1杯目は「とりあえずビール」じゃないとマナー違反でしょうか?【ビジネスマナーのプロが解説】

飲み会では「とりあえずビール」となりがちですが、1杯目にビール以外のものを頼むのはマナー違反なのでしょうか。「All About」ビジネスマナーガイドの美月あきこが回答します。

1杯目は「とりあえずビール」じゃないとダメ?
1杯目は「とりあえずビール」じゃないとダメ?
飲み会でよく聞くフレーズ「とりあえずビール」。ですが、さまざまな理由で他の飲み物を選択したい人もいるでしょう。1杯目にビール以外を選ぶことはマナー違反なのでしょうか。

「All About」ビジネスマナーガイドの美月あきこが回答します。
 

(今回の質問)
職場の飲み会では、1杯目はビールじゃないとマナー違反ですか?

(回答)
乾杯の際にビールを飲むことは必須ではないため、マナー違反ではありません。もし「とりあえずビール」となった場合、むしろそのことが強要にあたります。

どういうことなのか、以下で詳しく解説します。

「とりあえずビール」はアルハラに該当。飲まなくても大丈夫

「とりあえずビール」は日本の飲み会でよく使われてきたフレーズで、最初の1杯として人数分のビールを注文するときに使われます。一説によれば、これは高度経済成長期にビールが大衆化し、短時間で提供することができる飲み物として普及したためとのこと。確かに、ビールは日本で最も飲まれているお酒の1つで、多くの飲食店で提供されています。そのため、「とりあえずビール」で注文しておけば早く持ってきてもらえる可能性が高く、「最初の一杯」である乾杯の儀式をつつがなく終えられる、便利で簡単なビジネス酒席の「公用酒」というのも理解できます。

しかし、「とりあえずビール」には問題点があります。それは、ビールを飲みたくない人に対して、無意識にプレッシャーをかけ、不快な気持ちにさせている点です。1杯目にビールを飲むことは必須ではないのです。むしろ、お酒の強要がアルハラ(アルコールハラスメントの略)に該当します。

確かに、お酒を飲めない人がノンアルコール飲料やソフトドリンクを飲むことは浸透しているかもしれません。しかし、「お酒は飲めるけどビールが嫌い」という人に対しては、「周囲への配慮」とか「足並みをそろえる」との理由から「最初の1杯目はビールで2杯目から好きな飲み物をオーダー」するよう促されている始末。これが若い世代を中心に職場の酒席離れが加速する原因の1つになっているようです。

事前の準備次第で快適な飲み会に

このような事態を避けるためには、事前の準備が大切です。

自分が幹事の場合、事前に1杯目の飲み物のリクエストを聞いておくなど「とりあえずビール」という言葉が出ない工夫をすることができます。また、参加者同士も「最初の乾杯は何でしましょうか?」「好きな飲み物で乾杯しましょうね」などと取り纏めをしてみたり、幹事の手伝いをすれば参加者の選択の自由を尊重する雰囲気づくりに一役買うことができます。例えば、ビール以外のお酒とノンアルコールを3種類ほど決めておき、ビール以外の希望者と一緒にメモにまとめて幹事に手渡しておけば、当日は乾杯までがスムーズにスタートできます。

こうした準備を通じて、今年の忘年会から「とりあえずビール」習慣を見直しませんか。これまでよりも快適に楽しめたなら、帰り際には「良い仲間に恵まれて今年も頑張ってこれた。これからも頑張ろう」と来年へと繋がっていくはず。上司や部下、先輩や後輩などの関係や立場を超えて、互いに尊重し合い認め合うことが本来の飲み会の役割なのです。
 
この記事の筆者:美月 あきこ
17年間の国際線客室業務員経験をもとに人財育成トレーナーとして活躍。ベストセラーとなった「ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣」執筆。日本経済新聞、日本商工会議所などでマナー記事を連載。
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