ヒナタカの雑食系映画論 第30回

実写ドラマ版『ONE PIECE』、なぜ予告編時点で好評? カギは「信じられる世界観とキャラクター」か

漫画やアニメの実写化には何かと批判的な意見がつきものですが、Netflixで8月31日に配信予定の実写ドラマ版『ONE PIECE』は、予告編の公開時点では好意的な意見が続出しています。その理由はどこにあるのか? 今一度まとめてみます。 (サムネイル画像出典:Netflix)

キャラクタービジュアルで「完全再現をしない」点にも称賛の声

実写化には世界観だけでなく、キャラクターのビジュアルも重要となります。ティーザー予告編では“道化のバギー”の見た目の怖さも話題となりましたが、意外な称賛が寄せられたのは「完全再現をしない」「忠実にしすぎない」こと。具体的には、「ウソップの鼻を高くしない」「サンジの眉毛をうずまきにしない」バランスになっているのです。

『ONE PIECE』の漫画やアニメは、そもそも現実からはかなりデフォルメされた表現であり、現実にはあり得ない鼻の高さ、ぐるぐるとした眉毛も「そういうキャラ」として受け入れられる“土壌”があります。しかし、実写ではそうはいきません。もしもウソップの鼻やサンジの眉毛をそのままにしてしまったら、悪い意味での滑稽さや“あり得なさ”が出てしまったことでしょう。

また、漫画でルフィが履いているのは原作では“わらじ”でしたが、実写ドラマではスニーカーに変更されています。ナミを演じたエミリー・ラッドは、このことについてInstagramで「サンダル(わらじ)はスタントでは最も安全な靴とは言えない」などと釈明。「アクションを安全かつ迫力のあるものにするため」の変更点として、こちらも肯定的に受け入れる声が寄せられています。
 

尾田栄一郎がこだわった、多様な人種のキャスティング

キャラクターでもう1つ重要なのは、多様な人種のキャスティングになっていること。ルフィを演じるイニャキ・ゴドイはメキシコ出身、ロロノア・ゾロ役の新田真剣佑は日本人、ナミ役のエミリー・ラッドはアメリカ出身、ウソップ役のジェイコブ・ロメロ・ギブソンはアフリカ系アメリカ人、サンジ役のタズ・スカイラーはアラブ人の父とイギリス人の母の間に生まれました。

以前、原作者の尾田栄一郎は、漫画のおまけページでキャラクターそれぞれの国籍イメージを発表していたこともありました。それらと今回の実写ドラマでは、それぞれの国籍が完全に一致しているわけではありませんが、尾田栄一郎自身が多様性のあるキャスティングにこだわっていたことは「顔、口の大きさ、手の大きさ、雰囲気、所作、声質、演技力、身長、仲間同志のバランス etc…!世界各国のスタッフと議論を重ね、決定しました!」などといった直筆のメッセージからもうかがい知ることができます。
 


『ONE PIECE』は世界を股にかけた大冒険の物語でもあるので、多様な国籍のキャラクターが登場する必然性もあります。現状でこのキャスティングも、おおむね肯定的な意見が多い印象です。

日本人としては、原作で“三刀流”の使い手の剣士であり、“サムライ”的なイメージもあるゾロ役に、新田真剣佑を起用したこと、そのハマりぶりもうれしくなりました。新田真剣佑は、数々の実写映画化作品で賞賛を浴びており、直近でもハリウッド映画『聖闘士星矢 The Beginning』で堂々と主演を務めています。

また、ルフィは漫画やアニメらしい「現実にはいない」タイプのデフォルメされた顔つきのため、正直に言えば、演じているイニャキ・ゴドイと見た目は似ていない(そもそも似ている人間を探すことが不可能)のですが、ルフィらしい「クレイジーなまでのポジティブさ」が存分に演技で表現されていることも称賛すべきでしょう。

キャストたちによるティーザー予告編のリアクション映像も公開されており、楽しそうなそれぞれの姿、涙ぐんでいるイニャキ・ゴドイを見ると、こちらもうれしくなります。
 
 

>次のページ:「実写化」に没入しきれない受け手の気持ちも踏まえた演出も
 
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