ランキングを活用しながら予算内で探すコツ
――ただ、上位ランキングの街だと、販売価格の点で手が届くか心配ですが……。
池本編集長:そこで2つの方法をご紹介します。1つ目が築年数や専有面積を譲歩しながら予算内で物件を見つける方法。そして、もう1つがターミナル駅から1駅あるいは2駅ずらして予算内で物件を見つける方法です。
例えば、埼玉県内で探すなら大宮、神奈川県内なら横浜やみなとみらいとなった場合、こうした人気の街は分譲価格も高くなりやすいので、その街で住宅を買おうとした際に予算内で収まらない可能性があります。こういう時に活用してもらいたい方法です。
とりわけ私が提案したいのが、2つ目の方法です。例えば大宮駅から1駅、横浜駅から1駅2駅、最寄り駅をずらしても、日常的な生活圏は確保しつつ予算内の物件を見つけることができます。中心駅から各駅停車の駅にずらしてみるのも有効な方法です。
加えて「年代別」や「ライフステージ別」のランキングも併用すると、さらに自分にふさわしい街を選べるようになるでしょう。住みたい街は人それぞれ。年齢や家族構成によっても異なりますから、各人の属性も同時に比較することで、自分の気に入った街がどういう層に人気の街なのかを知ることができます。
例えば、新宿は「ライフステージ別」で見た場合、シングル男性世帯のシェアが半数近く(44.9%)を占める街です。そのため、総合ランキングでは5位の人気の街ですが、ファミリー層からすると「必ずしも、どうかな……」という1つの答えが導かれます。
もちろん、(新宿駅を)選んではいけないという訳ではないのですが、ランキングからは「新宿は男性向き」「シングル男性に人気の街」という傾向が読み取れます。そのため、「新宿は諦め、違う街を探そう」と判断するのか、それとも特徴を理解した上でファミリーで新宿に住むのか……。「年代別」や「ライフステージ別」のランキングを併用することで、これまで気づかなかった視点が新たに加わり、「こんなはずでは……」といったミスジャッジを回避できるようになります。2つの軸を追加・比較することで、より自分にふさわしい街が判別しやすくなるのです。
「住みたい街」と「住み“続け”たい街」はどう違う?
――住民実感を調査した「住み続けたい街ランキング」とは何が違うのですか?
池本編集長:街の魅力を知るべく、上述した「住みたい街ランキング」と複合的に使ってほしいのがSUUMO「住み続けたい街ランキング」です。「住み続けたい街ランキング」は、一面的に街選びをしてほしくないという思いから、“こういう目線での街選びもある”という新たなモノサシ(判断材料)を指し示したくて「住みたい街ランキング」とは別に作ったランキングです。
「住みたい街ランキング」は、どうしても知名度の高いターミナル駅や再開発による話題性がある駅がランキング上位に入る可能性・確率が高くなります。あくまで人気投票である以上、仕方ないのですが、その結果、「住みたい街ランキング」は知名度との兼ね合いやメディア露出の多寡によってランキングが変動するという“弱点”を抱えています。
そこで、イメージや憧れに左右されないよう、すでに住んでいる人々が日々感じている“住民実感”を聴取した調査が「住み続けたい街ランキング」です。そこに住んでいる人たちが「住んで本当によかったですか?」「これからも住み続けたいですか?」と聞かれたとき、ランキングがどう変化するかを知りたくて調査を開始しました。住民目線で評価したランキングを活用することで、あたかも“隠れた名店”のような街を見つけてほしいのです。
首都圏「住みたい街」と「住み続けたい街」ランキングを比較(2022年版)
【図1】は首都圏を対象とした「住みたい街」と「住み続けたい街」ランキングの各TOP10比較(いずれも2022年)ですが、一目瞭然、両者の顔ぶれは全然違います。特徴としてはJR沿線の駅ではなく、むしろ各駅停車の駅のほうが得点が高い傾向にあります。「住みたい街ランキング」では上位に来ない街が「住み続けたい街ランキング」では上位に来ているのです。そこに住んでいる人からすると、とても住み心地のいい街というわけです。
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