7歳の息子は、なぜ「言葉遣い」が悪くなった?スシロー事件、YouTuberの修羅場を見て育つ現代の子どもたち

小中学生の憧れの職業に「YouTuber」が常連入りするようになって久しい現代。しかし、インターネットとの距離間はあまりにも近く、子どもたちがYouTuber同士の修羅場、グループ内の騒動に触れてしまう機会も多い。大人はどう向き合うべきなのだろうか。

YouTuberの生々しい修羅場を目の当たりにする子どもたち。ネットリテラシーはどうなる?
YouTuberの生々しい修羅場を目の当たりにする子どもたち。ネットリテラシーはどうなる?

東海オンエア騒動で「ネットリテラシー」がX(旧Twitter)でトレンド入りするほど話題になった。東海オンエアの視聴者の中には、小中高生もいる。YouTuber同士の男女の生々しい修羅場やグループ内の騒動に触れてしまう機会の多い子どもたち。大人はどう向き合うべきなのだろうか。

YouTuberの動画を食い入るように見つめる7歳の息子

「息子が、某YouTuberの“全種類ジュース混ぜてみた”動画や、大金をかけてUFOキャッチャーにチャレンジする動画を食い入るように見ています」

こう話すのは都内で7歳の男の子を育てるアヤカさん(40代女性)だ。

アヤカさんはフリーの編集者として在宅で働いている。「息子が静かに遊んでくれるYouTubeは助かっている」としながら、最近は教育上の悪影響を心配しているのだという。

「最近『くそっ!』とか『マジか』とか言葉遣いが悪くなったんです。それは確実に見ているYouTuberの影響。自分より少し年上の中学生YouTuberの言葉遣いをまねするようになりました。だからといってタブレットを取り上げてしまうと、私の仕事が滞るし……。見る動画を制限したいけれど、見ているYouTubeを全て管理することは難しいし……」

アヤカさんのように、YouTuberの動画に関して、子どもの教育上の心配をする人は多い。その一方で「見ている間はおとなしくしてくれるから助かる」というのも本音だ。

アヤカさんの息子は、中学生になったら、友達と一緒にYouTuberグループを作りたいと言っているそうだ。「友達同士で悪ふざけしている様子をアップしているYouTuberの影響を受けているようです」と、心配そうな表情を浮かべる。

株式会社クラレが、2023年4月に小学校に入学する子ども4000人に対し「将来就きたい職業」について調査したところ、男子が就きたい職業の5位に「ユーチューバー」がランクインした。

2016年の初登場以来、「ユーチューバー」は8年連続で順位を上げ、過去最高の5位となった。子どもの就きたい職業として定番化していることがうかがえる。

しかし、YouTubeをはじめとしたSNSによる未成年へのリスクは年々増加している。

日本中を震撼させた“スシローぺろぺろ事件”

1月、回転ずしチェーン「スシロー」の店舗で、未成年の少年が卓上のしょうゆ差しの注ぎ口をなめるなどする迷惑行為を捉えた動画がSNS上で拡散した。

騒動後、スシロー側は、約6700万円の損害賠償を請求する訴訟を起こし、結果、“和解”で幕を閉じたものの、少年は個人情報を特定され高校を自主退学。

さらに、その後立て続けにYouTubeやXなどに、過激な模倣犯の動画がアップされる事態となった。

このスシロー事件を横目に、筆者の20代後半の友人は「うちらの時代もこういうことをしている子はいた、拡散されなかっただけで」と語る。

「スシローぺろぺろほど過激じゃなくても、うちらの中高生時代も、やんちゃな小中学生たちが、ファミレスでじゃんけんで負けた子のオムライスに大量にしょうゆをかけたり、ドリンクバーのグラスをたくさんとって、少しずつ混ぜたりする光景は見たことがあった。でも、問題にならなかったのは、それを撮影して、ネットにアップする文化がなかったから」

言うまでもなく、このスシロー事件で最も悪いのは、非常識な行為を起こした少年である。しかし“拡散”の裏側には、撮影・投稿したネットリテラシーの低い友人たちの存在がある。ちなみにこのスシロー動画の撮影者と動画を拡散させた友人とみられる関係者たちも、書類送検されている。

“地元ノリ”や“クラスメイト”で結成したYouTuberが頭角を現す現代

「うちらの時代もこういうことをしている子はいた」

この友人の言葉に筆者も妙に納得した。確かに似たような光景は見たことがある、拡散されなかっただけで。

その是非はさておき、アラサーである筆者の小中学生時代には「インターネットは怖いもの」という意識があった。なぜなら、周囲の大人たちに「携帯(電話)は高校生になってから」「パソコンは1時間まで」などと制限を設けられていたからだ。

しかし、現在。電車に乗れば、多くの小中学生がスマートフォンを食い入るように見つめている。

内閣府が実施した「令和4年度 青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、「スマートフォン」を利用している小学生は43.8%、中学生が78.9%、高校生では97.9%。

「スマートフォン」のインターネット利用者(2370人)のうち、「動画を見る」と回答した者は86.3%で最も多く、次いで「検索する」(83.6%)、「投稿やメッセージ交換をする(メールやチャットを含む)」(80.9%)が続く。

その結果を裏付けるように、電車でスマートフォンを見つめる小中学生の画面の多くには動画が映し出されている。動画=主にYouTubeだ。特に昨今、“地元ノリ”や“クラスメイト”で結成したYouTuberグループが小中高生に人気を博し、憧れの存在となっているが、たびたび炎上を繰り返している。

さらにスシロー事件のように、ネットリテラシーの低い友人によって、自身の動画や画像が知らぬ間に拡散されてしまうリスクもある。いくら気を付けていても、子どもたちが過激な動画にふれてしまう機会は避けられない。

親が「インターネットは禁止!」と強く言える時代は終わった。今親に求められているのは「インターネットを安全に使える能力を持った子どもを育てること」だ。

※回答者のコメントは原文ママです
※編集注:初出時、冒頭の東海オンエアの視聴者層に関する表現に誤りがありましたので、一部調整しております。訂正してお詫びいたします

この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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