日本は「結婚=子ども」的価値観の少子化大国。夫婦の形の“多様化”だけでは片付けられない不満と悩み

「子どもはいらないので、結婚をする必要はない」「『結婚=子ども』でなければ、子どもが欲しい」など、結婚と子どもへの考え方はそれぞれだが、現行の法律や制度の関係もあり、「結婚=子ども」でセットで語られる価値観に辟易するアラサー女性たちは多い。話を聞いた。

日本は「結婚=子ども」的価値観の少子化大国
なぜ「結婚=子ども」で語られるのか

少子化が止まらない。厚生労働省の2022年の人口動態統計(概数)によると、出生数は1.26と7年連続で減少。厚生労働省は「結婚したとしても子どもを持つことを望まないなど、夫婦や家族の形が多様化している」としているが、要因はもっと複雑化しているようだ。都内に住むアラサー独身女性に本音を聞いた。

「子どもはいらないので、結婚をする必要はない」

「子どもはいらないので、結婚をする必要はない」
 
こう語るのは、サキカさん(31歳/仮名/メーカー勤務)だ。彼女は現在、豊島区のマンションで、3つ年上の彼と同棲中。彼女には20代に離婚経験がある。
 
「一度経験しているので、結婚に対する憧れはありません。結婚していた時、子どもは『いずれ授かれば』くらいの気持ちでした。でも結婚した途端、『子どもは?』と周囲に言われるようになって」
 
独身なら「結婚は?」と言われ、結婚したら「子どもは?」と言われる――。

サチカさんは、20代後半の頃を振り返ってこう話す。
 
「アラサーになって、彼がいると言えば『結婚は?』と親戚一同から圧をかけられて。それがうっとおしくて、勢いで結婚しちゃった部分もあるんです。でも、結婚すれば次はすぐ『子どもは?』と。『いずれは……』と返答すれば、『早い方がいいよ』と言われる。自分の意志とは関係なく、周囲が自分たちの“当たり前”をぶつけてくるのがしんどくて」
 
サチカさんの結婚生活は2年で終了。離婚原因はお金の価値観の相違だった。

「同棲せずに結婚したのがよくなかったかもしれない」と1回目の結婚生活を振り返るが、離婚を経験した現在、とても生きやすくなったという。
 
「結婚前に比べて、離婚を経験した今の方がとても生きやすくなったと思います。同棲している彼がいると言うと、周囲から『結婚は?』と言われることもあるけど『実は私バツイチなんです~』と言えば、それ以上詮索されなくなる。地方に住む両親からも一度離婚を経験しているからか、そこまでとやかく言われることはなくなりましたね」
 
1度目の結婚の際は「いずれ子どもも考えたい」と思っていたというサチカさん。だからこそ結婚を決めた部分もあるというが、今は子どもを欲しいと思わない。
 
「結婚していれば『子供は?』と言われるので、正直世間体もあって、いずれは……と考えていました。子育て制度的にも、子どもが欲しいなら、結婚すべきだと思うけど、今冷静に考えてみると、私には子どもが欲しいという気持ちが全くない。それで、子どもはいらない=結婚は必要ないよね、って彼とも話しています」
 
今のサチカさんにとって、「結婚」と「子ども」はセットなのだ。

「結婚=子ども」でなければ、子どもが欲しい

 一方でこんな意見もある。
 
「子どもが欲しいと思っているので、結婚をしないといけないと思っています」
 
こう話すのは、マミさん(32歳/仮名/小学校教諭)だ。彼女は大学まで東京で過ごし、22歳で東北の実家に戻った。現在地元の小学校の教員として働き、キャリアを積んでいる。
 
「大学を卒業してから、仕事にささげてきた10年でした。教員採用試験に受かるまでに数年かかったこともあり、結婚したいという気持ちはありつつも出会いはなく。現在に至ります」
 
マミさんに最後に恋人がいたのは25歳の時。それから5年「子どもが欲しい」と考えるものの、仕事に忙殺され、婚活は後回しだった。
 
「この年齢になると、地元の友人はみんな結婚しているし、 “恋愛の始め方”を忘れてしまった気がして。そもそも、自分の経験の中で”恋愛をした経験”がほとんどない。私にとって、恋愛からの結婚、という過程が難しすぎるんです。だけど子どもは絶対欲しいので、お金をかけて(結婚相談所に通って)婚活をしようか……迷っています」
 
前述のサチカさん同様、マミさんも「結婚=子ども」と考えている。さらにこんな本音も。
 
「30代に入って、今やっと仕事が楽しくなってきた時期なんです。そんな時に、子どもを産むために恋愛して、結婚をして、妊活をしてって、ハードルが高いなと感じます。でもだからといって、20代のころに、仕事でブランクを空けることはもっと考えづらい。そんなことを考えていたら、産むタイミングを完全に逃しそうで」
 
20代後半から上記のような悩みをずっと抱えてきたというマミさん。「世間体があるし、エゴだと言われるかもしれないけど」と前置きしながら、こう語る。
 
「結婚せずに子どもを産むという選択肢が普通になれば、私はそれを選んでいたと思います。自身で稼いでいるし、実家のサポートも得られる。子どもが欲しいからって、婚活からスタートする時間がもったいなく感じることがあるんです」
 

「結婚=子ども」「子ども=結婚」で語られる生きづらさ

 「子どもを望まないので結婚しない」サチカさん。そして、「子どもを望むので結婚したい(しなくてはいけない)」と考えるマミさん。
 
現行の法律では、法律婚をすれば共同親権を持つことができるが、事実婚では親のどちらか一方しか親権を持つことができない。そのほかにも、事実婚の場合、夫が法律上の父となるためには、「認知」などの手続きが必要になるなど、法律婚と事実婚では子育ての面でもさまざまな違いがある。

しかし、夫婦別姓のままでいられるなど、事実婚でしか得られないメリットもある。子どもを望む望まないにかかわらず、「結婚=子ども」がセットで語られること自体に、生きづらさを感じているアラサー世代は多そうだ。


※回答者のコメントは原文ママです


この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。
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