「All About」話し方・伝え方ガイドの藤田尚弓が回答します。
(今回の質問)
上司に食事をおごってもらった際、気を付けるべきマナーはありますか?
(回答)
引っかけ問題に気を付けつつ、お店や料理を褒めましょう。お礼は、帰り際に言うだけでなく、次の日に2回目、何かの折に「その節はありがとうございました」と3回は伝えるのがよいです。
引っかけ問題に注意! ネガティブ感想には同調しない
連れていってくれた上司が「この店はうるさいなぁ」「想像していたより旨くないな」といった感想を言った場合でも、決して同調してはいけません。部下も「残念なお店だ」と思っているのにごちそうしなければならないのは、本当につまらないことだからです。ごちそうしてもらう側は、「このくらいにぎやかな方が気兼ねなく話せていいと思います」「私にとってはおいしいです」など、上司の感想をポジティブに変換して褒めるようにしてください。
以下は、よくあるネガティブ感想とその変換例です。
「量が少ない」→「上品でおいしくいただける量だと思います」
「高い」→「高級なところでごちそうしてもらえて、本当にありがたいです」
「店の人の愛想が悪い」→「職人気質なお店を体験できてうれしいです」
「味が薄い」→「健康的だし上品な味わいだと思います」
「味が濃い」→「お酒がすすんでいいですね」「ごはんが2杯いけます」
「おごられて当然」の素振りはNG!
上司にはごちそうになるのは当たり前だと思っている場合でも、事前に「ごちそうする」と言われている場合でも、当然のような素振りを見せてはいけません。会計のときには「いいんですか? ありがとうございます!」という気持ちを非言語で表現してみましょう。うれしそうな表情をしてみたり、財布を出そうとしたり、会計のときにもじもじする、といったことをするのもよいと思います。「わざわざこんなことをするなんてばからしい」と思う人もいるかもしれません。ですが、正しいか、正しくないかは別として、昭和の様式美を体現できるようにしておくと、さまざまな年代の人とスムーズに働きやすくなります。
お礼は3回伝えるくらいの気持ちで
ごちそうしてもらったその瞬間にお礼を述べるのは人として当然の振る舞いだと思います。ですが、社会人としては、翌日もしくは次に会ったときにもお礼をしていただきたいですし、できれば「その節はありがとうございました」と後日もう一度言及するのがお勧めです。人間は自分が貢献したことを多く見積もる傾向があります。ごちそうになった側が感じている以上に、上司は「ごちそうしてあげたこと」の価値を高く認知している可能性が高いです。少しオーバー気味に、できれば食事のお礼だでなく、上司と話せたことも含めて感謝を伝えてみてください。
この記事の筆者:藤田 尚弓
株式会社アップウェブ代表取締役。社会心理学領域のコミュニケーションの専門家として、企業研修や研究・執筆、早稲田大学オープンカレッジ講師、TVコメンテーターなど幅広く活動。日本社会心理学会、日本応用心理学会所属。
株式会社アップウェブ代表取締役。社会心理学領域のコミュニケーションの専門家として、企業研修や研究・執筆、早稲田大学オープンカレッジ講師、TVコメンテーターなど幅広く活動。日本社会心理学会、日本応用心理学会所属。