別れを告げない若者が増えている。近年、マッチングアプリで気軽に出会いを求めることができるようになった一方、その“気軽さ”ゆえ、希薄な恋愛関係が生まれているようだ。アプリで生まれた恋愛関係は「別れ」なしで終わることも……。
マッチングアプリで「フェードアウト」は当たり前?
「彼氏から最近連絡がないんだよね」筆者の友人・マリコ(仮名・29歳)がスマートフォンの画面をじっと見つめたままつぶやいた。彼女は3カ月前、3つ年上の恋人ができた。しかし最近、彼からのLINEの頻度が落ちてきているという。
「たまに電話してみたら?」
「マリコからデートに誘ってみれば?」
その場にいた私を含む友人たちはマリコに助言したが、マリコは「うーん、どうだろう」と悩んでいる様子。マリコは彼の仕事内容は知っているものの、彼の勤め先やLINE以外の連絡先を知らないようだ。
マリコと彼の出会いは、マッチングアプリ。「彼とは結婚も考えたい」と話すマリコは、じっと彼の連絡を待っている。
希薄な関係が生まれやすくなったのは現代特有なのか
近年、マッチングアプリを使い、気軽に出会いを求めることができるようになった。しかしその“気軽さ”ゆえ、希薄な恋愛関係が生まれている。前述したマリコは、彼とマッチングアプリで交際に至ったため、共通の友人はいない。2人をつなぐものはLINEのみだ。
学校や職場など、共通の知人がいる場で恋人同士になったケースだと、「連絡がない」状況が生まれても、相手の近況はすぐに分かる。共通の友人に相談したり、時に仲介に入ってもらったりすることもできる。
しかしマッチングアプリ出会いだとそうはいかない。
マリコは「電話番号くらい聞いておけばよかった」とつぶやく。彼の自宅も知ってはいるが、まだ付き合って3カ月のため、急に押し掛けるのも気が引けるというのだ。
まるで“振られ待ち”だった恋人。その後、破局……
結局、マリコから何度か彼をデートに誘った。しかし数日たって「忙しくて。ごめんね」と連絡が来る。最終的には既読だけついて返信すら来ない状況に。それから1カ月半たった頃、マリコは「もう別れたい?」と恐る恐る彼に聞いた。すると彼から「俺も前からそのほうがいいと思ってた。今までありがとう」とあっさりした返信が。
まるで“振られ待ち”のようだった、とマリコは言う。「私が別れを告げなかったらフェードアウトで終わってたかも」と自虐的に笑いながら、半年間の交際期間を終えた。
相手の振られ待ちのせいで、貴重な28歳の数カ月が無駄に
この一連の話を聞いて、筆者はとても腹が立った。 すでに「別れたい」と思っていたなら、なぜもっと早くマリコに別れを告げなかったのか。マリコは「彼と未来がある」と期待していた。2人が出会ったのは、“ガチ婚活勢”向けのアプリなのだから当然だ。マリコはプロフィール欄で「真剣な出会いを求めている」と明記している。
そのうえでマリコに告白した彼は、彼女が真剣な交際を求めていたことくらい分かっていたはずだ。仕事が忙しいのだとしても、何日も連絡せず、最終的に“振られ待ち”とは、いかがなものか……。マリコが仮にストーカー気質だとか、別れをごねるようなタイプだとしたら、別れを告げづらいのも分かる。しかし、決して彼女はそういうタイプではない。
マリコは彼の「仕事が忙しい」という言葉を信じ、貴重な28歳の数カ月を無駄にしてしまった。
振られ待ちは卑怯な手口。人間性は別れ際に出る
実は、筆者も過去に“振られ待ち”の経験がある。付き合っていた恋人からの連絡頻度が減り、デートを断られるようになった。ちなみに、共通の知人はいなかった。仕方なく筆者から「もしかして別れたい……?」と伝えると、その時だけ「そうだね」と短い返信が来た。
「別れたいならもっと早く言ってほしかったな」と筆者が言うと、「サチコのこと、傷つけたくなかったんだ……」と一見きれいな返信が。「いやいや、振るのがめんどくさかったんでしょ!」と思ったのを覚えている。
ちなみに、この元恋人。歴代の彼女との別れも“あえて”あいまいにしてきたようだ。 さらに友達以上恋人未満の女性も複数いることが後日発覚。私も危うく彼の“元カノストック”に入れられるところだったと分かり、すぐに連絡先を削除した。
「別れ際に人間性が出る」とはよく言ったもの。音信不通や“振られ待ち”など、別れ際が汚い人間に誠実さはない。「別れ」をあいまいにする人は、連絡を待っている側の気持ちなんてこれっぽっちも考えていないのだ――。
「連絡が1日来なければ、待たずに次に行く!」マリコはそう決めて、婚活を再開している。
※回答者のコメントは原文ママ
この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。