ベーシックインカムの意味とは? 必要性やメリット・デメリット、導入国について解説

ベーシックインカムの正しい意味を現役フリーアナウンサー、日本語教師の阿部佳乃が解説した記事です。昨今ニュースでも話題にのぼるベーシックインカムの概要や歴史、各国の事例などをまとめています。ベーシックインカムの基礎知識を知りたい人はぜひ参考にしてください。

ベーシックインカムの意味とは? 必要性やメリット・デメリット、導入国について解説
ベーシックインカムの意味とは? 必要性やメリット・デメリット、導入国について解説

ニュースや新聞で目にすることがある「ベーシックインカム」という言葉。なんとなく意味は分かるものの、詳しい制度内容を知らないという人も多いのではないでしょうか。本記事では「ベーシックインカム」の意味や歴史を、現役フリーアナウンサー、日本語教師の阿部佳乃が解説します。各国の事例などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。

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<目次>
ベーシックインカムの意味とは
ベーシックインカムの歴史
ベーシックインカムのメリット
 ベーシックインカムのデメリット
ベーシックインカムが求められている背景
ベーシックインカムの日本での導入はいつ?
ベーシックインカムを試験的に導入した国
まとめ

ベーシックインカムの意味とは

「ベーシックインカム」とは「最低所得保障」のことです。国が、全ての人に対して最低所得額と同等のお金を与える制度や理念をベーシックインカムと呼びます。

・ベーシックインカムの基本的な概念と原則
ベーシックインカムの基本的な概念は、全ての個人が無条件で同じ保障を受けられることです。政府が唱える基本理念は以下のとおりです。

・個人単位:世帯主 ・ 世帯規模に関わりなく
・普遍性:所得や資産の多寡を問わない
・無条件性:稼働能力の活用などを求めない
・お金:用途の限られたクーポンなどではなく
・定期的:一回限りとか不定期ではなく(典型的には毎月など)

引用元:ベーシックインカムの理念に基づく所得保障制度の漸進的改革の可能性

・ベーシックインカムの語源
ベーシックインカムは「ベーシック(基本)」と「インカム(収入)」を合わせた言葉です。英語表記の頭文字を略して「BI」と表現されることもあります。

・公的扶助(生活保護)との違い
公的扶助(生活保護)には受給にあたり資産を持っているかなどの条件があり、ベーシックインカムは全員が無条件で受け取ることができます。ベーシックインカムは、誰もがいつでも、普遍的に受け取れることが原則となっているのです。 

ベーシックインカムの歴史

ベーシックインカムの歴史について紹介します。

・ベーシックインカムの起源・発祥
ベーシックインカムの概念は、イギリス人の「トマス・モア」氏によって提唱されたといわれています。トマス・モア氏の書籍『ユートピア』の中では、互いが協力し助け合う理想郷が描かれていました。食料や富など、さまざまな資産などを「分け合う」思想が起源だといわれています。

・初期のベーシックインカム構想
初期のベーシックインカムの構想は、働き方の多様化によって貧富の差が生じすぎないよう、一定額を国民に支給することが想定されていたようです。

・ ベーシックインカムの理論的進化
近年は、工業やAIの進化など、技術的な進歩によって人々の仕事が奪われる未来が懸念されています。そういった環境の中で、ベーシックインカム制度は、公平な社会構築に必要だと考えられるようになってきました。

ベーシックインカムのメリット

ベーシックインカムを導入することによって得られるメリットは、主に以下の4点です。

・メリット(1)貧困解決への寄与
全ての人が最低賃金と同程度のお金をもらえることで、貧困が解消される可能性があります。働けない環境の人や、ワーキングプアの人も、ベーシックインカム制度によって金銭的な余裕ができるようになるでしょう。

・メリット(2)少子化問題の緩和
最低限の保障が確約されれば、子どもを産み、育てたいと思う人が増える可能性があります。ベーシックインカム制度は、少子化問題の解消にも寄与すると考えられます。

・メリット(3)労働環境の改善
金銭的な余裕が生じることで、過度な労働を行う人が減るかもしれません。生活のため、長時間の労働を強いられている人や、若年層の労働者の労働環境が改善される可能性があるでしょう。

・メリット(4)多様なライフスタイルの実現
ベーシックインカム制度の導入によって、人々の自由度が上がることが予想されます。労働時間を減らすことがかなえば、これまでできなかった学習や余暇などを楽しめるかもしれません。

 ベーシックインカムのデメリット

ベーシックインカム制度のデメリットは主に以下の3点です。

・デメリット(1)財源の確保が難しい
国民1人ひとりに定額のお金を配るためには、当然ながら膨大な財源が必要です。例えば、1人あたり月7万円(20歳未満は3万円)を支給すると想定した場合、約94兆円もの予算が必要になるといわれています。(参考:ゆうちょ財団

・デメリット(2)労働意欲が削がれる可能性もある
ベーシックインカムの導入により「働かなくてもお金がもらえる」といった状況になり、労働の意欲がなくなってしまう人が現れるおそれがあります。場合によっては、必要な人材が確保できず、社会が回らなくなってしまうことも懸念されます。

・デメリット(3)既存制度を見直す必要が出てくる
ベーシックインカムを導入する場合、既存の生活保護を見直さなくてはなりません。数多くの制度改正や施行には、多大な労力がかかることが予想されます。

ベーシックインカムが求められている背景

ベーシックインカムが求められている背景には、以下の4点があげられます。

・経済格差が顕著になりつつある
日本では経済格差が顕著になりつつあるといわれており、これらの改善のためベーシックインカム制度の導入を求める声もあがっています。「正社員と非正規雇用者」または「女性と男性」などの分類において、得られる所得金額に差が出ているのが現状です。(参考:内閣府(第3章 成長と分配の好循環実現に向けた家計部門の課題(第3節)

・SDGs達成への貢献
SDGsで掲げられている「目標1.貧困をなくそう」に取り組むためにも、ベーシックインカムの導入が求められています。「1日2ドル以下で暮らすこと」が貧困の定義とされていますが、現在この金額で生活している人は、世界中に8億人も存在するといわれています。最低保障となる金銭を提供することで、多くの人が貧困から抜け出せる可能性が高まるでしょう。

・低賃金労働者の生活水準が下がってきている
日本銀行が2023年に行った調査によると「暮らし向きにゆとりがなくなってきた」と回答した人は全体の半数を超えています。増税や物価高もありますが、労働者の生活水準が下がってきている傾向にあり、何かしらの補助が必要とされていると言えるでしょう。

【2023年9月の調査結果】
暮らし向きにゆとりが出てきた:3.1%
どちらとも言えない:38.6%
ゆとりがなくなってきた:57.4%

参考:日本銀行(「生活意識に関するアンケート調査」(第95回<2023年9月調査>)の結果

・コロナ禍のような緊急事態に備えることができる
ベーシックインカムを整えておくことで、感染症や災害など緊急事態に備えられるようになります。緊急事態が発生したために、働けなくなってしまった人への保障や、最低限の生活を守るための仕組みを作っておくことは非常に重要です。コロナ禍をきっかけにして、さらにベーシックインカムへの期待や注目が集まっています。

ベーシックインカムの日本での導入はいつ?

日本で、ベーシックインカムが導入される期日は決まっていません。検討中である部分が多く、導入の目途についても政府からの公表はありません。以下では近年の動向や事例を紹介します。

・日本における議論と動向
国内でベーシックインカムについて注目され始めたのは、2001年に経済財政政策担当大臣・金融担当大臣に就任していた竹中平蔵氏の発言がきっかけの1つといわれています。「毎月定額のお金を国民に配ることはどうか?」といった議論を行い、話題になったようです。
その後、新型コロナウイルス感染症による世界的な混乱が起きたことで、ベーシックインカムへの期待がより高まるようになりました。

・ 導入に向けた課題と可能性
日本でベーシックインカムを導入する際は、おおよそ100兆円が必要といわれており、この金額は1年間の国家予算に相当します。ベーシックインカムを導入するうえで、財源確保はもっとも大きな課題であると言えるでしょう。

・日本における試験的な導入事例
日本ではコロナ禍で苦しむ国民への補助として、一律10万円の支給を行いました。年齢や所得に関係なく、全ての国民に給付したこの制度は、まさにベーシックインカムに近いものです。しかし、本来のベーシックインカムは「毎月定額が支給されるもの」であるため、単発的な補助金とは継続性の有無が異なります。

ベーシックインカムを試験的に導入した国

ここでは、ベーシックインカム制度を試験的に導入した国の事例を紹介します。

・フィンランド
フィンランドでは、以下の条件で国民に給付金を出した事例があります。

【期間】2017~2018年
【対象者】失業者2000人
【内容】月560ユーロ(日本円で約7万円)

この給付によって、職を失った人が再出発するための勉強を行えたり、自分のやりたい仕事に注力できるようになったりした人もいるようです。

・スペイン
スペインでは、以下の条件でベーシックインカムを試験的に導入しました。

【期間】2020年6月~
【対象者】生活困窮者(低収入者)
【内容】世帯収入が462~1015ユーロになるよう足りない部分を補填(日本円で約5~12万円)

対象となる低所得者は、スペイン総人口の約5%程度だといわれています。ベーシックインカムの基本概念である「誰でも、同じように支給」とはいかず、あくまで試験的なものになっていると言えるでしょう。

・カナダ
カナダのベーシックインカム導入実験は、以下の条件で行われました。
        
【期間】2017年~約1年間
【対象者】オンタリオ州に住む約4000人
【内容】所得の50%程度が支給された(例:年収3万4000カナダドル(約292万円)以下の人は年間最大1万7000カナダドル(約146万円)の支給)

この導入実験は3年間の継続が予定されていました。しかし、想定以上のコストがかかったことなどが原因の1つとなり、約1年で打ち切られることになったそうです。

まとめ

ベーシックインカムの導入は、日本をはじめ世界各国で議論されている課題です。貧困を減らすために必要と考えられている一方、働く意欲の低下や財源確保など、さまざまな問題をはらんでいます。国民ができるファーストステップとして、ベーシックインカムの制度に対する正しい理解を深めることが大切と言えるでしょう。

■執筆者プロフィール
阿部佳乃
阿部 佳乃(あべ よしの)
アナウンサー×日本語教師/元TBSテレビあさチャン!報道リポーター。大学卒業後、佐渡ケーブルテレビを経て、UX新潟テレビ21/NHK水戸放送局キャスター/とちぎテレビアナウンサー。現在は、アナウンス講師、ナレーター、イベント司会等、フリーランスで活動しながら、大学や日本語学校で留学生に「日本語」を教えている。趣味は、旅行(47都道府県制覇)と声楽、読書。
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