1:『マッチング』
原作のないオリジナル作品で、描かれるのはタイトル通りマッチングアプリによる出会いから始まる恐怖。ウエディングプランナーとして働く主人公がマッチングした相手は、初対面で「僕とあなたは運命で繋がっています」などと異様なことを話した上にストーカー化。同時に「アプリ婚」した夫婦を狙う連続殺人事件が起こり、主人公にも魔の手が忍び寄ることになります。目玉は主要キャスト3人。生真面目で恋愛に奥手な主人公にハマりまくりな土屋太鳳、セリフ以外からもヤバい雰囲気に満ち満ちたストーカー役の佐久間大介、優しいようで危うさも漂うプログラマーの金子ノブアキという、それぞれの内面や性格が相反する三角関係の物語をもってして、俳優の力が存分に発揮されていました。恐ろしい殺人鬼の所業や、ストーカー男の仕事場など、凝りに凝った美術や画も見どころです。
中盤で明かされる「秘密」の後にも手の込んだ仕掛けがあり、おそらく賛否両論を呼ぶであろうラストの落としどころも含め、二転三転する展開で十分に驚きを与えてくれます。マッチングアプリでの出会いに限らず、「知り合ったばかりの誰かを安易に信用してしまう危険性」は、劇中の「どんな人間にもいくつもの顔がある」というセリフからも分かるはずです。
2:『マダム・ウェブ』
アメリカンコミック「マーベル」のキャラクター、マダム・ウェブの若かりし頃を描く作品です。『ヴェノム』や『モービウス』などと世界観を同じくするシリーズの1つですが、物語は完全に独立しているので、予備知識なく見ても全く問題なく楽しめます。ほかのヒーロー映画と一線を画するのは、主人公が持つスーパーパワーはほぼ予知能力のみ(危険を事前に感じ取る第六感的な力もある)ということ。しかも「予知能力をうまくコントロールできないまま」「3人の少女を守ろうと奮闘する」様が面白く、職業が救命士であることが「誰かの命を守る」動機への説得力を増していますし、時には「誘拐犯だと間違われてしまう」様がコメディーとして昇華されていました。
敵キャラが『鬼滅の刃』(集英社)の鬼舞辻無惨を思わせる、陰湿な思考のもとで行動しているのも注目ポイントで、その男性からの支配的な環境や抑圧に対抗する、現代的な「女性たちの連帯の物語」にもなっていました。
正直に言って大味な展開が目立っていた気もしますし、本国アメリカでは批評・興行共に厳しいスタートとなっていましたが、物語運びはテンポが良く飽きさせませんし、個人的にはツッコミどころを超えていい意味で爆笑してしまうポイントが2カ所もあったので大好きです。いい意味でライトな「20年ほど前の娯楽作のノリ」を期待して見るのがいいでしょう。