最終回に向けて怒涛(どとう)の展開? キーパーソン出現
さて、ここまで説明したとおり、『いちばんすきな花』では、繊細な人たちの“陽キャ”に対しての拒絶が描かれています。ただこのドラマは、ただ闇雲に陽キャを攻撃するだけの陳腐なストーリーではないと感じます。その鍵を握るのが、11月30日放送の第8話に登場した、田中麗奈さんが演じる志木美鳥の存在です。(※ここからは、多少のネタバレを含みます)美鳥は、ゆくえにとっては「高校時代に通っていた塾の先生で憧れの存在」、椿にとっては「忘れられない同級生」、夜々にとっては「優しかった親戚のお姉ちゃん」、紅葉にとっては「高校の先生」と主人公たちに共通する人物。
この美鳥は、親からDVを受けていた疑惑があり、親戚中をたらい回しにされていた悲しい過去を持ちます。つまり、これまでは自分の性格や価値観で生きづらかった主人公たちの前に、親のせいで「生きることがつらかった」という圧倒的に不幸な美鳥が現れます。「生きづらい」という曖昧な気持ちをベースに進んでいたストーリーに、大きな転換が起きるでしょう。
厳しいことを言えば、自分でなんとか運命を変えることができた主人公たち。そこに、幼少期に虐待を受け、自分ではどうにもできなかった美鳥が現れることで、主人公たちにどんな価値観の変化が起きるのか……。そこがていねいに描かれるかが、このドラマが傑作となるか、はたまた単なる賛否両論があった不思議な作品で終わるかの分かれ道になると思います。
『カルテット』の影響も? “伝説のドラマ”になるか期待
余談ですが、脚本の生方さんは、2017年放送のドラマ『カルテット』(TBS系)を生み出した坂元裕二さんから影響を受けたといわれています。『カルテット』は、秀逸な会話劇が4人の男女によって繰り広げられる作品で、複数のドラマ賞を受賞した伝説のドラマ。設定も、屋内での会話劇が中心ということでも、『いちばんすきな花』には『カルテット』との共通点が多くあります。この記事の筆者:ゆるま 小林
長年にわたってテレビ局でバラエティ番組、情報番組などを制作。その後、フリーランスの編集・ライターに転身。芸能情報に精通し、週刊誌、ネットニュースでテレビや芸能人に関するコラムなどを執筆。編集プロダクション「ゆるま」を立ち上げる。