「わざわざ」の正しい敬語は? ビジネスでの使い方や言い換え表現をアナウンサーが解説

「わざわざ」は副詞として、相手に感謝やねぎらいの気持ちを伝えたい場合に「感謝の気持ち」とともに敬語表現としてビジネスシーンやメールなどさまざまな場面で使えます。しかし、使い方を間違えると失礼な印象を与えることもあるため注意は必要です。

「わざわざ」の正しい敬語は? ビジネスでの使い方や言い換え表現をアナウンサーが解説
「わざわざ」の正しい敬語は? ビジネスでの使い方や言い換え表現をアナウンサーが解説

相手をねぎらう気持ちで使う「わざわざ」という言葉は何気なく使っている人も多いでしょう。しかし使い方を間違えると相手に失礼な印象を与えてしまう場合があります。

「わざわざ」の使い方をフリーアナウンサーの小川厚子が解説します。

<目次>
「わざわざ」とは? 意味と正しい使い方
「わざわざ」の正しい使い方
「わざわざ」の敬語表現とビジネス応用 
「わざわざ」のビジネスシーンでの例文 
「わざわざ」の言い換え表現 
「わざわざ」は嫌味になる? 失礼表現を避けるには 
「わざわざ」を使うときの注意点
「わざわざ」に関するよくある質問 
アナウンサーは「わざわざ」をどう使っている?

「わざわざ」とは? 意味と正しい使い方  

「わざわざ」の意味

お礼や感謝の気持ちを伝える際に「わざわざありがとうございます」と表現することがあります。「わざわざ」という言葉には2つ意味があります。

(1)そのためだけに力を尽くして、期待できる以上の手間ひまをかけること
(2)しなくてもいいことを、意図的に、わざと行うこと

このような違いがあるため文脈の違いで読み取る必要があり、使うときにも注意が必要です。

「わざわざ」の語源

普通ならそこまで行わなくても良いことを行うさまのことで、意識的に行動することを意味する「態々し(わざわざし)」が語源とされています。

「わざわざ」の正しい使い方

相手に感謝やねぎらいの気持ちを伝えるときに使います。「わざわざ」を、自分の行動や相手の行動そのものに使わない方が良いでしょう。面倒だけどやってあげた、相手の行動が迷惑である、というニュアンスになるので注意が必要です。

「わざわざ」の敬語表現とビジネス応用  

「わざわざ」は敬語として使える  

「わざわざ」は副詞なので単体で使うことはありませんが、相手に感謝やねぎらいの気持ちを伝えたい場合に「感謝の気持ち」とともに敬語表現としてさまざまなシーンで使えます。

「わざわざ」はビジネスシーンでも使える

ビジネスシーンにおいて、対面以外にメールでも使うことができます。取引先やお客さま、上司など、目上の人にも感謝と敬意の気持ちが伝えられます。

関連記事:正しいビジネス敬語とは? 間違いやすい使い方やメールの言い回しをアナウンサーが解説【例文あり】

「わざわざ」のビジネスシーンでの例文  

相手に感謝を伝える場合

【例文】
「本日はお忙しいところ、わざわざお越しくださり誠にありがとうございます」

相手に謝罪する場合  

【例文】
わざわざお越しいただきましたが、担当者が不在で大変申し訳ございません」

相手に恐縮する場合

【例文】
「お忙しいところ、わざわざご連絡をいただき、大変恐縮しております」

「わざわざ」の言い換え表現  

言い換え表現(1)せっかく

相手の無理や苦労、負担をねぎらうときに使います。

【例文】
せっかくお越しいただきましたが、準備ができておらず申し訳ございません」

言い換え表現(2)お忙しい中  

「わざわざ」という意味で「そのためだけに力を尽くす行為」というねぎらいの気持ちを伝えたいときに使います。ビジネスメールでもよく使われます。

【例文】
「本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきましてありがとうございました」

言い換え表現(3)取り立てて  

多くの中から特別に取り上げる際に使います。打消しの表現になることが多い言葉です。

【例文】
「その事柄については、取り立てて言うほどのことではない」

言い換え表現(4)本当に

心からそう思っている気持ちが伝わります。 

【例文】
「このたびは、ご尽力いただきまして、本当にありがとうございました」

言い換え表現(5)あえて

本来は必要のないことを意図的に行う場合「わざわざ」を使いますが、「あえて」を使うことで相手のためを思って非難や苦言を伝えるニュアンスです。

【例文】
あえて言うなら、先日の〇〇はしない方が良かったかもしれない」

言い換え表現(6)格別  

「格別」を使うことで、通常の場合より大きく違っているという表現になります。

【例文】
「先日の会議では格別なご配慮をいただき、大変感謝しております」

言い換え表現(7)ご丁寧に

相手の心遣いに対して、相手に敬意を表現したり、感謝の気持ちを伝えるときに使います。

【例文】
ご丁寧にお電話をいただきまして、ありがとうございます」

「わざわざ」は嫌味になる? 失礼表現を避けるには  

「わざわざ」が嫌味・失礼に聞こえてしまう

「わざわざ」をねぎらいや感謝以外の表現で使ってしまうと、嫌味や失礼に聞こえてしまうことがあります。

自分の行動に使うと「面倒だけどやってあげた」と恩着せがましいニュアンスになり、相手の行動そのものに対して使うと「やらなくていいことをあなたはやった」と嫌味や失礼に聞こえてしまいます。

「わざわざ」を使わない方が良い場面  

「断りを入れるとき」は「わざわざ」を使いません。

【例文】
「わざわざお越しいただく必要はございません」


「わざわざ来なくていい」と聞こえてしまうかもしれません。この場合は次のように言い換えるといいでしょう。

【例文】
「こちらにお越しいただく必要はございません。お気遣いをいただきありがとうございます」

「わざわざ」を使うときの注意点

「わざわざ」は基本的に感謝やねぎらいの気持ちを伝えるときに使います。否定的な意味で使ったり、自分の行動や相手の動作に対して使わないように注意が必要です。

「わざわざ」に関するよくある質問  

Q. 「わざわざ」は目上の人に対しても使えますか?  

取引先やお客さま、上司など目上の人に対しても使うことができます。
 

Q. 「わざわざ」を英語で表現すると?  

(1)take the trouble to

【例文】
She took the trouble to come here.
(彼女はわざわざここに来てくれました)


(2)expressly to

【例文】
Thank you for sending mail expressly to me.
(わざわざメールを送ってくださりありがとうございます)

 

Q. 「わざわざありがとう」に込められた意味とは?  

「そのためだけに力を尽くして、手間ひまかけてくれてありがとう」という感謝の気持ちが込められています。感謝を伝える敬語表現としてさまざまなシーンで使うことができます。

Q. 「わざわざご丁寧に」は目上の人に対して適切な表現ですか?

「わざわざご丁寧に」は「そこまでやらなくていいのに」「余計なことをして」と嫌味に聞こえてしまう場合があり誤解される表現です。「ご丁寧に」は相手の心遣いに感謝しているときに「ご丁寧にありがとうございます」とお礼の言葉とセットで使うといいでしょう。

アナウンサーは「わざわざ」をどう使っている?

相手を思いやる気持ちを伝えられ、コミュニケーションが円滑になる言葉ですので普段から使います。丁寧に気遣いのつもりで伝えた言葉が嫌味に解釈されてしまう可能性もありますので使い方には注意が必要です。
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