「感銘を受ける」は、改まった言葉で日常ではあまり使わない言葉ですが、ビジネスシーンや面接での志望動機、フォーマルな場面などでは使われることも多い言葉です。「感銘を受ける」の意味や使い方、類語、対義語についてフリーアナウンサーの小川厚子が解説します。
<目次>
・「感銘を受ける」の意味とは
・「感銘を受ける」の使い方と例文
・「感銘を受ける」を使うときの注意点とマナー
・「感銘を受ける」の類語・言い換え表現
・「感銘を受ける」の対義語は?
・「感銘を受ける」の英語表現
・まとめ
「感銘を受ける」の意味とは
「感銘」は「かんめい」と読み、「感」には心が動く、「銘」には心に刻むという意味があります。「感銘」は忘れられないほど深く感じること、心に深く刻み付けて忘れないような強い感動を受けることを意味します。
「感銘を受ける」は忘れられないほどの感動を抱いたり、自分の生き方や考え方に大きな変化をもたらすほど心を動かされるというようなときに使います。
「感銘を受ける」の使い方と例文
日常生活において
日常生活においては、読書や映画、美術作品や絵画などを見て心を動かされたときに使います。「感銘を受ける」という言葉は人生や考え方を変えるような感動を受けたり、心が動かされたりするときに使う言葉ですので、日常のちょっとした感動に使うことは適しません。使いすぎには注意しましょう。
【例文】
「彼の美術作品に感銘を受けました」
「この映画に感銘を受けて、私は医師を目指しました」
「私が感銘を受けた本を、ぜひあなたに紹介したいです」
ビジネスシーンにおいて
ビジネスシーンで使う場合には、相手の行動に対して使われることが多く、相手に敬意を示す表現になります。上司や目上の方、取引先の方の仕事に対する姿勢や、スピーチや講演などを聞いて心を動かされたとき、ビジネスプランや提案書の内容に感心したときなどに使います。相手の取り組みやアイデアに対する称賛や尊敬の意を伝えることができます。
目上の方に対しては「感銘する」ではなく「感銘を受ける」を使いますので、「感銘いたしました」ではなく「感銘を受けました」とすることで相手に敬意を表すことができます。
【例文】
「社長の新年のあいさつに感銘を受けました」
「彼のプレゼンテーションには感銘を受けました」
「彼女の、お客さまに対する姿勢に感銘を受けました」
関連記事:正しいビジネス敬語とは? 間違いやすい使い方やメールの言い回しをアナウンサーが解説【例文あり】
面接のシーンにおいて
面接のシーンにおいても「感銘を受ける」はよく使われます。しかし感銘を受けたことをうまくまとめられないなど、どのように伝えればよいのか悩みを持つ方も多いのではないでしょうか。エントリーシートや面接などでは、自分自身が体験したこと、企業の事業内容や経営理念に感銘を受けたと伝えることが多いです。
「感銘を受ける」という言葉は、人生を変えるような忘れられないほどの感動を抱き、心を動かされるという意味ですので、どのように感銘を受け、どのように感じたのかを具体的に伝える必要があります。理由を述べることで自分らしさや人間性を伝えることができ、説得力が高まります。多用すると信ぴょう性がなくなりますので、自分が特に伝えたい事柄に対して使うようにしましょう。
【例文】
「御社の〇〇という企業理念に感銘を受け、志望いたしました」
※必ず企業理念のどういうところに感銘を受けたのかを、具体的に伝える必要があります。質問されたときに理由や説明ができるように準備しておきましょう
【例文】
「学生時代に〇〇に感銘を受け、△△したことで自分自身の成長につながりました」
※必ず何にどのように感銘を受け、どう感じたのか具体的に伝えるようにしましょう
「感銘を受ける」を使うときの注意点とマナー
ネガティブな事柄には使わない
感銘の「銘」は心に刻むという意味や、特に優れた物品につける特定の名という意味があり、「座右の銘」「銘菓」「銘茶」のように良い意味で使われることが多い言葉です。「感銘を受ける」もポジティブな意味合いで使われることが多く、ネガティブな事柄にはあまり使いません。「感銘」という言葉を使い悲しい感情を表すときには「感銘に見舞われる」という表現をします。
多用しない
「感銘を受ける」という言葉は、人生を変えるような忘れられないほどの感動を抱き、心を動かされるという意味ですので、日常であまり使うことはありません。使いすぎると信ぴょう性がなくなり、大げさだと思われる可能性がありますので多用しないように使い方には注意が必要です。
自然や風景には使わない
「感銘を受ける」という言葉は、物事や他者の言動や思い、作品であることが多く、自然や風景などに心を動かされる場合には使いません。自然や風景に心を動かされた場合は「感動した」「心が動かされた」というような表現が一般的です。
「感銘を受ける」の類語・言い換え表現
深く感心する
提案やアイデア、人の行動に対して非常によい印象を受け、そのことについて深く心に感じたり、称賛を表したりするときに用います。ただし「感心する」という言葉は、上の立場から評価する意味合いがあり、目上の方に対して使うのは失礼にあたります。上から目線に聞こえる場合がありますので、上司や目上の方には「感銘を受けました」を使うといいでしょう。
【例文】
「彼の堂々としたスピーチに深く感心しました」
非常に感慨深い
物事に対して深く感じて、しみじみとした気持ちになることや、そのときの気持ちを表します。特に切なさや思い出深い話をするときに使われ、喜びや悲しみのどちらにも使うことができる言葉です。ただし、目上の方の功績や成功に対して「○○さんの昇進は非常に感慨深い」のように使うのは適切ではありません。使い方には注意しましょう。
【例文】
「娘が成人式を迎えたことは非常に感慨深いです」
「長年の研究がようやく成功して非常に感慨深いです」
非常に感じ入る
しみじみと感心するさまをあらわします。「入る」はその動作や態度を貫くことを意味する表現です。相手の取り組みに深く共感や理解を示すときに用います。
【例文】
「彼の勇気ある行動に、そこにいる全員が非常に感じ入りました」
「感銘を受ける」の対義語は?
無感動
心が動かされないこと、心に何も感じない様子を意味します。
【例文】
「彼女はあの映画を見ても無感動でした」
無関心
興味が全くなく、関心を全く持たないことを意味します。【例文】
「彼は政治に全く無関心で、選挙にも行きません」
失望する
期待が外れてがっかりすることを表します。【例文】
「私は、彼女の自分勝手な発言に失望しました」
「感銘を受ける」の英語表現
「be impressed by~」(~から感銘を受ける・受動態)、「be impressed with~」(~に感動する・能動態)この2つの表現は、ほぼ同じ意味で使われます。
【例文】
I was deeply impressed by the book.
(私はその本に深く感銘を受けました。)
【例文】
I was impressed with those words.
(私はその言葉に感銘を受けました。)
【例文】「be moved by~」も使えます
I was really moved.
(私はとても感動しました。)
まとめ
「感銘を受ける」という言葉は、忘れられないほどの感動を抱いたり、自分の生き方や考え方に大きな変化をもたらすほど心を動かされたりするときに使う言葉ですので、日常のちょっとした感動に使うことは適しません。
「感銘を受ける」は丁寧な印象ではありますが、使いすぎると大げさな印象が残る可能性がありますので多用するのは控え、本当に感銘を受けたときに使えるようにしておきましょう。