批判的な声やスキャンダルも
ただこうしたランキングにはその影響力の高さゆえに、これまでずっと批判的な声もあった。そもそも、その算出方法など不透明な部分がある上に、大学側が提供する情報の正確さも検証できない。2016年にユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が、「有害無益では?」とランキングに対して疑問を呈したこともある。
事実、ランキングを巡っては、内部告発によるスキャンダルも起きている。2022年9月、アメリカでも伝統のある名門私立大学8校を指す「アイビーリーグ」の1校であるニューヨーク州のコロンビア大学が、『USニューズ・アンド・ワールド・リポート』のランキングのためにデータを操作していたことが判明して騒動になった。
さらに2022年11月には、やはりアイビーリーグの1校であるコネチカット州のエール大学の法科大学院が、『USニューズ・アンド・ワールド・リポート』のランキングには算出方法などに欠陥があるとして、ランキングへの協力を拒否すると表明した。
すると、アメリカでもトップスクールであるハーバード大学法科大学院やカリフォルニア大学バークレー校の法科大学院も不参加を表明し、データの提供などを中止にした。結局、離脱した法科大学院は40校を超えた。
米英以外は冷ややかな目で見る人も
またこれらのランキングは、アメリカやイギリスに偏重しているのではないかとの指摘もあり、それ以外の国では冷ややかな目で見る人たちもいる。
過去にさかのれば、2007年には、これらのランキングの走りだった『USニューズ・アンド・ワールド・リポート』を一部の大学がボイコットする動きが出たこともある。当時、アメリカを中心に数十の大学が批判の署名をして大きな議論になった。ただそれでも、ランキングが消滅することはなく、それどころか、現在ではランキングの種類が増え、これまで以上に広く話題になっている。ランキングに需要があるからこそ、生き残っているのである。
このように、ランキングが毎年大きな話題になる以上、その存在が消えることはない。インターネットの普及で、レストランからホテル、電化製品から書籍まで、ありとあらゆるものが評価されるようになった昨今。大学ランキンングのような評価とランキングも需要がなくなることはないだろう。
>「THE世界大学ランキング2024」TOP20&上位に入った日本の大学を見る
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)。近著に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)がある。
X(旧Twitter): @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」