SNS起因の犯罪に巻き込まれた子どもの共通点とは……保護者が徹底すべきは「スマホの設定」

小中高生のスマホを所有率の増加とともに増えるSNSのトラブル。事件や犯罪に巻き込まれる前に、子どものSNS利用について保護者はどのように向き合えばよいのか、子どものスマホ利用に詳しいITジャーナリストの鈴木朋子さんにお話を聞きました。

子どもたちのスマホの所有率は増加し続け、いまや小学生の6割以上、中学生の9割以上、高校生に至ってはほぼ100%が所有している状況。そんな中、保護者として気になることの1つがSNS関連のトラブルではないでしょうか。親は子どものSNS利用をどのように管理・制限し、見守っていくべきなのか、ITジャーナリストの鈴木朋子さんにお話を聞きました。

SNSトラブルや犯罪から子どもを守るために親が徹底すべきこととは?
SNSトラブルや犯罪から子どもを守るために親が徹底すべきこととは?(画像出典:metamorworks / Shutterstock.com)

>次ページ:小学生が急増中! 子どものスマホ所有率
 

スマホの持ちはじめは勝手にチェックしてもOK

文部科学省「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」によると、子どもたちのスマホの所持率は上昇が続いている状況です。
 

スマホの持ち始めが小学生である子どもが全体の6割以上。どのようにチェックや管理をすべきなのかは悩みどころです。
 

「スマホを持ち始めて間もない時期、小学生であれば特に、本人の同意なく親が勝手にチェックしても問題はないと思います。中学生以上の場合は、個人の所有物に勝手に触れることに抵抗を感じる子どももいるかもしれません。その際には『フィルタリング』をフルに活用することをおすすめします。子どもがどんなアプリを入れているか、何に何時間使っているかなどが把握できます」(鈴木さん)

フィルタリングとは
 フィルタリングは青少年を違法・有害情報との接触から守り、安心して安全にインターネットを利用する手助けをするサービスです。現在は携帯電話事業者をはじめ各社がフィルタリングサービスを提供しており、年齢や家庭のルールに応じてカスタマイズすることが可能なものもあります。

携帯電話事業者は、携帯電話インターネット接続サービスの使用者が青少年である場合には、原則としてフィルタリングサービスを提供する義務が課せられています。(総務省

 

契約時にフィルタリング機能を付けても保護者が解除する?

子どもにスマホを購入する際には、フィルタリングサービスを追加することが義務付けられていますが、実際に活用している人は多くはないようで……。

>次ページ:未就学児でもフィルタリングを利用していない家庭が?

「フィルタリングを利用している保護者が約40%しかいないというデータがあります(総務省「我が国における青少年のインターネット利用に係るフィルタリングに関する調査」より)。購入時にフィルタリング機能を付けても、保護者の許可があればいつでも解除できてしまいます。子どもから〇〇を見たい、アプリを入れたいなどの要望があった時に、一部だけ解除するなどが面倒だったり、やり方が分からない、子どもを信用していないようで気が進まないなどの理由で、フィルタリングそのものを解除してしまうケースが多いようで、せっかくの機能を活用できていないのは残念です」(鈴木さん)

 

SNS起因の犯罪被害者の大半がフィルタリング未使用

鈴木さんによると、フィルタリングを利用しない保護者の中には、「自分が過去にネット上でトラブルなどに遭った経験がないから大丈夫だろう」「機能制限なんて大げさじゃないか」と思っているパターンも多いのだとか。
 

「限られた人がスマホを使っていたインターネット黎明(れいめい)期と違い、今は、誰でも使える時代。子どもを狙った犯罪者も多くいます。機能制限することで『自由を奪っている』と子どもに苦情を言われる場合もありますが、『守るために必要』という姿勢を貫きたいところです。免許持たずに車の運転をする、包丁の使い方を知らずに包丁を握るようなもので、子どもにとっては危険がいっぱいなんです」(鈴木さん)
 

実際に、警察庁「SNS等に起因する被害児童の現状と対策」によると、「フィルタリング利用の有無が判明した被害児童のうち、約9割が被害時にフィルタリングを利用していなかった」ことが明らかになっています。

>次ページ:被害児童の約9割がフィルタリング「未使用」という実態
 

スマホの中身はオープンに! 良好な親子関係が鍵

さまざまな事情がありフィルタリング機能で管理するのが難しい場合は、どのような方法が考えられるでしょうか。どうやら鍵となるのは「親子関係」のようです。
 

「『スマホは個人のものだから見せない』のではなくて、互いに内容に関してはオープンな状態が理想的です。『お母さんのインスタこんなコメントついたよ』『ツイッターでこんな面白いのが流れて来た』など子どもにも積極的に見せ、話題にしましょう。普段からオープンなムードにしておくと、例えば子どもが怪しいメッセージを受け取った時にも親に相談しやすいです。
 

些細なことと子どもが思っていても、実は犯罪に巻き込まれるきっかけだったりもします。ワンクリック詐欺など、親に話せずに大問題になった……なんていうことを防ぎたいですね」(鈴木さん)


新しいサービスが次々に登場し、親世代よりも子どもたちの方が詳しい分野もでてきます。親自身もスマホとの向き合い方に絶対的な自信を持っているとも限りません。
 

「新しいサービスやアプリが安全なのか分からないことも多いと思いますが、親も分からないなりに試し、子どもと交流しながらITレベルを上げていくつもりで向き合いましょう。子どものほうが詳しいなら素直に聞いて、親子のコミュニケーションのきっかけにしてください。難しい思春期の子どもたちと共通の会話ができるいいきっかけにもなるかもしれません」(鈴木さん)
 

この記事の監修者:鈴木朋子さん
ITジャーナリスト。スマホ、SNS、Webサービスなど、身近なITに関する専門家。2人の娘を持つ母親で中高生のスマホ事情にも詳しい。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶスマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。

この記事の筆者:古田綾子
雑誌・Webメディアの編集者を経てフリーランスライター。2児の母。子どもの受験をきっかけに教育分野に注力。自らの経験に基づいた保護者視点で、教育界の生の声やリアルな体験談などを取材・執筆。
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