東急、JR四国、JR西日本、JR貨物の4社は3月27日、「四国・瀬戸内エリアにおける新たな観光列車の取り組みについて」と題した共同会見を開催。クルーズ・トレインによる観光振興・地域活性化を目的に、東急が通常は横浜~伊豆急下田で運行している観光列車「THE ROYAL EXPRESS」を、岡山発着で四国・瀬戸内エリアに周遊するプロジェクトを発表した。
運行時期&運行ルートの概要
運行時期は、2024年1~3月の間に6回、1回の運行は4日間。走行区間は、岡山を起点に瀬戸大橋を渡り、高松へ。琴平に立ち寄った後、予讃線を経由して松山へ向かう。松山では、市内はもちろんのこと、今治しまなみ海道を専用バスで巡る。最後は、予讃線を経由して岡山に戻る。詳細は、7月頃に予定されている商品販売で明らかになるであろう。
直流電化区間で自力走行ができないわけ
全区間、直流1500Vの電化区間なので、THE ROYAL EXPRESSは夏に運行する北海道クルーズとは異なり自走できそうなものだが、そう簡単ではない。実は予讃線内には、鳥越トンネルなど断面の小さなトンネルがあるため、THE ROYAL EXPRESSのパンタグラフでは支障して通行できないのだ。このトンネル以西に入線できるのは、トンネル通過対策を施しているJR四国のほとんどの電車、寝台特急「サンライズ瀬戸」(285系電車)、JR貨物の電気機関車(EF65形、EF210形)のみである。
パンタグラフの交換をはじめ、対策を検討した結果、今回は、北海道の走行でも使用した白い電源車を介して電気機関車けん引での運行を予定している。岡山~高松はJR西日本所有の電気機関車、四国島内ではJR貨物所有の電気機関車がけん引する(JR四国は電気機関車を所有していない)。従って、THE ROYAL EXPRESSは電源車の容量に見合った5両編成(本来は8両編成)での運行となる。
車内サービス、料金、今後の展開など
車内サービスは、食事を含めて伊豆急下田行きや北海道クルーズと同じレベルのものを予定している。「ななつ星in九州」の音楽演出なども手掛けた音旅演出家でバイオリニストの大迫淳英さんによるバイオリンの生演奏も車内や停車駅で行うという。気になるツアー料金だが、80万円を超えた値段設定になる見込みだ。
機関車けん引であるならば、ディーゼル機関車に交換して高知、徳島など非電化区間の走行もあり得るのだろうか? 技術的な問題はなく、ディーゼル機関車の手配が可能であるならば、2025年以降の展開もあり得るとのこと。全ては、2024年の営業成績次第といえそうだ。
北海道に続いて、四国・瀬戸内エリアでの走行。THE ROYAL EXPRESSの全国展開がいよいよ楽しみになってきた。
取材協力、資料画像提供=東急、JR四国、JR西日本、JR貨物
野田 隆 プロフィール
名古屋市生まれ。生家の近くを走っていた中央西線のSL・D51を見て育ったことから、鉄道ファン歴が始まる。早稲田大学大学院修了後、高校で語学を教える傍ら、ヨーロッパの鉄道旅行を楽しみ、『ヨーロッパ鉄道と音楽の旅』(近代文芸社)を出版。その後、守備範囲を国内にも広げ、2010年3月で教員を退職。旅行作家として活躍中。
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