マージンの意味とは? 業界別の使い方と例文、関連語や類語を解説

「マージン」は、利益や手数料など、取引に関する話題で耳にすることが多い言葉かもしれません。しかし、業界によっては異なる意味で使われる場合があります。本記事では、現役フリーアナウンサー、日本語教師の阿部佳乃が「マージン」の意味や使い方を解説しています。

マージンの意味とは? 業界別の使い方と例文、関連語や類語を解説
マージンの意味とは? 業界別の使い方と例文、関連語や類語を解説

「マージン」と聞くと、「利ざや」「手数料」という意味を思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが、「マージン」は業界によってさまざまな意味があります。今回は、現役フリーアナウンサー、日本語教師の阿部佳乃が、各業界における「マージン」の意味や使い方、関連語、言い換え表現を詳しく解説します。ぜひ、ビジネスの参考にしてみてください。

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<目次>
マージンの意味とは
小売業界におけるマージンとは
製造業でのマージンとは
人材派遣・人材紹介業でのマージンとは
印刷・デザイン業界でのマージンとは
マージンを使った関連語
マージンの類語・言い換え表現
まとめ

マージンの意味とは

「マージン」は、英語の「margin」に由来するカタカナ語です。はじめに、英語と日本語それぞれの「マージン」の意味についてチェックしていきましょう。

・そもそも英語での「margin」とは
英語の「margin」には、以下のような意味があります。

・ページの余白、欄外
・(時間、活動などの)余裕
・(誤りなどの)余地
・(時間、数量、程度などの)差、違い
・(物や場所の)周辺、縁、端、岸
・(社会や組織の)末端、底辺、重要でない位置
・最低限、限界、限度
・(商業において)利ざや、利幅、元値と売値の開き
・(金融用語)委託証拠金
・(金融用語)貸付余裕額
・(経済用語)限界収益


・日本語での「マージン」が持つ意味
日本語での「マージン」は、「余地」というニュアンスを含んで使われています。実際のビジネスシーンでは、「元値と売値の差額」「手数料」などを意味することが多いですが、流通・小売業、仲介業、印刷業など、各業界でそれぞれ意味が異なります。業界ごとのマージンの意味や使い方についても説明します。

・マージンと利益の違い
「マージン」と「利益」は、必ずしも同じ概念とは言えません。「マージン」が指す意味の1つである「利ざや」「利幅」とは、売上から原価を差し引いて算出されるものです。

ビジネスにおける「利益」には、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つがあります。「マージン」は、このうち「売上高-売上原価」を指す「売上総利益」に当たりますが、その他4つの利益とは算出式が異なります。

小売業界におけるマージンとは

次に、流通・小売業界における「マージン」の意味と使い方をご紹介します。

・小売業界におけるマージンの意味
流通・小売業界では、販売価格と仕入れ価格の差額によって生じた「利ざや」をマージンと呼びます。

・小売業界におけるマージンの使い方・例文
小売業界などでは、「マージンをのせる」などの表現で使われることが多いでしょう。

【例文】「販売価格は、20%のマージンをのせたものとする」
    「円安で仕入れ値が高騰して、マージンが小さくなっている」

製造業でのマージンとは

製造業では、主に2つの意味で「マージン」が使われます。

・製造業でのマージンの意味
製造業における「マージン」の1つ目の意味は、「売上高から製造原価(材料費、労務費、経費を含む)」を差し引いた「利ざや」のことです。流通・小売業における意味とほぼ同じと捉えてよいでしょう。もう1つは、機械などの製造における「設計マージン」です。製品の信頼性を高めるため、想定される使用状況・方法よりも余裕を持って設計することを指します。

・製造業でのマージンの使い方・例文
【例文】「製品の値上げによって、マージン改善を図る」
    「安全率3で設計しているが、ばらつきを考えるともう少しマージンを取っておいたほうがいいだろう」

人材派遣・人材紹介業でのマージンとは

続いて、人材派遣・人材紹介業などにおける「マージン」の意味と使い方をみていきましょう。

・人材派遣・人材紹介業でのマージンの意味
仲介ビジネスにおける「マージン」は、「手数料」や「紹介料」という意味で用いられます。まず、人材派遣業での「マージン」とは、派遣会社が派遣先の企業から受け取る料金から、派遣スタッフに支払う賃金を差し引いた「手数料」です。

一方、転職エージェントのような人材紹介業における「マージン」は、紹介された人材の採用が決まり、入社に至った場合に、紹介会社が受け取る「紹介手数料(成功報酬)」を指します。

・人材派遣・人材紹介業でのマージンの使い方・例文
【例文】「派遣会社が受け取るマージンは、派遣料金の3割程度といわれている」
    「マージンが高いが、今回はハイクラスに特化したエージェント経由で人材を探そう」

印刷・デザイン業界でのマージンとは

印刷業やデザイン業では、「粗利」「手数料」とは異なる意味で「マージン」が用いられています。

・印刷・デザイン業界でのマージンの意味
印刷やデザインの分野における「マージン」は、「余白」を意味します。本や雑誌、チラシやポスターなどを印刷する際に、上下左右に設けられるスペースのことです。

例えば、冊子を作る場合、製本時にページの片側が綴じられます。綴じや断裁を考慮してマージン(余白)を設けることで、読みやすく見栄えの良い冊子が出来上がります。同様に、Webデザインにおいても、文章などのコンテンツを適切に配置するために設ける余白やスペースのことを「マージン」と呼びます。

・印刷・デザイン業界でのマージンの使い方・例文
【例文】「ノド側のマージンは15ミリに、他は8ミリに設定する」
    「セクション同士のマージンは32ピクセルで調整しよう」

マージンを使った関連語

続いて、「マージン」の関連語をご紹介します。

・販売マージン
「販売マージン」とは、商品やサービスの販売金額に応じて、代行業者や委託会社、仲介人などに支払う手数料のことです。販売金額の◯%などのように、契約によって割合が定められることが一般的です。

・流通マージン
「流通マージン」とは、製品が生産者・製造者から消費者に渡る流通経路において、卸業者が取る手数料、あるいはそれによって得る粗利を指します。生産者の利益を最大化するためには、流通マージンが低い卸・仲卸業者を経由することが重要です。ただし、近年は直売所やインターネット販売などにより、生産者と消費者が直接取り引きをする機会も増加しています。

・マージンミックス
「マージンミックス」とは、粗利益率の高い商品と低い商品を抱き合わせにして販売することで、全体の粗利益率を向上させるねらいがあります。商品販売の手法の1つで、「粗利ミックス」「相乗積管理」と呼ばれることもあります。例えば、単品のハンバーガーは粗利益率が低いですが、粗利益率の高いドリンクやポテトをつけた「セット」として販売すると、粗利益率を上げることができます。

・バックマージン
「バックマージン」は、メーカーなどの製造者から、卸売業や小売業に払い戻される代金のことです。製造者が、自社商品の販売促進を行うときに用いる方法で、販売した商品を一定期間後に値下げし、それによって生じた差額を卸売・小売に返却するというものです。販売促進への謝礼や報奨金という位置付けですが、仕組み上払い戻しの手続きがあることから「バックマージン」と呼ばれています。

・マージン率
「マージン率」は、主に人材派遣業界で使われる言葉です。人材派遣先の企業が支払う「派遣料金」において、派遣会社が受け取る金額の割合を指します。

・マージンコール
「マージンコール」は、FXに関する用語です。口座の資金が最低証拠金を下回った際に、金融機関が投資家に対して行う通知のことです。「マージンコール」を受けた場合、投資家は追加で証拠金を入金するか、ポジションの決済が必要です。どちらの対応も行わなかった場合は強制決済が行われます。

・セーフマージン
「セーフマージン」とは、動画編集に関する用語です。テレビなどの画面上に、タイトルやテロップなどの文字が正しく表示される領域のことで、「セーフエリア」「セーフゾーン」などと呼ばれることもあります。動画編集ソフトなどでは、ガイド線でセーフマージンが表示されるため、その内側に文字を収めることが推奨されています。

マージンの類語・言い換え表現

最後に、「マージン」に近い意味を持つ言葉や、言い換え表現を5つご紹介します。

・類語(1)手数料・仲介料・紹介料
「手数料」「仲介料」「紹介料」は、何らかの手続きをしてもらったり、取引先との間に立って便宜を図ってもらったりした相手に対して支払う金銭です。人材派遣や人材紹介業における「マージン」とほぼ同じ意味で用いることができるでしょう。

・類語(2)もうけ・利益
「もうけ」「利益」は、商売などによって得た金銭のことです。「マージン」に比べると、より広い意味で用いられています。

・類語(3)差益
「差益」とは、売買の収支や為替の変動、価格改定により得られた差額の利益のことです。

・類語(4)保証金
「保証金」とは、債務の担保として相手に預ける金銭のことです。FXでは、マージンを「保証金」と言い換えることもあります。

・類語(5)余白・スペース
「余白」とは、文字などが書かれていたり、印刷されていたりする紙面において、何も書かれていない白い部分のことを指します。「スペース」も、あいている場所や空白を意味します。印刷やデザイン業界における「マージン」に近い意味があるでしょう。

まとめ

ご紹介してきたように、カタカナ語としての「マージン」に多様な使い方がある理由には、もとの「margin」の意味が非常に幅広いことが挙げられます。業界によっても、「マージン」の意味は大きく異なり、取引以外の文脈で使われることも少なくありません。どんなニュアンスで使われているかを的確に把握し、意味の理解に努めましょう。

■執筆者プロフィール
阿部佳乃
阿部 佳乃(あべ よしの)
アナウンサー×日本語教師/元TBSテレビあさチャン!報道リポーター。大学卒業後、佐渡ケーブルテレビを経て、UX新潟テレビ21/NHK水戸放送局キャスター/とちぎテレビアナウンサー。現在は、アナウンス講師、ナレーター、イベント司会等、フリーランスで活動しながら、大学や日本語学校で留学生に「日本語」を教えている。趣味は、旅行(47都道府県制覇)と声楽、読書。
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