一方で親世代は、継ぐ人がいない古くなった家をどうするか、で悩んでいる。
双方の悩みを解決し、皆が幸せになれる方法とは?
子育て世代の家づくりに立ちはだかる壁
コロナ禍で定着したステイホームにより、「家」への熱量は高まってきた。自宅で仕事をする人も多くなり、住まいに求める機能性や快適性は高くなったといえる。「理想の住空間で、子どもたちにものびのびと過ごしてほしい」そんなふうに考える子育て世代はきっと少なくないはずだ。
しかしそれと同時に、急速に物価や燃料費が高騰してしまった。そして私たちの収入はなかなか増えることはなさそうな気配。実質的な収入減少だ。土地や資材も高騰しているし、これから子どもにお金がかかるのに、こんな状況で家なんて建てられない。先行き不安な私たちは、大きな買い物である「家」を諦めざるを得ない状況になっているのだ。
「若い世代、20~40代くらいの子育て世代の方が、新築を建てる、購入することに躊躇(ちゅうちょ)しているな、と肌で感じています。最初は夢を持ってモデルハウスをいくつか回るんですが、回っているうちにだんだん『これは自分たちの力じゃ無理だ』と感じるようです」と、WAKUWAKUハウスの松本さんは言う。
私たちはこのまま家づくりを諦めるしかないのだろうか。
実は日本の家は余っている!?
一方で、親世代も家のことで悩んでいる。子どもが巣立って夫婦だけの暮らしになり、ちょうど家のローンが払い終わったと思ったら、もうリフォームが必要な時期。しかしリフォームにお金をかけてしまったら、老後が心配。どうせ継ぐ人もいないのだから家を売ってしまってもよいのかもしれないが、先祖代々受け継いできた土地を自分の代で絶やしてしまっていいのだろうか……。「自治体からの要請を受けて古い家の耐震診断も行っているのですが、ちょうどバブル期に建てられた築40年くらいのお家が多く、正直ボロボロで大幅に手を加えないと安全に住めないという家も少なくありません。でもリフォームするお金がない。そのような家を見ていると本当に切ない気持ちになりますね」(松本さん)
高齢化や人口減少により、このような問題も多くなっている日本。古い家は余っているけれど活用されず、新築を建てたい人たちは家を諦めるしかない。なんとももどかしい住宅事情となっているのが現状だ。
親世代と子世代、どちらの悩みも解決するには?
家をリフォームしたいけどできない親世代と、新築を建てたいけど建てられない子世代。どちらの悩みも解決しながら、双方が幸せに暮らす方法はあるのだろうか?「“建て替え二世帯”という選択をする方がじわじわと増えています。親が住んでいる実家の敷地をそのまま使うことで子世帯は土地代がかかりませんし、親世代は新しく不安のない家に住むことができます。二世帯住宅なので建築費用は少し高くなりますが、親世帯は子どもや孫という後継者ができることに納得感を持ってくださるケースが多いです」と、松本さん。
そしてさらにこう続けた。
「子世帯にとっても、実家などの資産はいずれ相続問題が降りかかってきます。大体ご両親に万が一のことがあった時に慌てて手続きをしたり、兄弟間で揉めたりしがちなのですが、親御さんが元気なうちにそれらを話し合ってクリアにし、解決しておくことは、メリットしかないんです」(松本さん)
“建て替え二世帯”の注意点
二世帯住宅にする場合、夫婦どちらかの親と一緒に住むことになります。その場合、もう一方の親に角を立てないようにすることが大切だ、とWAKUWAKUハウスのホームアドバイザーである眞鍋さんは言います。「旦那さんが長男なのに奥さんのご両親と一緒に住むとか、奥さんが一人娘なのに旦那さんのご両親と一緒に住むとか、どちらの実家も近いのにどちらかの両親と一緒に住むとなったりすると、もう一方のご両親が不満を持つことが多いです。二世帯住宅を建てる場合は一緒に住む親と話し合うだけでなく、もう一方の親ともきちんと話し合い、納得してもらうことが必要になります」
さらに眞鍋さんはこう続けた。
「どちらの実家も遠い場合は二世帯住宅という選択肢はより難しくなるかもしれませんが、そもそも住まいは“ここ”じゃなきゃいけないのか? 今の仕事は永遠に続けるのか?という自問自答をしてみると、案外地方に移住して親と一緒に住むのも悪くないな、という考えも浮かんでくるかもしれません」
住まいを考えることは人生を考えること、そのものだ。その結果、自分の人生だけでなく親の人生をも幸せなものに変えられる可能性があるのかもしれない。
親と核心を話し合える関係こそが大切
実家の相続についてや、親が亡くなった後のことなど、実際に親と話したことがあるという方はどのくらいいるだろうか。なんとなくそのような話題には触れにくい、まだ先の話だと思っている方が大半だと思う。なかなか家が建てられない子育て世代、そして相続や空き家問題に悩む親世代が増えている日本で、これから賢く家づくりをしていく、そしてできる限り相続問題や空き家問題をなくすためには、家を持ちたいと考えた時点で親と相続について話し合っておくのがベストタイミングだ。
「普段から親子関係が良いお家は相続や二世帯住宅の話もスムーズですし、『実はこんな土地も持っていて』と、別の好条件の土地を親が持っていた、なんていうケースもあります。無理に自分で家を建てて、親が亡くなってから資産が判明するというケースも多いなか、事前に話し合ったことで双方にとってメリットのある家づくりができる。やはり早い段階で親と話し合っておくことはとても大切だと実感しています」(眞鍋さん)
仕事と育児に精いっぱいの子育て世代には、相続について目を向けることはなかなか難しいかもしれないし、親世代も「まだ元気だから関係ない」と思いがちかもしれない。しかしその時は必ず突然やってくる。一見無関係に見える家づくりと相続だが、そのふたつを同時に考え親子で話し合うことで、新たな住まい方の可能性が生まれるのかもしれない。
取材協力:WAKUWAKUハウス(株式会社 山喜)
大阪市住吉区の工務店。元々建築資材を扱う会社としてスタートし、さまざまな建築現場やリフォーム現場を見ていくなかで住宅業界の問題に直面。本当に長持ちして住む人の幸せが続く家づくりをしたいと、建築部門を立ち上げるに至る。ファイナンシャルプランナーや相続診断士の有資格者が在籍し、セミナーも多数開催している。
https://wakuwaku-house.com/
大阪市住吉区の工務店。元々建築資材を扱う会社としてスタートし、さまざまな建築現場やリフォーム現場を見ていくなかで住宅業界の問題に直面。本当に長持ちして住む人の幸せが続く家づくりをしたいと、建築部門を立ち上げるに至る。ファイナンシャルプランナーや相続診断士の有資格者が在籍し、セミナーも多数開催している。
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この記事の執筆者:岩﨑 未来
編集者・ライター。地方移住&大工の夫と自宅をリノベーションした経験から、ソーシャルメディアや住宅関係の執筆を多数手掛ける。3児の母。
https://brightwrite.biz/
編集者・ライター。地方移住&大工の夫と自宅をリノベーションした経験から、ソーシャルメディアや住宅関係の執筆を多数手掛ける。3児の母。
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