SNSで話題の新語、大人の常識では解読できない若者言葉まで。ネット社会に増殖し続ける「シン・日本語」をプロライター歴30年の山田ゴメスが考察する。
vol.15「俺」「僕」「私」「自分」…… 一人称をどれにすればいいか問題
12月某日に誕生日を迎えた筆者が、自らを祝うために自ら用意したバースデーケーキ。
考察
とあるおじさんがツイッターに投稿した「イチゴのホールケーキの上に飾られたバースデープレート」の写真が、プチバズりしているとのうわさを聞いた。
プレートに書かれたメッセージは、なんと「Happy Birthday おれ」!
自虐とウィットが絶妙なバランスで並立する見事な自己演出だと感心……を通り越して感動した。感動のあまり、2022年の12月に還暦を迎えた筆者も早速まねしてみると……。注文する際の、ケーキ屋の店員の何か不思議な超常現象をのぞき見するような視線はいささか恥ずかしかったものの、仕上がりはなかなかに不気味なオーラを放つ、珠玉の出来であった。
「僕」でも「私」でも「自分」でもご本人のお名前でもあだ名でもなく、平仮名で「おれ」というチョイスが完ペキ! このシチュエーションにおいて、ビジュアル・音感ともにインパクトの面で、これ以上の一人称は存在しないと筆者は断言したい。
……と、そんなわけで、今日は「自分で自分のことを呼ぶ」とき、――すなわち「一人称をどうすべきなのか」問題について、ここで論じてみよう。
「僕」「俺」「私」「アタシ」「自分」「ゴメス(※ファーストネーム呼び)」「勝也(※ゴメスの本名)」「かつくん(※本名をあだ名化したもの)」「吾が輩」「小生」「おいら(※ひろゆき調)」「ぼくちん」「オレっち」「アタイ(※スケバン調)」「ウチ」「ワシ」「ワイ(※男女問わず北海道出身の人に多いとのうわさ)」「ミー」……ほかもろもろ、まだまだどんどんと頭に浮かんでくる。挙げても挙げてもキリがない。
文筆業という職に就く筆者からすれば、例えば「俺」「オレ」「おれ」と、これらを漢字で書くかカタカナで書くか平仮名にひらくか……でも、ずいぶん印象が変わってくる。特に、連載コラムがスタートするときなんかは、いつも「どれにしよっか……」と悩んでしまう。
とりあえず、会話の際は、関西男性が意外に愛用しがちとされている「僕」にしている。執筆の際も、昔は主にカタカナの「ボク」だったが、50歳を越えたあたりからは「ボク」だとちょっと幼稚っぽいな……という理由で「私」か平仮名の「わたし」がメインになり、今では媒体の性質によって硬軟使い分けている。ちなみに、本連載では「日本語へのこだわりが強いっぽいヒト」を演出するため(?)、「筆者」を使用している。
文章をしたためる者にとって「自分のキャラクターに1番合った一人称を選ぶこと」は、とても重要な作業である。その選んだ一人称で、第三者が抱く“あなたのイメージ”の少なからずが確定してしまうと言っても過言ではないからだ。
ましてや、筆者のような文筆のプロフェッショナルだけではなく、素人でもメールやLINEなどで頻繁に書き文字でやりとりしなければならない今日このごろ……もっと、そこらへんの感性を磨くことに対してデリケートであるべきだと筆者は思うのだが、いかがだろう?
>実際の投稿で感動してみる
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