ビジネスの現場、特にマーケティングの分野においてよく使われる「ベネフィット」という言葉、皆さんは正確な意味をご存じですか。今回は、「ベネフィット」の正しい意味や、使い方、また混同しやすいよく似た言葉「メリット」との違いなどを解説します。
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<目次>
・ベネフィットの意味とは
・ビジネスにおける3種類のベネフィット
・ベネフィットの使い方と例文
・ベネフィットの類語・言い換え表現
・ベネフィットの対義語
・まとめ
ベネフィットの意味とは
まずは「ベネフィット」の意味を確認していきます。・英単語由来のベネフィットの意味
ベネフィットは、英語の「benefit」が語源のビジネス用語です。「benefit」はラテン語で「良いこと」を意味する「bene」に「行う」という意味の「fit」が合わさってできた言葉で、英語での意味は「便益、恩恵、利益」や、「金銭的な利益、利得」「給付金、補助金」「慈善興行」などの意味があります。ビジネスのシーンでは、「便益、恩恵」の意味で使われ、サービスを受けたり商品を購入したりしたときに顧客が得ることのできる利益を意味します。これは必ずしも金銭的なものに限らず、満足度や快適さのような心理的な利益も含む言葉です。
・ベネフィットとメリットの違い
「ベネフィット」とよく似た言葉に「メリット」があります。「メリット」は日本語では「利益」を意味する言葉ですので「ベネフィット」と混同しやすいかもしれませんが、この2つの言葉には違いがあります。「メリット」は「商品やサービスそのものが持つ良い点、長所」を指すのに対して、「ベネフィット」は、「商品やサービスを使ったときに顧客が得られる利益」を意味します。ベネフィットの考え方をよく表す有名な言葉に次のようなものがあります。
これはアメリカの経済学者セオドア・レビットが著書『マーケティング発想法』の中で記したものですが、ここでいう「穴を開けられること」が「ベネフィット」で、「メリット」は「(ドリルの)穴を開ける機能」に当たります。「人々が欲しいのは1/4インチ・ドリルではない。彼らは1/4インチの穴が欲しいのだ」
(People don’t want quarter-inch drills. They want quarter-inch holes. )
マーケティングにおいては「メリット」だけでなく、その先の「ベネフィット」までしっかりと検討することが重要になります。
ビジネスにおける3種類のベネフィット
一言で「ベネフィット」といっても、その性質によっていくつかの種類があります。・機能的ベネフィット
まずは「機能的ベネフィット」です。これは、商品やサービスの機能によって顧客が得られる利益、効果を表します。「安い」「早い」「便利」などを提供できる商品やサービスは「機能的ベネフィット」があると言えるでしょう。例えば、スマートフォンを購入することで、電話やメールなどの連絡手段としてだけでなく、さまざまなWebサービスや決済サービスをいつでもどこでも手軽に利用できるようになることは「機能的ベネフィット」があると言えるでしょう。
・情緒的ベネフィット
「情緒的ベネフィット」は、商品やサービスを利用することによって、顧客が獲得できるプラスの感情を意味します。「心地よい」「楽しい」「うれしい」「安心する」といった気持ちになれるような商品、サービスは「情緒的ベネフィット」があると言えるでしょう。テレビを購入したり、動画のサブスクリプションを契約して多様なコンテンツを気軽に視聴できるようになったりすることで、楽しい気分になれる、空いた時間の充実度が上がるといったことは、情緒的ベネフィットと言えます。
・自己実現ベネフィット
「自己実現ベネフィット」は、商品やサービスを利用することによって、自分自身が理想の姿になれることを意味します。より良い自分になれることが「自己実現ベネフィット」ですので、高額な商品やサービス、自己研さんにつながるサービスなどが当てはまります。ジムで体を鍛えたり、憧れのブランドのバッグを購入することによって、より自分に自信が持てるようになったり、自己肯定感を高めることができるのは「自己実現ベネフィット」と言えます。
ベネフィットの使い方と例文
ここまで、ビジネスの分野における「ベネフィット」について解説してきましたが、「ベネフィット」という言葉は、ビジネス以外にもさまざまな分野で使われます。ここからは、それぞれの分野における「ベネフィット」の使い方を例文とともに紹介していきます。
・マーケティングにおけるベネフィットの使い方
まずは、マーケティングにおける「ベネフィット」の使い方です。ここまで説明してきた通り、ビジネス、特にマーケティングの分野で「ベネフィット」という場合は、「商品やサービスを利用することで顧客が得られる恩恵」を意味します。【例文】
「サービスを訴求するためには、しっかりとベネフィットを提示することが必要だ」
・医療現場でのベネフィットの使い方
一方、医療現場で「ベネフィット」という場合には、「医薬品や医療機器の安全性や効果」を意味します。医療現場での「ベネフィット」は「リスク」とセットで考えられることが多い言葉です。「リスク」は「医療機器や医薬品を使用することによって生じうるネガティブな影響」を意味します。薬には、効果・効能といった「ベネフィット」だけではなく、副作用などの「リスク」も同時に存在します。薬を処方する際には、このベネフィットとリスクを適切に評価する必要があります。【例文】
「医薬品を承認する際には、ベネフィットがリスクを上回ることが示されなければならない」
・日常生活でのベネフィットの使い方
この他にも、日常生活の中で「フリンジベネフィット」や「ベネフィットコンサート」といった言葉を目にすることもあるかもしれません。まず「フリンジベネフィット」というのは、企業が従業員に支払うさまざまな手当や福利厚生のことを指します。これは金銭的なものに限らず、社員旅行や、提携サービスの利用なども含まれます。また、「ベネフィットコンサート」というのは慈善興行として行われるコンサートのことで、いわゆるチャリティーコンサートを意味します。
【例文】「従業員の満足度を向上させるためには、フリンジベネフィットを充実させる必要がある」
「難病患者を支援するためのベネフィットコンサートが行われた」
ベネフィットの類語・言い換え表現
ここからは、「ベネフィット」の類語表現を見ていきます。・類語(1)効果
「効果」は、「ある働きかけによって現れる、目的にかなった結果や、効き目」を意味します。「ベネフィット」と似た意味ですが、「効果」の方がより抽象的で広い意味で使われる点には注意が必要です。例えば「ダイエットサプリAの効果」という場合には、このサプリが持つ機能(脂肪を燃焼させるなど)のことも意味しますが、ベネフィットの場合は、「使用すると痩せて自己肯定感が上がる」などの、顧客の視点で考えられる良い影響という限定的な意味となります。