アラサーが考える恋愛とお金 第19回

仕事を匂わせるDM→タイプなら食事をおごる? 雇用関係を利用した男性の「コスパ婚活」の手口とは

「仕事の話を聞いてみたいので、今度ぜひランチでも」雇用関係を利用して食事に誘い、タイプなら食事代をおごるが、タイプでないならおごらない……そんな男性がいるという。婚活にも「コスパ」を求める男性の実態とは?

ランチデートで、コスパよく婚活をしていた?

 「うわー最悪じゃん」
 
その場にいた女性陣は全員田中の行動にドン引きしていた。そもそもこの場にいる4人は同じメディアで執筆しているライターだ。DMを送りまくったら、このようにうわさになると分からなかったのだろうか。それとも気にしていないのか……。
 
田中のやり方はこうだ。

1:X(旧Twitter)やInstagramでランチに誘う(ちょっと仕事を匂わせる)
2:ランチに来てくれた女性におごるorおごらない
3:おごった女性は次回、ディナーに誘う
 
田中は1回目のランチで(1)デートをしたい人、(2)仕事をしたい人、(3)それ以外に女性を選別しているようだ。

ちなみに絶対に(1)と(2)がかぶることはない。 

「ある意味コスパよく恋活してるよね」
 
B美はドン引きしながらも田中の行動力に感心していた。

マッチングアプリのように使用料を払わなくても無料で使えるXを使い、1000円程度のランチをして、気に入った女性はディナーに誘えばいいのだから、コスパという点では、効率よく恋活しているようにも見える。
 
しかしこれだけうわさになってしまうのだ。田中は、相当な数のDMを女性に送り付けていたことが考えられる。
 
「DMを送ってくる男性には要注意だね……」
 
そんな話で終結した食事会だった。しかし半年後、田中のXには衝撃的な「ご報告」が投稿されたのだ。

仕事を匂わせて誘い、同時進行で複数人とデート。ついに結婚

 「結婚することになりました」
 
田中のXに突然投稿された結婚報告。キラキラ輝く指輪をつけた田中ときれいな女性(顔はモザイクがかかっていた)が投稿されている。
 
さらに驚くべきことに、投稿には「結婚を見据えて半年付き合った彼女と~」とある。それは、A子にDMが届いたのとほぼ同時期だった。
 
お相手は、エンタメ系のメディアで働く女性。田中は結婚を機に、Xを辞めるといって、1カ月後くらいにアカウントを削除した。
 
A子は投稿を見るやいなや「やっぱり同時進行でいろんな人とデートしてたんだ!」と騒いでいる。
 
そもそもA子は、ランチをするまで田中のことなんて一切興味はなかったという。写真を見る限り、田中はお世辞にもイケメンとはいえない中肉中背の30代前半の男性だ。
 
だけど彼からの丁寧なDMと、ランチでのトーク力に好意を持ってしまったのだ。もしかしたら結婚した彼女もそうかもしれない……という。

「デートはコスパがわるい」
 
世間ではそんな声が聞こえてくるが、田中は「数打ちゃ当たる」の精神で、最もコスパのいい方法で婚活を成功させたといえるかもしれない。
 
筆者は本記事を書くにあたり、田中のSNSは消えてしまったので田中の会社のSNSをのぞいてみた。

すると、最近、会社全体でランチミーティングでの人材雇用に力を入れているとある。求人サイトに募集を載せなくても、おいしいランチを楽しみながら、会社に興味を持ってくれている人とマッチングできるのが魅力だそう。
 
田中は婚活だけでなく、採用活動も“コスパ重視”で成功させているようだ。


この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。


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