台風やゲリラ豪雨、秋の長雨……。これから夏、秋にかけて、雨の降りやすい季節が続きます。
雨と一口に言っても、降り方によって影響は大きく変わります。思っていたより強い雨が降り、折りたたみ傘では役に立たず後悔した経験がある人もいるかもしれません。
覚えておきたい、雨の強さと「予報用語」
「今日はどんな傘を持って出かけよう?」と迷ったときに参考になるのが、雨の強さを表す言葉です。天気予報で使われる「強い雨」や「激しい雨」、「非常に激しい雨」といった表現は、気象庁が予報用語として定義していて、1時間に降る雨の量によって使い分けられます。
>「バケツをひっくり返したような雨」の量はどのぐらい?
「激しい雨」は傘を差しても濡れる
例えば、1時間に30ミリ以上の「激しい雨」は、傘を差していても濡れるくらいの強さです。こうしたときは小さな折りたたみ傘ではなく、大きく開く長傘を持ち、雨で濡れてしまっても問題ない靴や服を選びましょう。心配な場合はレインコートやレインブーツといった対策がおすすめです。
ちなみに筆者は、雨だけでなく風も強いときは頑丈で大きな傘、雪の日は前が見えやすいビニール傘、真夏の一時的な雷雨のときは日傘としても使える晴雨兼用の傘……といった感じで5種類の傘を天気によって使い分けています。
「牛乳パック50本分の雨」が増えている!?
近年、雨の強さのレベルが上がっているのではないか? という声をよく聞くようになりました。実際に全国で短い時間に大雨となる回数は年々増加しています。1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が年間で発生する回数は、最近の10年間と1970年代半ばからの10年間で比べると約1.5倍に増えています。
たった50ミリの雨で本当に大雨になるの? と感じる人もいるかもしれませんが、1時間に50ミリの雨とは1時間の間に雨水が別の場所に流れず、同じ場所に50ミリ(=5センチ)の高さまでたまる雨量です。
体積にして考えると、よりイメージしやすくなります。例えば、1平方メートルの面積の場所に、50ミリの雨水がたまる場合、体積を求める計算は以下の通りになります。
1メートル×1メートル×0.05メートル(=50ミリメートル)=0.05立方メートル
1立方メートル=1000リットルなので、0.05立方メートル=「50リットル」
となります。つまり、1時間に50ミリの雨は、1平方メートル四方で考えると50リットルもの雨量に相当するということになります。50リットルというと、牛乳パック50本分!
傘を開いたときの面積が大体1平方メートルなので、1時間で傘の上に牛乳パック50本分の雨水が落ちるようなイメージです。このレベルの雨が降っている間は外出を避けて、頑丈な建物など安全な所で過ごすようにしてください。
「車移動」は危険! 脱出用ハンマーを備えて
大雨のとき、車の中なら安全かというとそうではありません。道路が雨水で川のようになり、水しぶきで視界も悪くなると、身動きが取れなくなるおそれがあります。
2019年10月25日には千葉県で、低気圧や台風21号周辺の湿った空気の影響による大雨の中、車で移動中に水没して命を落とす事故が相次いで発生しました。車での避難は安全なイメージがありますが、周囲の変化に気付きにくく、徒歩で移動するよりも危険なことがあります。大雨のときは車の運転はなるべく控え、どうしても運転する必要がある場合は「アンダーパス」(立体交差する鉄道や道路の下を通過するため周辺の地面よりも低くなっている道路)など雨水のたまりやすい低い土地は絶対に避けるようにしてください。
また、道路が冠水して車が水没してしまい、水圧でドアや窓が開かない場合は、窓を割って脱出するほか助かる手段がありません。大雨に備えて、脱出用のハンマーを車中に用意しておくことをおすすめします。雨の季節が続くいま、最新の天気予報を活用して雨の降り方をイメージしながら安全に過ごすように心がけましょう。
この記事の執筆者:片山 美紀
気象予報士。現在は『首都圏ネットワーク』(NHK総合)などで気象解説を担当。防災情報を正しく活用してもらうための普及啓発として講演活動にも取り組む。毎日の天気予報では空や季節の変化を感じる楽しみを、いざという時は的確な防災情報を伝え、暮らしに役立つ天気予報を目指す。