「フェミニズム=男嫌い」ではない。そもそもフェミニズムって何? “女性のため”だけのもの?

3月8日は国際女性デー。女性たちによる参政権運動などを起源とし、1975年に国連で提唱され、1977年の国連総会で議決された記念日です。改めて「フェミニズム」について、じっくり考えてみましょう。

「フェミニズム=男嫌い」というレッテル貼り、なぜ起こる?

フェミニズムの歴史には、大きく分けて4つの波があり、現在は「第4波」といわれています。2017年、ハリウッドにおける性暴力・セクハラ被害などの告発をきっかけに始まった「#Metoo」運動以降、SNSを使った新しいフェミニズムの波がきています。

SNSを通してさまざまな意見が可視化されるようになったことで、フェミニズムというと「フェミ叩き」「アンチフェミ」などを思い浮かべる人も多いと思います。しかし、フェミニズムへのバックラッシュは、今始まったものではありません。

古(いにしえ)より、フェミニズムはバックラッシュの歴史です。19世紀末~20世紀初頭にかけて、女性の参政権を求める運動などが行われた「第1波」でも、激しい反発や処罰を受けながらフェミニストたちは戦っていました。どんな時代でも、フェミニズムの波がくると、それをつぶそうとする波がくる。その繰り返しなのです。

バックラッシュによって、フェミニストは「男嫌い」「男の敵」だとレッテル貼りされてきました。しかし、フェミニストの敵は、男性ではなく、セクシスト(性差別主義者)です。フェミニストが憎んでいるのは、性差別や性暴力であり、その構造やそれに加担する人々なのです。
 

フェミニズムは「女性のため」だけのもの?

特に男性たちの中には、フェミニズムは「女性の権利のみ」を扱うものだと誤解している人も多いのですが、そうではないんですよ、とよく話すようにしています。

また、「女がメイクをしちゃいけないの?」「男が男らしくあるのは悪いこと?」というように、フェミニズムの解釈を誤解している人もいます。

フェミニズムとは、個人の生き方や選択を否定するものではなく、むしろ真逆で、個人の選択を尊重しようという考え方。だから、例えば、メイクや脱毛をしたい人はすればいいし、したくない人はしなくていい。「男・女は○○するべき」と強制されることなく、それぞれに好きなものを選べる社会を目指すのがフェミニズムなんです。

以前、男子校で授業を行った際に、男の子たちが「自分の趣味を『女っぽい』といじられ、傷ついた経験があるけれど、その傷つきが和らぎました」「お菓子作りが好きなんだけど、『女子力が高いね』とからかわれるのがいやだ」と話してくれました。

このように、ジェンダーバイアスによって、女の子だけじゃなく男の子も傷つくし、翼を折られるんです。それぞれが個性や才能を伸ばせるような社会を目指すーーつまり、フェミニズムは“みんなのもの”なんですよ。

フェミニズムを限定的なものにしてしまうと、ジェンダー平等が進まないし、フェミニズムも広がらない。だから私は、男性にも伝わるように発信するよう心がけています。男性も巻き込んでいかないと、社会は永遠に変わりませんから。
 

フェミニズムを、もっと気軽なものにするために

「ジェンダーや社会問題について周りの人と気軽に話しづらい」「フェミ友が欲しい」と感じている人は多いですよね。そういう人は、気軽に話せるコミュニティーを見つけるのがおすすめです。

私は地元・神戸で「東灘区ジェンダーしゃべり場」というイベントをフェミ友たちと開催しています。ジェンダーに関する問題から、子育ての悩み、日頃のモヤモヤまで、さまざまなことをみんなで語り合う場です。


参加者は、高校生から年配の方まで幅広く、ジェンダー研究者や教員や弁護士や漫画家さんなど、さまざまな職業の人がいます。また、開催時には「無料の託児所」を設けているので、子育て中の人も安心して参加してくれています。

各地域の男女共同参画センターなどでも、ジェンダーに関するイベントや相談できる場を作っています。フェミニズムをもっと気軽に取り入れ、自分たちが生きやすい社会を目指すためにも、シスターフッド的な連帯でつながる場を探してみてはいかがでしょうか。


アルテイシアのプロフィール
『ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法』(幻冬舎文庫)2023年
作家・コラムニスト。新刊『ヘルジャパンを女が自由に楽しく生き延びる方法』をはじめ、『田嶋先生に人生救われた私がフェミニズムを語っていいですか!?』『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』『フェミニズムに出会って長生きしたくなった』『モヤる言葉、ヤバイ人』など多数の書籍を出版。また、講師としてジェンダーやフェミニズムなどに関する講演や授業も行う。地元・神戸で東灘区ジェンダーしゃべり場も開催。


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