ヒナタカの雑食系映画論 第44回

『デジモン映画』には細田守監督のルーツがある! 歴代の名作3選と最新作の“ダークで恐ろしい”魅力

アニメ映画『デジモンアドベンチャー 02 THE BEGINNING』が公開中の今こそ、デジモン映画の名作3作を振り返ってみましょう。それらに細田守監督の「ルーツ」があり、今作の田口智久監督は「発展」を打ち出したとも思うのです。※画像出典:(C)本郷あきよし・東映アニメーション・東映

1:『デジモンアドベンチャー』(1999年)


「'99春東映アニメフェア」の1つとして劇場公開された、同年から放送されたテレビアニメの前日談としても捉えられる20分の短編作品です。あらすじは、幼いきょうだいの元に、パソコンから飛び出てきたタマゴが現れ、そこから生まれた生命体が大騒動を起こしていくというもの。躍動感たっぷりのアニメ表現をたっぷりと楽しめる作品になっています。

細田守の監督デビュー作であり、「子育て」の苦労とやがて「制御できなくなっていく」過程は、『おおかみこどもの雨と雪』にも通じています。怪獣映画のようなスペクタクル、子どもが苦しむ表情までもを描ききるなど、細田守監督の「容赦のなさ」を感じられるはずです。バレエ曲の『ボレロ』を、これほどまで見事に使った映像作品は後にも先にもないでしょう。

なお、テレビアニメ『デジモンアドベンチャー』(フジテレビ系ほか)の第21話「コロモン東京大激突!」は本作と連動しているような物語が展開しており、こちらも細田守が演出(監督)を手掛けてこその「不安と孤独」が丹念に描かれています。

2:『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)

こちらも細田守監督作品で、『サマーウォーズ』のストーリーラインの原型となったことでも有名です。あらすじは、インターネットで生まれた新種のデジモンがインターネットのデータを食い荒らすようになり、世界中のコンピューターが誤作動をはじめてしまうというもの。40分の中編ながらダイナミックなバトルが次々に展開する、濃厚な作品になっていました。

それでいて、夢いっぱいの冒険というわけではなく、むしろ仲間を募ろうとしても、ちっとも集まってくれないシビアな作劇も特徴的。主人公たちがとことん追い込まれてしまう「ギリギリ」の戦いが繰り広げられることも『サマーウォーズ』と共通しています

また、細田守監督作ではありませんが、本作の直接的な続編である『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』もあり、こちらも合わせて見るとより楽しめるでしょう。

3:『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』(2020年)


こちらは細田守監督作ではなく(詳しくは後述する)田口智久監督作品。テレビアニメシリーズの20周年を記念して製作された映画で、1999年の夏の冒険から10年以上が経過してからの、大人になったキャラクターたちの最後の戦いが描かれています。現在放送中のテレビアニメ『キボウノチカラ〜オトナプリキュア'23〜』(NHK Eテレ)もそうですが、「子どもだったあの頃とは違う」切なさ、世知辛さも描かれています

「大人にならなきゃいけない」「でも子どもの頃のままでいたい」という普遍的な葛藤を経て未来へと歩んでいく過程からは、あの歴史的名作『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』も連想しました。物語そのものは予備知識がなくても楽しめますが、『デジモン』への思い入れが強いほど感動も増すでしょう。できれば、前述した初代映画『デジモンアドベンチャー』だけでも先に見ておくことをおすすめします。

なお、『デジモンアドベンチャー』(1999年)と『ぼくらのウォーゲーム!』と『ディアボロモンの逆襲』は、10月20日から全国46館で2週間限定で劇場上映中です。この機会に映画館で見てみるのもいいでしょう。

>次のページ:最新作のあらすじは? ダークで恐ろしい作品!?
 
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