なぜ今「チリワイン」が高級化しているのか? 古臭い大量生産の“安酒”イメージからの脱却

大量生産の安旨ワインから、小規模の高品質ワインへ。チリワインが変わりつつあります。世界的にも注目が高まりつつあるMOVI(独立系醸造家ムーブメント)について、チリワインに詳しい佐藤正樹さんに話を聞きました。

小規模高品質ワイナリー団体「MOVI」

そんな流れに待ったをかけたのがMovimiento de Vinateros Independientes(独立系醸造家ムーブメント)、通称MOVIです。
 

確かに1980年以降、チリ全体としては大量生産に舵を切っていましたが、一方で90年代頃からは効率化優先の大手ではカバーできない昔ながらの小規模畑で高品質ワインに取り組むワイナリーが出てきていました。
 
彼らは、ときに樹齢100年を超すブドウ樹が植わっていながら耕作放棄地となっている畑の所有者を説得し、ときには忘れ去られていた土着品種に着目すると言ったことを行いながら、産業化以前のチリワインの本当の魅力を発信するべく、地道に静かに技術を高めていきました。
 

先述のように大規模ワイナリーの大きすぎる存在感のため日の目を見ることのなかった彼らは、小規模・高品質の12のワイナリーを集め、2010年にMOVIを起ち上げるに至りました。実際に、世界的に有名なワインジャーナリストからも熱い視線を向けられ、12のワイナリーは今日では40近くまで広がっています。
 

国内生産の割合でいうと、まだまだ0.1%を少し上回る程度ですが、実際に現地を知る佐藤さんは言います。
 

「チリはここ数年で都市としても非常に発展してきています。新市街地などのしゃれたレストランやワインショップでは彼らのワインが並ぶことも多く、消費者の受け止められ方も確実に変化してきています」
 

大手生産者が効率化のために安価なワイン生産を突き詰めていく傍ら、実はチリワインのもう一つの姿ともいうべき、高い品質と面白みのあるストーリーに裏打ちされたワイン造りを行う団体こそがMOVIなのです。
 

そもそも40弱の生産者しかいないMOVIなので、現在日本に輸入されているワインは少量ですが、MOVI以外でも小規模生産を行うチリワインは、近年、日本でも増えてきています。小規模だからこその高い品質などに着目しながら、ぜひチリワインの魅力を再発見してみてください。
 

安藤 裕プロフィール
ノンアルコール専門商社アルト・アルコの代表取締役。大学在学中にワーキングホリデービザで単身渡仏し、現地の食文化に触れ、以来食分野でのキャリアを志す。海外のトレンドを先んじて取り入れるため日本初となるノンアルコール専門商社アルト・アルコを起業。2021年には『ノンアルコールドリンクの発想と組み立て』(誠文堂新光社)を出版。

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