首都圏平均5890万円? SUUMO編集長が教えてくれた、家が高すぎる時代の「住みたい街ランキング」活用法

どの街を選べば理想の住まいにめぐり合えるのでしょうか。不動産・住宅情報サイトSUUMOの「住みたい街ランキング」の賢い活用法を、池本洋一編集長に教えてもらいました。

暮らしやすさは街の「ソフト面」から読み取る

晴天時には、江の島と富士山が望める(湘南海岸公園)

池本編集長:一例として、「住み続けたい街ランキング」第1位の「湘南海岸公園」を見てみましょう。「住みたい街ランキング」には入っていない街ですが、実際、調査してみると「顔見知りが作りやすい」「街に住民愛がある」といった声が集まっており、街のソフト面が「住み続けたい街ランキング」からは読み取れます。その街と自分との関わり方や地元住民との関係性は、そこに実際に住んでみて、ようやく実感できるのです。

<湘南海岸公園の主な街の魅力>
・地域に顔見知りや知り合いができやすい
・街の住民が、その街のことを好きそう
・お祭りなどのイベントへ参加する
・顔なじみのお店の人が多い
・ボランティアや地位活動を共にする友人・知人が多い

考えてみてください。できれば人との接点を持ちたくないと思っている人が、湘南海岸公園のような地域コミュニティが活発な街で暮らしても楽しくないでしょう。「お祭りに行こう」「パーティーを開くから参加してね!」と声をかけられても、正直、困ってしまうはずです。だからこそ「こんなはずでは……」とならないためにも、「住み続けたい街ランキング」を使ってソフト面の魅力を調べ、こうしたイメージギャップを穴埋めしながらリスクヘッジしておいてほしいのです。
 

「街ランキング」の賢い使い分け

池本編集長:改めて、両者の使い分けを整理すると「住みたい街ランキング」=「人気駅投票」として、資産価値を図るバロメーターの1つとして活用できます。他方、自分がその街に住んで楽しく暮らせるかを知りたいなら「住み続けたい街ランキング」を利用しましょう。「顔見知りを作りたい」「コミュニティを重視したい」と考えている人にとって、まさに湘南海岸公園は「住み続けたい街」に他ならないのです。

しばしば、私が街選びや不動産選びのためのアドバイスとして申し上げていることなのですが、投資目的なら資産価値を強く意識した物件選びが必須です。利回りやリセールバリューの高さはとても重要になります。

しかし、こうした指標が高いからといって、その街の特性や自分との相性を前もって調べずに物件を購入・住み始めるのは推奨できません。サブ的に投資的な観点を頭の片隅に置きつつ、街との相性を確認して「それでも住みたい」と感じた街に住むのは問題ありませんが、「資産価値が高そう」という理由1本だけで決断するのは早計です。純粋に投資物件を買うならいいのですが、住んでいて気持ちいいと思える街を選びたい、つまり実需がメインの目的なら「住み続けたい街ランキング」を大いに活用してほしいと思っています。“資産価値ありき”の街選びには要注意です。

――最後に、賃貸住宅を探す場合のポイントを教えてください

池本編集長:マイホームを買うときには慎重に選んでほしいのですが、賃貸住宅を探す場合、特に単身あるいは2人暮らしなら「住みたい街ランキング」は参考にしつつ、気楽に興味のある街に自ら足を運んでほしいと考えています。遊びに行く感覚でかまいません。
 

そして「この街よかった」と感じたら、今度は家賃相場と物件情報を確認・検索し、本当に気に入った賃貸物件が見つかったら不動産会社に問い合わせ、気軽に部屋を見に行ったらいいと考えています。
 

なぜなら、住んだ街(住み替えた回数)が多ければ多いほど、自分がどういう街に合っているか、自分がどういう街に身を置くと心地いいか……、経験が蓄積されて自ら比較できるようになるからです。もちろん住めば都だし、自分が住んでいる街を悪くは言わないでしょうが、賃貸だからこそ身軽に(住み替えを)経験できるわけです。
 

これは私の勝手な思いではありますが、2地域や3地域での暮らしを体験すると選択の幅が広がり、自分自身あるいは家族全体を考えたときに、こうした複数拠点での暮らしを知っていると、それ自体が長い人生において「価値」となります。
 

気になったら1回遊びに行って、実際にスーパーやレストランにも立ち寄ってみてください。暮らしぶりを疑似体験してみるといいでしょう。そして気に入ったら、思い切って住み替えてはどうでしょうか。複数拠点で暮らした経験は「安心材料」になります。
 

あくまで(単身やカップルなど)身軽な時期の話にはなりますが、どういう街が自分と相性がいいか直感で選び、賃貸で1度生活してみて、その街の魅力を理解できたら、そこでマイホームを買うのが安心への第一歩となります。地縁も土地勘もなく、1度も住んだ経験のない街でいきなり住宅を買うのは避けたほうがいいでしょう。
 

自分らしく住める街探しの第一歩

住みたい街は人それぞれ。年齢や家族構成によっても異なってきます。従って、本人が納得・住み心地いい街だと感じれば、それが「正解」となります。100%実需目的であれば、自己流の価値判断でかまいません。
 

ただ、そのうえに「収益性」や「流動性」を加えたいなら、ハード面とソフト面の両方を意識した街選びが必須です。「住みたい街」と「住み続けたい街」の両ランキングをフル活用し、「市場性」を具備した住まい探しが欠かせません。人生100年時代。その間に自宅が経年劣化しては元も子もありません。「理想の街選び」=「どこに住むか」が、その成否を二分する一因となります。地縁や土地勘に加え、ランキングに基づいた客観的評価の担保が理想の「住みたい街」「住み続けたい街」発見の第一歩となります。
 

この記事の筆者:平賀 功一
住宅コンサルタント。住宅セミナー講師や住宅相談の傍らコラム執筆を行う。日本FP協会正会員(AFP)、宅地建物取引士、管理業務主任者、福祉住環境コーディネーター、住宅ローンアドバイザー、二種証券外務員。All About 賢いマンション暮らしガイド。

Lineで送る Facebookでシェア
はてなブックマークに追加

編集部が選ぶおすすめ記事

注目の連載

  • 「港区女子」というビジネスキャリア

    深刻な男女賃金格差から「港区活動」を“就職先”にする危険性。港区女子になれなかった女子大生の末路

  • ヒナタカの雑食系映画論

    草なぎ剛主演映画『碁盤斬り』が最高傑作になった7つの理由。『孤狼の血』白石和彌監督との好相性

  • 世界を知れば日本が見える

    もはや「素晴らしいニッポン」は建前か。インバウンド急拡大の今、外国人に聞いた「日本の嫌いなところ」

  • 海外から眺めてみたら! 不思議大国ジャパン

    外国人観光客向け「二重価格」は海外にも存在するが……在欧日本人が経験した「三重価格」の塩対応