとは限らないものです。テレビで活躍している芸人でも、地方のイベントで席を埋めるのに四苦八苦している様子を間近で見てきました。
そう考えると、ここ最近の大規模会場でのイベントを成功させている芸人たちは偉業を達成していることになり、完全にお笑いの歴史において転換期が起きていることになっています。
局単位でなく、番組としてイベントを打ち出せるように
では、なぜ最近になって横浜アリーナや武道館、東京ドーム、福岡PayPayドームで芸人によるイベントが行われるのでしょうか? 大きな理由の1つとして、ラジオ局、テレビ局の構造の変化があります。これまで、テレビやラジオが行うイベントといえば、フジテレビの『お台場冒険王』に代表される超大型イベントでした。ただ、これらのイベントはまさに局を挙げて行うもので、莫大(ばくだい)な人員が必要となり準備も入念に行う必要があります。しかも、失敗すれば大きな負債を抱える危険性もあるものでした。
片や、近年行われているイベントは、ほとんどが番組や芸人単位で進めているものばかり(『華大どんたく』は吉本オールスターのイベントですが……)。『お台場冒険王』などに比べると、ファンも一緒に作り上げるイベントが多く、関わるスタッフもグッとミニマムになります。そのため、失敗した際のダメージも少なく、局としてもイベントを打ち出しやすくなっている現状です。
コロナ禍を経て「オンライン配信」が成功のカギに
また、最近では「配信」を行えることが、大きな転換期になっていると考えます。オードリーの東京ドームを例に出すと、オンライン生配信を約5万5000人も視聴したことを考えれば、コロナ禍以降はイベントを自宅で見るのが普通のことに。配信収益でも売上を立てられるだけに、番組単体でもイベントが打ち出しやすくなりました。しかも、ファンを巻き込む形で行うので、どのイベントもグッズの売れ行きが良く、大きな収益源となっています。局にとってもより成功が見やすいものになり、番組単体でイベントを行うことを推進していると聞きます。特にテレビ局よりCM収益が小さく、副収入を獲得しづらいラジオはイベントで「稼ぐ」ことを主題としています。
ニッポン放送は『オードリーのオールナイトニッポン in 東京ドーム』『男・出川哲朗 還暦祭り』などでもしっかりと実績を重ねています。今後もニッポン放送が大規模なイベントをプロデュースする可能性は高く、過去にないライブを開催してくれそうです。