【ラー博】博多「一風堂1994」"白丸"と"赤丸"が誕生する以前の「原点のラーメン」が復活

新横浜ラーメン博物館「あの銘店をもう一度“94年組”」第6弾は、博多「一風堂1994」が出店。「一風堂クロニクル」と題し、エポックメイキング(39年の歴史の中でラーメンファンの記憶に残るメニュー)となったラーメンが復活します。

新横浜ラーメン博物館(以下、ラー博)は2024年に迎える30周年に向けて、2022年7月1日から「あの銘店をもう一度」プロジェクトをスタート。過去に出店したことのある約40店舗の銘店が2年間かけリレー形式でラー博に出店します。

一風堂の「原点のラーメン」がラー博で復活
一風堂の「原点のラーメン」がラー博で復活

2024年2月9日~5月12日の「あの銘店をもう一度"94年組"」第6弾は博多「一風堂1994」が出店。全期間を通して、創業者・河原成美(かわはら しげみ)さんが厨房に立ち、ラーメンを振舞います(一部日程を除く)。

さらに、期間中は「一風堂クロニクル」というテーマで、一風堂のこれまでの歴史の中でエポックメイキング(39年の歴史の中でラーメンファンの記憶に残るメニュー)となったラーメンが復活します(画像は全て提供)。

バーからラーメン店への転身がきっかけ

創業店外観
創業店外観

「一風堂」は1985年10月、福岡市中央区大名に誕生しました。創業者は河原成美さん。26歳の時にバー「AFTER THE RAIN」の経営をスタートし、数年で大きく成長させました。

河原さんは「33歳までにもう1店出店し、35歳までに天職を見つける」という目標を定めていましたが、バーの2号店ではなく、普段から食べ歩いていたラーメン店を出そうという構想が浮かびます。

AFTER THE RAIN時代の河原さん
AFTER THE RAIN時代の河原さん

バーのお客さんにラーメンは好きかと尋ねると、特に女性は「好きだけどあまり行かない」という回答がほとんどだったそう。当時は女性が気軽に入れるラーメン店はあまりなかったのです。

そこにヒントを得た河原さんは、女性が1人でも気軽に入れるラーメン店を目指します。バーの経営と並行して、友人の父親が営むラーメン店「長浜一番」で1年間修業し、33歳の時に「一風堂」を創業しました。「ラーメン界に一陣の風を吹かせたい!」という思いと、当時バンドの「一風堂」が好きだったことが店名の由来だそうです。

ラー博が「一風堂」を誘致した理由とは

建設現場を訪れた河原さん(1993年撮影)
建設現場を訪れた河原さん(1993年撮影)

当時、博多のラーメンシーンは「赤のれん」「ふくちゃんラーメン」「しばらく」「八ちゃんラーメン」など、新旧の勢いがあるお店がしのぎを削っていました。その中で、ラー博が博多の代表として白羽の矢を立てたのが「一風堂」だったのです。

その理由について、誘致を担当したラー博・岩岡洋志館長は「もちろん当時勢いのあったお店も誘致候補としてお声がけもしていました。ただ一風堂を食べた時に、他の店舗と違い、マイルドで独特の臭みがない革新的な味に惹かれました。そして、河原さんに『どうしてこういうラーメンを作ったのですか?』と聞いたところ、『俺は女性にも喜んでもらえる臭みのないポタージュのようなスープを作りたいんだ』と目を輝かせて語ってくれました」と説明します。

イキイキと働く若いラー博のスタッフの姿が出店の決め手に

ラー博創業時の一風堂外観(1994年撮影)
ラー博創業時の一風堂外観(1994年撮影)

乗り気ではないものの現場だけは見ておこうと考えた河原さんが、新横浜ラーメン博物館の建設現場を訪れたのは1993年6月のことでした。

小雨の降る夕方、新横浜駅を降りて建設現場まで歩く中、空き地だらけで人がほとんど歩いておらず、「こんな場所ににお客さんが来るわけがない! すぐに断ろう」と瞬時に思ったそうです。しかし、断るはずだった意思をひっくり返す出来事が起きます。

それは現場を視察した帰りに設立準備室に寄った時のこと。「準備室の扉を開けた瞬間、そこには若いスタッフたちが夢に向かってイキイキと働いている光景がありました。壁には全国のラーメンの記事や『オープンまで150日』『勝ち抜くぞ!』と書かれた紙が貼ってありました。その光景はあまりにもまぶしく、立地なんて関係ない、このスタッフたちと一緒に働きたいと思ったのです。もし準備室に立ち寄らなかったら、今の一風堂はなかったかもしれません」と河原さんは振り返ります。

現在15カ国279店舗(2023年9月時点)を構える一風堂グループですが、ラー博に出店した1994年にはまだ、一風堂は博多の大名にある本店1店舗だけだったのです。

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