『マイ・エレメント』を、中高年が見た正直な感想。人生経験豊富な世代はどう感じた?【ネタバレあり】

8月4日に公開されたディズニー&ピクサーの最新作『マイ・エレメント』。「火」と「水」の男女が出会うロマンティックなラブストーリーを夢も恋もひと通り追ってみた中高年世代が観たら……? 映画レビューをお届けします。

中高年は思う、これからの2人の恋の壁は「金銭感覚の違い」だと

作中で、進路を迷っているにエンバー対し、ウェイドが「父親の店を受け継ぐのではなく、自分の夢を追ってみるべき」と助言するシーンがあります。これに対し、エンバーは「恵まれた家庭に育った人には分からない」と怒りをあらわに。都会のど真ん中で警備員常駐のタワーマンションに住み、多くの親戚たちに囲まれて暮らしているウェイド。一方、エンバーは「火」のエレメントが集まる街で、水道の配管まで父親が手作りで施した家に住み、親子で休む間もなく働いています。

“性質の違い”という大きな壁はクリアした2人の恋。試練を乗り越えた2人の恋が末永く続くことは間違いないし、いちファンとしても切に願います。しかし、今後2人に再び恋の試練が訪れるとしたら、きっと「金銭感覚の違い」だな……。でも、それも真実の愛を手に入れたからこそ。そんな所帯じみた悩みにぶち当たる2人も見てみたいと思ってしまうのでした。
 

互いを思い合う“親子関係”が中高年の心に染みる


家族を守るため、「エレメント・シティ」に移り住み、慣れない土地で立派な雑貨店を築き上げたエンバーのお父さん。そんな両親の苦労や思いを理解しつつ、本当は店を継ぎたくないと言えないエンバー。互いを思い合う気持ちがあるからこその親子関係が切ないシーンもありました。

親が子どものために良かれと思っていることが、子どもにとっては重責になったり逃れられないしがらみになったり……というのは、よく聞く話です。人生の先輩として、自分の失敗などを踏まえて、子どもが可能な限り失敗しないように、傷つかないようにと助言していることが、かえって子どもの人生の邪魔をすることもあるのかもしれません。エンバー家の親子関係には、親世代が改めて心に刻みたいメッセージが含まれていました。
 

「若者たちよ、すてきな恋を!」と叫びたくなる作品

『マイ・エレメント』は、エレメント・シティの移民としてのエンバー家の暮らし、ほかのエレメントからやや排他的な扱いを受けているとも見える「火」の立ち位置、弱者に甘くない役所の対応など、深読みしようとするならばいくらでも注目すべき要素があり、何度見ても楽しめる作品です。

現実的で感情的なエンバーと伸びやかで自由なウェイドという、性質も性格も異なる2人が惹かれ合い、触れ合うことができるようになるまでの初々しいラブストーリーは新鮮で、涙を誘います。「エンバーとウェイドのように、ぶつかったり、分かり合えないと絶望したりしながら歩み寄っていくすてきな恋をしてほしい!」と劇場内の若者やカップル皆に伝えたくなるような、純粋で美しい作品でした。
 

さらに、短編として『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009年公開)のその後を描いた短編アニメーション『カールじいさんのデート』も同時上映されます。豪華すぎて必見な内容なので、こちらもぜひ楽しみにしてみてくださいね。


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この記事の筆者:福島 ゆき プロフィール
アニメや漫画のレビュー、エンタメトピックスなどを中心に、オールジャンルで執筆中のライター。時々、店舗取材などのリポート記事も担当。All AboutおよびAll About NEWSでのライター歴は5年。
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