誹謗中傷を生みやすいリアリティーショーの「悪役演出」。番組制作側に法的問題はある? 弁護士に聞いた

恋愛リアリティーショー(以下、恋リア)戦国時代といわれる現代。リアルな恋愛模様や心理描写を見たい視聴者に熱烈に支持される一方、番組にのめり込みすぎた一部の視聴者による出演者への誹謗中傷が起こっている。恋リアの問題点について、弁護士に聞いた。

恋リアでは「悪役=出演者の実際の人格」という構図になりやすい

フィクションの恋愛ドラマでは、恋が成就しそうなタイミングで、邪魔をする存在=悪役が登場する。この存在はストーリーを盛り上げるために必要不可欠だが、あくまで“フィクションの中の存在”であるため、悪役を演じた俳優の人格そのものはドラマの配役とは切り離されている。
 
一方恋リアでは、出演者同士が番組内で真剣に恋愛をしていく過程で“すんなりと恋が成就”してしまっては、視聴者としてなんの面白味もない。だから恋愛ドラマと同様に、制作側が番組内に「悪役」を登場させたり、さまざまなトラブルや事件を発生させたりする。これこそが視聴者を楽しませる仕掛けであり、恋リアが人気を博す大きな理由だ。
 
ここで問題なのは、制作側が過剰な演出をすると、一部の出演者が一方的な悪役として描かれてしまうことである。“リアル”を演出する恋リアでは「出演者の実際の人格=悪」という構図が成立しやすくなってしまう。
 

悪役演出は、人格権侵害や名誉棄損として違法になる可能性も

では、悪役を作り出す番組制作者に問題はないのだろうか。尾崎弁護士に法的な見解を聞いた。
 
尾崎弁護士「一般的に、誰かの発言を文脈から切り取って本人の意図とは異なる意味合いで使用したり、出演者の印象の悪いシーンだけをバランスを無視して切り取ったりして、あきらかに悪役として仕立て上げたような場合には、人格権侵害や、名誉棄損として違法になる可能性があります」
 
膨大な映像の中から、“視聴者ウケ”するものを切り取る作業は、番組制作側にゆだねられている。しかし事実をゆがめるような「切り取り」は、違法になる可能性があるようだ。

やらせや台本はなく、出演者の自由意思で番組が進行するのが恋リアの基本的な“建前”。しかし私たち視聴者は、あくまで恋愛リアリティー“ショー”であることを忘れてはならない。
 

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この記事の筆者:毒島 サチコ プロフィール
ライター・インタビュアー。緻密な当事者インタビューや体験談、その背景にひそむ社会問題などを切り口に、複数のWebメディアやファッション誌でコラム、リポート、インタビュー、エッセイ記事などを担当。


取材協力:尾崎聖弥 プロフィール
第一東京弁護士会。エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク所属。企業に対するコンプライアンス研修などを担当している。
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