たまに耳にすることがある「テレコ」という言葉。実は特定の業界では日常的に使われている便利な言葉です。関西地方でよく使われているという情報もあり、なじみ深い人もいるかもしれません。
物流やメディア業界などでよく使用されるテレコについて、語源や使い方を現役フリーアナウンサーの酒井千佳が詳しく解説します。
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<目次>
・テレコの意味とは
・テレコのビジネス上での使い方
・テレコの類語・言い換え表現
・テレコの対義語
・テレコ出荷が起きる原因
・テレコ出荷の対策
・テレコに関するよくある質問
・まとめ
テレコの意味とは
・テレコが表す意味テレコとは、一言でいうと「入れ違い」という意味です。この他に「逆」や「互い違い」という意味もあり、物流業界でよく使用されています。AとBの荷物が入れ違って、別の場所に配達されてしまった際に「テレコ出荷」と表現します。単に荷物の届け間違いというだけではなく、交互に入れ替わっている状態をひとことで伝えられる言葉です。
・テレコの語源・由来
テレコの由来は歌舞伎にあるといわれています。歌舞伎において「2つの関連したシナリオを交互に展開する」という物語の見せ方がありました。これを「てれこ」と呼んでおり、現在の「テレコ」の語源になっています。
・テレコの英語表現
テレコは日本の言葉であり、前述のとおり歌舞伎が語源です。そのため英語に直訳できる言葉はありませんが、同じようなニュアンスの英語表現には以下のようなものがあります。
・Cross label:ラベルを誤って貼ったことで荷物が別の場所に届いてしまうこと
・Mix-up:取り違えること
あくまで似た意味の英語表現となるため、シーンによっては日本語のテレコと同じようには伝わらないことがあるかもしれません。
テレコのビジネス上での使い方
以下の業界ではテレコが使われることがありますが、他の業種で登場することはそう多くないかもしれません。それぞれの業種において、テレコを使う際の例文を紹介します。・物流業界での使い方
物流業界において「入れ違い」や「逆」の意味で、テレコを使う際の例文を2つ紹介します。
【例文】「A社あての荷物をB社にテレコ納品してしまった」
【例文】「AとBのトラックの行先きをテレコしよう」
・アパレル業界での使い方
アパレル業界で使うテレコは、物流の現場とは少しニュアンスが異なります。
「そのTシャツ、テレコじゃない?」と言われたら「前後逆に着ていない?」という意味です。ファッションにおいては、コーディネートがちぐはぐなときにテレコを使うこともあります。またこれらとは別に「テレコ生地」という表面がデコボコした編み方の生地もあります。
・映像・放送業界での使い方
映像・放送業界でテレコを使う際の例文です。
【例文】「この動画のテロップを次回のものとテレコにして」
【例文】「この番組は隔週テレコで放送します」
物流の現場と同じく「入れ違い・交互」という意味で使われます。
テレコの類語・言い換え表現
テレコは使うシーンによって、少しだけニュアンスが異なります。類義語や言い換えとして5つの表現を知っておくとよいでしょう。・類義語(1)逆
「テレコ=逆」と言い換えられます。「〇〇が逆になっている」と表現したいときは「〇〇がテレコだよ」と言えば同じ意味になります。
・類義語(2)あべこべ
「あべこべ」と伝えたいときにも、テレコが使えます。例えば「左右あべこべの靴だった」というときに「左右テレコだった」と言い換えられます。
・類義語(3)入れ違い
例えば、店番をしていたAさんと交代するときに「Aさんとテレコで私が店番を担当します」といったふうに使えます。単に「変わる」ということよりも「交互に入れ替わる」場合にはテレコがぴったりくる言葉です。
・類義語(4)食い違い
物事が一致しない際に使う「食い違い」という言葉も、テレコに似た類義語です。
・類義語(5)ニアミス
ニアミスは本来、飛行機同士が近くまで接近した状態を指す言葉です。しかし、日本語においては「すれ違い」が起きた場合にも使われます。テレコも、広義ではすれ違いという意味を含んでいるため類義語の1つと言えます。
テレコの対義語
テレコの対義語といわれている言葉は以下の2つです。・対義語(1)正確
物流の現場においては「入れ違い=ミス」です。そのため、テレコをネガティブな言葉として認識している人が多いかもしれません。テレコと対義になるのは「正確」で、つまりミスなく正しい出荷が行えている状態を表しています。
・対義語(2)以心伝心
以心伝心とは、口に出さなくても気持ちが通じている状態のことです。すれ違いを意味するテレコとは、逆の意味になる言葉と言えるでしょう。
テレコ出荷が起きる原因
テレコ出荷が起きる原因について解説します。・ピッキングミス
テレコ出荷の原因として、ピッキングのミスがあげられます。倉庫内からトラックに移動する際に、別の荷物を取り違えてしまうことがあります。
・伝票の貼り付けミス
荷物に貼る伝票を間違ってしまうとテレコ出荷が発生します。外から中身の見えない段ボールや梱包などは、事前によく確認しておくことが重要です。
・目視に頼った管理をしている
ピッキングや伝票の貼り付けなどを、全て手作業のみで行っていると、どうしても一定数のミスが発生します。目視だけに頼らず、専用の機器を取り入れて管理することが望ましいでしょう。
・ダブルチェック体制がない
機械を用いたチェックを行っていたとしても、ダブルチェックを怠るとテレコ出荷してしまうことがあります。出荷までのチェック体制をしっかり整えておくことが重要です。
テレコ出荷の対策
テレコ出荷を防ぐためには、以下の点に注意しておきましょう。・業務フローの改善を行う
テレコ出荷が発生したら、原因を突き止めて業務フローを見直すことが必要です。どの段階でミスが起こってしまったのかを把握することで、改善策を見つけやすくなります。
・出荷・梱包スペースを確保する
出荷や梱包をするスペースが狭いと、従業員が作業する際にごちゃごちゃしてしまい、伝票の貼り間違えや紛失につながるおそれがあります。快適に作業できる場所を確保しましょう。
・ハンディターミナルを活用する
手作業のみで多くの荷物を管理することは困難です。ハンディターミナルを用いて、デジタル化を進めることが得策でしょう。
・倉庫管理システム(WMS)を導入する
入庫・出庫・在庫などを管理できるシステム(WMS)を導入することで、テレコの発生を防ぎやすくなります。業務効率化によって、企業の利益アップにもつながるでしょう。
テレコに関するよくある質問
テレコに関するよくある質問に回答します。Q. テレコはどこの方言ですか?
A. テレコは関西地方の方言です。ただし、関西以外のエリアでも普段から使用している人もいるようです。
Q. テレコはなんの略語? 元の言葉は?
A. テレコにはいくつかの意味があります。
例えば、「テープレコーダー」を略してテレコと呼ぶことがあります。また、「テレコミュニケーション」を略してテレコと呼ぶこともあります。電話、インターネット、ラジオ、テレビなど、離れた場所で情報を伝達するためのシステムを指しています。
さらに、物流業界においては略語ではなく、テレコ(入れ違い/逆)という意味でも使用されています。
まとめ
今回ご紹介した「テレコ」は、業界や地域によってはなじみ深い言葉のようです。業種によってはあまり使うことがないかもしれませんが、意味や使い方を覚えておいて損はないでしょう。特に物流関係の人と仕事や交流する機会がある人は、把握しておくと役立つかもしれません。■執筆者プロフィール 酒井 千佳(さかい ちか)
フリーキャスター、気象予報士、保育士。
京都大学 工学部建築学科卒業。北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務めた。現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育にも携わっている。