事務所とアーティストの関係は旧態依然? それとも?
ゆりこ:アーティスト本人もマネジメント側も関わる誰もが、ビギナーズラックを冷静に受け止める余裕と長期的戦略がなかったのかもしれません。あっても共有しきれていなかったとか。信頼関係と納得感、どちらか1つでも欠けているとこういうことは起こりがち。
矢野:宝くじで大金を得ても、お金の扱い方を知らないと破産してしまったり、当選する前より不幸になるケースは多いと聞きますが、それに近いものを感じます。
ゆりこ:いきなり売れてしまった芸能人が事務所と金銭で揉めて、裏には外部スタッフも関与していて……「昔からよくある話」ですしね。ただヒットの規模感と展開の速さは“今の時代ならでは”って感じもする。
矢野: SNSとYouTube、各種サブスクリプションサービスによって、こういった世界規模の爆発的なブレイクが可能になりましたからね。
ゆりこ:韓国の音楽評論家キム・ヨンデさんが以前「K-POP産業において良いコンテンツを生み出すのに一番重要な条件は資本力。でもそれだけでは解決できないセンスや視点がある」と書かれていたのですが、私も同意見です。豪華なクリエイティブ、手厚いプロモーションには当然多額のお金がかかります。資本力のある所には分かりやすく魅力的で、有能な人も集まるのも自然なこと。そんな中で“お金では買えない”何かによって、ごく稀にかつての“防弾少年団(現BTS)”のような奇跡が起こる。そして今年はFIFTY FIFTYが再現したという。
矢野:『Cupid』は純粋に素敵な曲でした。キャッチーで何度もリピートしたくなる力がありました。
ゆりこ:メインボーカル・アランさんの大人っぽくて柔らかい声が本当に心地いい。最初のヴァースの部分でもうスキ!って“ひと聞き惚れ”しました。グループを離れても歌手活動を諦めてほしくないです。
矢野:実直にリスナーの耳を魅了した結果だと思います。アイドル文化とルックスはなかなか切り離すのが難しい部分ですが、見た目やコンセプトはグローバルで人気を得るための“十分条件”に過ぎず、やはり良曲であることが“必要条件”なんだなって。
ゆりこ:中小事務所からもヒット曲を生み出せることは再び証明できた。しかしグループを存続させて良いコンテンツを継続的に出していくのは簡単じゃない。そんな現実を目の当たりにした出来事でした。
矢野:推しのグループが存続していて、ちゃんとカムバ(新曲発表)があるということは「当たり前」ではないのだと改めて実感します。
ゆりこ:2009年に東方神起の契約問題が勃発したことをきっかけに、韓国では事務所とアーティスト間の契約期間の上限が7年に変更されました。今回のFIFTY FIFTYのケースからも何か改善策が生まれるといいですね。
【ゆるっとトークをお届けしたのは……】
K-POPゆりこ:韓国芸能&カルチャーについて書いたり喋ったりする「韓国エンタメウォッチャー」。2000年代からK-POPを愛聴するM世代。編集者として働いた後、ソウル生活を経験。
編集担当・矢野:All Aboutでエンタメやメンズファッション記事を担当するZ世代の若手編集者。物心ついた頃からK-POPリスナーなONCE(TWICEファン)。