「私は伊藤ではなく伊東です」。ビジネスメールで相手の名前を間違え続けた場合の対処法

ネット社会にあふれる「シン・日本語」をプロライター兼コラムニストの山田ゴメスが考察する「山田Gのシン・日本語辞典」。シリーズ【vol.16】は、ビジネスメールで相手の名前を間違え続けていた場合の対処法について。

SNSで話題の新語からメールマナー、大人の常識では解読できない若者言葉まで。増殖し続ける「シン・日本語」をプロライター歴30年の山田ゴメスが考察する。
 

vol.16 ビジネスメールで相手の名前を間違え続けていた場合の対処法

得意先の「いとう」さんから届いたメール(編集部で再現)​​

筆者が、とある仕事の得意先である「いとう」さんから、知り合って約3カ月後にいただいたメールにあった、用件最後の追伸的な文面。
 

考察

筆者は今、猛烈に悩んでいる。

すでに知り合って3年以上もたっており、下手をすれば100回近くものメールのやりとりを交わしてきた「音部(おとべ)」さんの名前を、これまでず〜〜〜〜〜っと……「乙部様」と打ち間違え続けてきたことに、ひょんなきっかけでつい最近気付いてしまったのだ。

サムネイルに挙げた伊東さんのケースは、言ってもたかがまだ3カ月(※たとえ3カ月でも……いや、1度っきりの誤記でも十分に失礼な話なんだが)、しかも、伊東さんに関してはご自身から勇気を出して(?)筆者のミスを指摘してくださったから、
 

「うわ! マジですか!? 心の底からお詫びいたします! まことに、まことに申し訳ございませんでしたm(__)mm(__)mm(__)m」
 

……と、フランクながらも相当クドめなお詫びメールでどうにか事無きを得た(※本当に事無きを得ているのか否かは疑問だが?)。しかし、音部さんにいたっては3カ月どころか3年である!
 

しかも、本人は十中八九かなり早い段階で気付いているはずのに、「どーでもいい」と考えているのか、そういうことをなかなか切り出せない案外ハートが弱いタイプなのか……現時点でも筆者のミスをスルーしたまんまなので、当方としても、逆にその対処とタイミングが実にデリケイトでむずかしい。

もう10年以上も前の昔、某大手出版社が発行する某ハイファッション系のコンサバ女性誌で、俳優の「あいぶさき」について論じる記事を執筆する機会があったのだけれど、そのとき筆者は「相武紗季」のことを「愛部沙樹」と誤って書いてしまい、編集者から、
 

「1文字も合ってないじゃないですか!」
 

……と、大目玉を食らった苦い経験がある。大手出版社が出す紙媒体なら、厳しい倍率の就職試験を乗り越えてきた優秀な編集者や、一切の誤字や矛盾をも見逃さない最強の校閲部門がバックに控えているから、まだいい(全然よくはないのだがw)。大目玉を食らうだけで、それが未修正状態で世に出ることも、致命的なトラブルにまで発展したりすることも……(ほぼ)100%ない。
 

一方のメールのやりとりは……当たり前だが、自分が編集者でもあり校閲者でもある。すなわち“最後のとりで”となってしまうがゆえ、名前の打ち間違え……例えば、
 

・斉藤さんと斎藤さん
・堀田さんと掘田さん
・山本さんと山元さん
・本田さんと本多さん
・宗方さんと宗像さん
・阿部さんと安倍さんと安部さん
・裕子さんと祐子さん
 

……なんかのいかにもヤラかしてしまいがちな先方さんと対峙(たいじ)する際は、特に万全の注意を払うべきだろう。
 

さて! 冒頭の「音部さん」問題に戻るが、この期に及んで筆者ができる対策は、思いつく限り3つある。
 

(1)あえて「乙部様」で通し続ける
(2)サラッとさり気なく「音部様」と書き換える
(3)早急に自ら間違いを認め、ひたすら詫びる
 

常識的に考えたらどう転んでも(3)が正解なのだが……3年間の年月は長すぎた! 「今更」感がハンパ無さすぎるからなのか、気恥ずかしくて気恥ずかしくてたまらない……。
 

※ちなみに、某コスメ系PR企業の女性広報さんは、筆者にメールをよこすとき、いまだ必ず宛名を「山田コスメ様」と書いてくる。コッチはコッチでそれを指摘すべきか、放置しておくか……ジャッジが難しい?
 

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