「コンプライアンス」は、令和になってより耳にする機会が多くなった言葉の1つではないでしょうか。そこで今回は、コンプライアンスの一般的な意味や対義語、類義語とそれぞれの意味の違い、実際の使い方・例文などについてフリーアナウンサーの酒井千佳が解説していきます。
企業でコンプライアンスが重視されるようになった背景やコンプライアンス違反が起きる理由、コンプライアンス違反の事例、逆に遵守するための工夫事例も紹介しています。
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<目次>
・コンプライアンスの意味とは「法令遵守」
・コンプライアンスの類義語と意味の違い
・コンプライアンスの使い方と例文
・企業でコンプライアンスが重視されるようになった背景
・コンプライアンス違反が起きる理由
・コンプライアンス違反の事例
・コンプライアンスのための企業事例
・コンプライアンスの対義語
・まとめ
コンプライアンスの意味とは「法令遵守」
コンプライアンスとは、「法令遵守」を意味します。とくに「企業活動において社会規範に反することなく、公正・公平に業務遂行すること」を指します。ほかにも「(要求や命令などへの)承諾・追従」や「服薬遵守(処方された薬剤を指示に従って服用すること)」を指すこともある語です。コンプライアンスの類義語と意味の違い
・類義語(1)内部統制「内部統制」とは、「企業内部において、財務諸表の信頼性の確保や事業経営に関わる法規の遵守を促す管理システム」を意味します。コンプライアンスが「遵守すべき概念」であるのに対し、内部統制はあくまで「仕組み」であるという違いがあります。
・類義語(2)リスクマネジメント
「リスクマネジメント」とは、「事業活動に伴うさまざまな危険を回避・抑制する管理活動」を意味します。コンプライアンスが「法令遵守・企業倫理」であるのに対し、リスクマネジメントもあくまで「仕組みの一種」です。
・類義語(3)コーポレートガバナンス
「コーポレートガバナンス」とは、「会社の不正行為を防止したり適正な事業活動の維持や確保を実現したりすること」を意味します。いわば、コーポレートガバナンスは「コンプライアンスを維持・改善するための体制」です。
・類義語(4)アドヒアランス
「アドヒアランス」とは、「患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること」を意味します。ここで比較される「コンプライアンス」は、医療業界でみられる「服薬遵守」ですが、アドヒアランスはそれ以上に「患者自身の積極性や患者と医師間の相互理解」というニュアンスを含みます。
コンプライアンスの使い方と例文
・(1)コンプライアンスを徹底する「社会規範に反しないようにする」というニュアンスでの使い方です。
【例文】
「あのテレビ局は、コンプライアンスを徹底した番組作りで知られている」
・(2)コンプライアンスに違反する
逆に、社会規範を逸脱する場合は「コンプライアンスに違反する」というように使われます。
【例文】
「例の大手企業がコンプライアンス違反で炎上しているらしい」
・(3)コンプライアンス研修を実施する
今では、コンプライアンス違反がないように、研修を行う企業も少なくありません。
【例文】
「今年も例年通り、社員一人ひとりにコンプライアンス研修を実施する予定だ」
企業でコンプライアンスが重視されるようになった背景
・SNSを通して情報が広がりやすくなったSNSによって誰もが情報を手軽に受送信できるようになりました。些事から炎上につながることもあるうえ、セキュリティー面での懸念も増えたことでしょう。
・法律の規定が厳しくなった
そもそも、昭和や平成の時代と比べて、法律の規定が厳しくなった背景もあります。コンプライアンスが重視されるようになったというよりも、コンプライアンスの範囲が広くなったとも捉えられます。
・内部告発を支援する制度が整えられた
「正義は時代によって異なるのではなく、時代を経るごとにアップデートされている」という言葉があります。内部告発を支援する制度が整えられたことも、企業でコンプライアンスが重視されるようになった背景の1つでしょう。
コンプライアンス違反が起きる理由
・誰でも手軽に情報を発信できる時代になったためネットの普及により、誰でも手軽に情報を発信できる時代。情報漏えいの問題は後を絶ちません。
・コンプライアンスに関する知識がなかったため
サッカーのルールを知らない人は、手でボールに触ることもあるでしょう。コンプライアンスの知識がないことが、コンプライアンス違反の原因になっていたケースもあります。
・過酷なノルマ設定で社員が心理的に追い詰められるため
コンプライアンスは「通るべき道」ともいえるでしょう。ともすれば、過酷なノルマ設定で心理的に追い詰められた際、いつもであれば「踏まないようにしている道」も、気にせずふらふらと歩いてしまうかもしれません。
・コンプライアンス違反を指摘しづらい雰囲気であるため
コンプライアンスは重要ですが、意識したりチェックしたりすることは多少なりともストレスとなりえます。コンプライアンス違反を指摘しづらい雰囲気の場合、見逃す選択をする社員が出かねません。
・不正や過失が起こりやすい環境があるため
職場への不安が募っている場合や、集中力が削がれる職場環境の場合は注意が必要です。楽を求めての不正や、不注意による過失が起こるかもしれません。
コンプライアンス違反の事例
・テレワーク中に会社の備品を紛失新型コロナウイルスの影響で増えたテレワーク。会社の備品を借りている最中に、紛失してしまうケースです。場合によっては横領を疑われるケースもあるため注意しましょう。
・SNSに不適切な投稿をする
SNSの危険性は先述しましたが、それは情報漏えいだけではありません。企業の売り上げや信用を落とすような投稿はコンプライアンス違反にあたることがあります。
・有料イラストの無断使用
有料イラストを無断で使ったり加工したりすることもコンプライアンス違反です。写真の保存や共有、加工なども手軽になったからこそ増えた事項でしょう。
・ハラスメントや過度な残業
ハラスメントや過度な残業は、長年見過ごされてきた歴史があり、今なお残っている企業も少なくないでしょう。しかし、これらも立派なコンプライアンス違反の一種です。
・景品表示法違反
ソーシャルゲームの普及により耳にすることが多くなった景品表示法違反。ゲームのガチャには細かな規定がいくつもあるため、開発時には注意しましょう。
コンプライアンスのための企業事例
・規則やマニュアルの作成まずは「コンプライアンスをそもそも知らなかった」というケースをなくした事例です。分かりやすい規則やマニュアルを作成することで周知しました。
・コンプライアンス研修の実施
マニュアルを渡しても、見なくなったり忘れたりしては意味がありません。定期的なコンプライアンス研修の実施が必要です。
・ハラスメント相談窓口や内部通報窓口の設置
ハラスメントが起きた際、誰に相談すれば良いか分からないというケースもあります。相談窓口や内部通報窓口を事前に設置することで解決できるでしょう。
・適切なノルマ・評価制度の整備
先述したように、劣悪な職場環境がコンプライアンス違反を引き起こすこともあります。適切なノルマ・評価制度の整備によって職場環境を改善することは一手です。
・リファレンスチェックの徹底
「リファレンスチェック」とは、採用候補者の勤務状況などについて、候補者の上司に問い合わせる「職歴調査」のことです。問題ない人材かどうかの一指標になります。
コンプライアンスの対義語
・対義語(1)スティフネス「スティフネス」とは、マテリアル工学などにおける「コンプライアンス」の対義語です。それぞれ、コンプライアンスは「追従性(動きやすさ)」を、スティフネスは「剛性(動きにくさ)」を表します。
・対義語(2)ノン・コンプライアンス(non-compliance)
「ノン・コンプライアンス」は、主に「服薬遵守」を意味するコンプライアンスの対義語として使用されます。主に「患者が勝手に服薬を中止したり、用法用量を守らなかったりすること」を指します。
まとめ
「コンプライアンス」は、「法令遵守」や「服薬遵守」を意味する語です。主に「コンプライアンスを徹底する」のように使われ、企業では「コンプライアンス研修」を行うところも増えています。職場環境の改善が、間接的にコンプライアンスへつながる点も重要なので、ぜひ覚えておいてください。■執筆者プロフィール 酒井 千佳(さかい ちか)
フリーキャスター、気象予報士、保育士。
京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。