突然ですが、皆さんは「半住半投」という言葉をご存じでしょうか。半住半投とは、マイホーム選びにおいて“投資的な視点”を組み入れた住宅購入スタイルです。当初は自己居住目的で住まいを取得するものの、終の棲家(ついのすみか)としての永住は想定しておらず、いずれは購入したマンションを売却・賃貸してキャピタルゲインやインカムゲインを狙う、「実需(自己居住)」に「資産運用効果」を織り交ぜた住宅の取得方法です。
振り返れば、これまでも「売りやすい」「貸しやすい」といった“出口戦略”は意識されてきました。住まいに「居住性」とともに「収益性」を求めたからです。マイホームを「坪単価」と「利回り」で同時に価値評価するようになりました。
21年間で首都圏のマンション価格は1.5倍に
そうした中、今般、より投資的な目線(半住半投)が意識されるようになったのは、都心マンションを筆頭とした価格高騰の影響が考えられます。リクルートの「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、2001年は3871万円だった契約者全体の平均購入価格が2022年には5890万円まで上昇しました。この21年間で、およそ1.5倍(2019万円)の上昇です。2001年の調査開始以来、最も高くなっています。
同様に、不動産経済研究所の「首都圏新築マンション市場動向」からも高騰ぶりが確認できます。「首都圏新築マンション市場動向2022年のまとめ」によると、平均価格は4年連続で上昇、平米単価は10年連続で上昇し、ともに最高値を更新しています。このことから分かるように、足元の値上がり期待が「半住半投」へと購入スタイルを突き動かしています。
さらに高まる「立地」の重要性
とはいえ、どのマンションを買ってもキャピタルゲインが狙えるわけではありません。「3P」といわれるように、一般に住宅は「Place(立地)」「Price(価格)」「Plan(間取り)」の3要素を基軸として比較考量(物件の絞り込み)されますが、近年は特に「Place」に重きが置かれています。立地こそがマンションの資産価値を醸成する源泉という発想が根底にあるからです。マイホームを買うことは、同時にその地域の生活圏を買うことに等しいのです。「どこに住むか」=「理想の街選び」が「半住半投」実現の成否を二分するのです。
そこで今回、不動産・住宅情報サイトSUUMO(スーモ)の池本洋一編集長に「住みたい街ランキング」の活用法を教えてもらいました。
>「住みたい街ランキング」トップ20はどの駅?
同様のランキングは各所から発表されていますが、そのパイオニアといえるのが「住みたい街ランキング」です。リクルートが首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)に居住している人を対象に実施するWeb形式のアンケート調査で、2022年には調査数を7000人から1万人に拡大して調査精度の向上にも努めています。
以下、「住みたい街ランキング」を実際にどう活用し、どの街を選べば理想の住まいに巡り合えるのか……分譲と賃貸に分けて、その答えを導き出します。
池本編集長に聞く、「住みたい街ランキング」活用法
――住宅購入にあたり、住みたい街ランキングの上手な活用法を教えてください
池本編集長:前提条件として、SUUMOの「住みたい街ランキング」は人気投票ランキングです。この特性から「人気が高い」=「その街に住んでみたいという人の数が多い」と捉えることができるため、人気上位の街は資産価値的に比較的、安心できるエリアである可能性が高いといえます。SUUMOのサイトでネット検索する人が増えるでしょうし、住み替えの可能性も高まるエリアです。資産性(リセールバリュー)が期待できると考えます。
とはいえ、大宮に住んでいる人が(住みたい街ランキング2023首都圏版で6年連続)1位となった横浜に引っ越すべきかというと、必ずしもそうとは思いません。単純にランキングの総合順位を見るだけではなく、例えば埼玉の人であれば埼玉県(居住都県別)のランキングも同時に参照するといった、自分が住みたいと考えている地域の中で、どういう街が比較的人気なのかを知るのに(ランキングを)役立ててほしいと思っています。
総合ランキングのトップ10やトップ20だけを見てしまうと、埼玉県内で探そうとしたときに大宮(3位)や浦和(12位)、さらにトップ30まで広げても所沢(30位)しかランキング(候補地)には出て来ません。
それなら(総合ランキングの上位という理由から)横浜なのか新宿なのか、さらには目黒や、品川のような都内のビッグターミナルを選ぶのがいいのかというと、そうとも限りません。現実問題、埼玉県内で買おうと思っているのであれば、埼玉県のランキングを気にするべきです。その上で県内のどういう街が比較的人気で、これからも人気を保つかという観点でエリアの絞り込みをするといいでしょう。以上がランキングの王道的な活用法です。
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