今回取り上げるラーメン用語は「家系」です。
「家系」ってどういう意味?
「知らない」と回答した人にどんな意味だと思うか聞いてみたところ、「家庭で作るような雰囲気のラーメン」(30代女性/北海道)、「シンプルなラーメン。二郎系の対義語」(30代女性/大阪府)といった回答が集まりました。この中に正解の意味はあるのでしょうか?
家系とは「横浜の人気店・吉村家を源流とするラーメンのこと」
家系とは横浜の人気店「吉村家」を源流とするラーメンのことです。吉村家が系列店舗に「○○家」という名前を付けたり、「吉村家」で修業した人が独立した際に「○○家」という店名を付けるケースが増え、それらを「家系」と呼ぶようになりました。
そもそも「家系」という言葉は、インターネット黎明期に登場した「ラーメンメーリングリスト」というコミュニティの中のメンバーが創り出したもの。最初の頃は「家系」とだけ呼ばれていましたが、最近では「横浜家系」と“横浜”を入れるケースが増えています。
「家系」の特徴は、まず第一にスープが「豚骨醤油」であること。「壱六家」およびその流れをくむ店の多くは豚骨のみの場合が多いですが、元祖である「吉村家」とその流れをくむ店では鶏ガラも使っています。また、「吉村家」とその流れをくむ店では、「酒井製麺」という製麺所のやや太めの短い平打ち麺を使うことが多く、その麺を使っていることこそが「家系」の本流という見方をされる時代もありました。しかし、最近では同じような麺を作る製麺所が増えたため、多くの製麺所のさまざまな麺が使われています。
家系のほかの特徴として、具にほうれん草と大きなのりが入ることがあげられ、基本的にはメンマが入らない場合が多いです。また、注文時にお客さんの要望を聞くことも家系の特徴。聞く項目は、麺の硬さ(硬め・普通・柔らかめ)、味の濃さ(濃い口・普通・薄口)、油の量(多め・普通・少なめ)などです。ライスがとても合うラーメンなのでライスを無料で提供している店も少なくありません。
家系ラーメンの「御三家」って?
家系のお店には「六角家」「本牧家」「介一家」「寿々㐂家」などがあります。特に「吉村家」「六角家」「本牧家」の3軒は「家系御三家」と呼ばれ、それぞれ人気になり、修業者や独立者が増え、「家系」店舗が増えていきました。一方、磯子にある「壱六家」も人気になり、そこからの修業者や独立者も増えていきました。「吉村家」と「壱六家」はまったく無関係なのですが、同じ横浜市の「家」が付く店舗だったため「家系」で括られています。
この記事の筆者:大崎 裕史
株式会社ラーメンデータバンク取締役会長。28,500杯(2023年11月末現在)を食破した自称「日本一ラーメンを食べた男」として、メディアで幅広く活動中。
株式会社ラーメンデータバンク取締役会長。28,500杯(2023年11月末現在)を食破した自称「日本一ラーメンを食べた男」として、メディアで幅広く活動中。