ここがヘンだよ、ニッポン企業 第20回

「丸亀製麺」は炎上で「サイゼリヤ」には寛容、なぜ「カエル混入騒動」で命運が分かれたのか

丸亀製麺に続き、サイゼリヤでも「生きたカエルの混入」が発覚した。一見同じような問題に見えるが、丸亀製麺は炎上し、サイゼリヤには寛容な声も多い。なぜか?

なぜサイゼリヤは“スルー”されたのか

なぜこんな不可解なことが起きるのかと首をかしげる人も多いだろうが、我々のように企業危機管理をなりわいとしている者からすれば、これはちっとも不可解なことではなく、セオリー通りの現象だ。

では、そのセオリーとは何かというと、「異物混入などの食の安全を揺るがすような事故は後発者利益が得られやすい」ということだ。
サイゼリヤの鉄板ともいえる人気メニュー「小エビのサラダ」(出典:公式Webサイト)
サイゼリヤの鉄板ともいえる人気メニュー「小エビのサラダ」(出典:公式Webサイト
一般の方からすれば「なんのこっちゃ」という感じがするかもしれない。今回のケースに照らし合わせてもう少しかみくだいた言い方をすると、「カエル混入で注目された企業があったら、それから一定期間は他の企業が似たような事故があっても世間は無関心」ということだ。

つまり、世の中的には「丸亀製麺のカエル混入」でこの方面の話はもう終わっているので、「サイゼリヤのカエル混入」が起きても「ああ、またか、最近こういうの多いよな」くらいのリアクションになるということなのだ。

先ほども申し上げたように、丸亀製麺とサイゼリヤのケースでは「異なる店舗で同時発生的に起きた」という部分が決定的に違うところであって、サイゼリヤの調理場の安全チェック体制に疑問を抱くような事案だ。しかし、世間的には「同じ不祥事」として認識するのでスルーをしてくれるのだ。

こういう傾向があることを企業危機管理のプロはよく分かっている。だから、今回の「カエル混入」のように「後発者利益が得られる食品不祥事」が起きた際、積極的に自分から社会に公表をするという作戦を取る。

「お笑い芸人」でいえば「こすられすぎたネタ」

「カエル混入」というのは「お笑い芸人」でいえば「こすられすぎたネタ」なので、それを自ら公表をしたところで、せいぜい騒がれるのは1日くらいだ。一方、その事実を隠していたら、被害者や客がSNSなどで告発して「隠蔽(いんぺい)していた」などとバッシングされてしまう恐れがある。どちらが「得」なのかは明白だ。
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10年前に大炎上した「食材偽装問題」
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