タレントの板野友美さんが10月15日に自身のInstagramを更新し、娘の顔出しについて「今回の投稿でインスタのベビちんの正面顔出しは最後になる」と、今後の方針を明かした。不特定多数の目に触れるSNSで子どもの顔をアップすることに関しては、リスクも大きい。
「かわいい」以外、かける言葉がないじゃないですか
「地元の友人のインスタのストーリーで流れてくるのは、子どもの話題ばかり。自分は結婚・出産とは程遠い人間なので、うんざりしてしまう」こう話すのはサチカさん(31歳)だ。彼女は大学卒業後に上京し、現在は都内の会社で働いている。
現在、サチカさんの地元の友人たちの多くは子どもを持つ母親に。グループLINEでも子どもの画像が飛び交い、見ないうちにメッセージが100件以上たまっていることも。サチカさんは会話に入れず、モヤっとした気持ちになったことがあるという。
「SNSをやるのは個人の自由ですが、毎回毎回子どもの写真ばかりアップしている人を見ると、『またかよ』と思ってしまいます。『かわいい』以外、かける言葉がないじゃないですか。それになぜ自分の子どもの顔をSNSにあげるのか。鍵を付けずにアップしている友人もいて、リスク管理大丈夫?って」
サチカさんは「私なら子どもの顔は投稿しない」と前置きしつつ「でも今後、自分に子どもができたら考え方が変わるのかなぁ」とつぶやいた。
「SNSに子どもの写真や動画を投稿したことがある」は5割超
出産をきっかけに自分の子どもをSNSに投稿する人はどのくらいいるのだろうか。2022年、弁護士ドットコムが18歳未満の子どもがいる328人の男女を対象に「子どもの写真投稿に関する実態調査」を行った。
その結果、「子どもの写真や動画をSNSに投稿したことがある人」は、52.8%。内訳は「顔が分かる形で1年以内に投稿した」が22.9%、後ろ姿や顔部分を加工するなど「顔が分からない形で1年以内に投稿した」が17.7%、次いで「過去に投稿していたが1年以内には投稿していない」が12.2%となった。
「子ども」を介して自分の承認欲求を満たしている?
前述の調査では、子どもの顔が完全に分かる状態で投稿した人は、5人に1人の割合であった。さらに同調査の中で、「子どもの写真や動画を投稿したSNSの公開範囲を制限しているか」を尋ねたところ、40.6%は「していない」と回答している。この「子どもの顔出し」に関してはこんなママ友トラブルも。
「勝手に他人の子どもを投稿するママ友がいて困っています」
こう話すのは、ミワコさん(33歳)。ママ友の自宅に遊びに行った際、ママ友に、子どもたちがプールで遊ぶ動画を勝手にInstagramのストーリーズにアップされたという。
「私の娘を含む水着姿の3歳の女の子たちがプールで遊んでいる姿を、許可も取らず勝手にアップしたんです」
そのInstagramのストーリーズは「親しい友人のみに公開」の設定になっていたが、その“親しい友人”の数はミワコさんには分からない。ママ友は、数千人のフォロワーがいるママアカウントであり、自身の子どもに関しては全体公開していた。
ミワコさんは「親しい友人のみといっても私の知らない人もたくさんいるので」としながら、「さすがにネットリテラシーが低すぎる。ママ友に注意しましたが、『え? 限定公開だからよくない?』と言われて。それからそのママ友とは距離を置くようになった」と顔をしかめる。
ミワコさんは、子どもをSNSに投稿することに対してはとても慎重だ。
「Facebookの出産報告をして以降、子どもの投稿は控えています。SNSで不特定多数の人に子どもを公開することは、子どもを介して自分の承認欲求を満たしたい親のエゴだと思う」
子どもも“他人”。自分のエゴを満たす道具にしてはならない
30代前後になると、同級生たちのSNSは多様化する。「恋人がいる人・いない人」「結婚した人・しない人」さらに「仕事をする人・しない人」……さまざまな人生の分かれ道の途中で、友人が減っていき、つながっているのはSNSだけというのはよくある現象だ。その中でも、SNSの投稿がガラっと変化するのが「子どもを産む・産まない」という分岐点だ。筆者の周りを見ても、出産をきっかけにSNSが子ども一色になる人も多い。
子どもばかりの投稿を見て、サチカさんのようにモヤっとした気持ちを抱えてしまう人もいれば、勝手に自身の子どもを投稿され、トラブルになりかけたミワコさんのようなケースもある。
SNSに子どもを投稿する親に対し、「子どもを介して自分の承認欲求を満たしたい親のエゴ」と話すミワコさん。しかし前提として、SNS自体、承認欲求を満たすためのツールである、と筆者は考える。
人生の分岐点が多いアラサー以降、SNSの向き合い方は人それぞれだ。ただし、他人に対する配慮だけは忘れてはいけない。子どもも“他人”だ。
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この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。