【ネタバレあり】物議の映画『スラムダンク』。30年来のファンがガチで『THE FIRST SLAM DUNK』を語る

12月3日から全国公開された、新作アニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』。公開前にはテレビアニメの声優一新で炎上するなど物議を醸し出した話題作の感想を『SLAM DUNK』ファン歴30年のライターが語ります!※画像出典:映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式サイト

※以降は映画本編のネタバレがあります。未見の人はご注意ください。
 

いよいよ映画公開! 想像以上の臨場感で、劇場内は“湘北応援サイド”に

(出典:映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式サイト​​​​​)

映画『THE FIRST SLAM DUNK』公開初日は、「2022 FIFAワールドカップ」でサッカー日本代表がスペインに勝利し、日本中が歓喜に沸いた試合の翌日。勝利の余韻に浸ったまま映画鑑賞に臨んだ人も多かったはずです。筆者としては、言わば“リアルではない試合”との差を感じてしまうのでは……と一抹の不安も。でも、そんな心配はスクリーンを前にして、一瞬で消えました。

カメラワーク、とでも言うのでしょうか。画面いっぱいに、想像以上の臨場感で試合が展開されていくのです。こんなアングルから選手の動きが見られるなんて! 選手が動くとユニフォームが揺れる。そんな細かいリアルさにも鳥肌が立ちます。フルタイムでこの試合を見ていたい……。リアルさに加えて、リアルでは実現できない角度からの試合観戦をも可能にしてくれました。
 
画像出典:プレスリリース

漫画を読んでいたときから筆者が虜(とりこ)になっていたのは、井上雄彦さんの描くバスケのかっこよさ。間近で選手たちを見ているような躍動感で、次の展開に緊張しすぎて、気付けば息を止めて読み進めることもしばしば。

連載当時、小学校で器楽部部長だった筆者は、三井寿さながら「安西先生、バスケがしたいです!」と思い立ち、中学校入学とともに楽器を放り、バスケ部に入部。同じく、後に美大に進む体育嫌いな友人のMちゃんも、絵筆を放り、バッシュを履きました。誰もが「花道のようにいつかダンクができる!」と熱狂し、ミニバス経験者は流川やリョータを目指しました。社会現象を巻き起こした『SLAM DUNK』の影響力は、読む人を次々にバスケに駆り立てるほど、強力だったのです。

井上雄彦さんの描く、その“かっこいいバスケ”が、まさか大スクリーンで見られる日が来るなんて……。

映画の内容は、原作でも描かれた「山王工業戦」がメイン。原作ファンであれば、結果を分かっているはずなのに、湘北がシュートを決めれば喜び、三井寿のスリーポイントが決まる瞬間はシュート音に耳を澄ませ、フリースローでは息をのみ、劇場内はバスケの試合会場そのもの。全員が湘北応援サイドにいるかのような、妙な一体感を感じるほどでした。

 

沖縄県が舞台? 観たことのない『SLAM DUNK』

(出典:映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式サイト​​​​​)

『THE FIRST SLAM DUNK』というタイトルの由縁を感じたのは、沖縄県という『SLAM DUNK』になじみのない舞台からストーリーが始まったこと。湘北高校2年・宮城リョータの少年時代、家族の物語が映し出され、今まで見ることのなかった宮城リョータの静かで悲しいバックグラウンドを知ることとなります。

宮城家のエピソードがかなり深く描かれていることについて、映画の公式パンフレットによると、「連載時、僕は20代だったから高校生側の視点のほうが得意というか、それしか知らなかったんです。そこから年をとって視野が広がり、描きたいものも広がってきた」と井上雄彦さんは語っています。

連載当時、読者は、湘北高校の躍進や主人公・桜木花道の成長を追うことで頭がいっぱいでした。それは、おそらく作者である井上雄彦さんも同様だったのではないでしょうか。

作品が30周年を迎えたように、読者もそれぞれの人生を30年分過ごしてきました。その中で、努力はしてみたけど、花道のように誰もがダンクは決められるわけではないことを知ったり、3on3のコートがある家に住むという夢も叶えることができなかったり……。おそらく、当時の読者がこの30年の間にさまざまな挫折、成功、諦めを経験したように、『SLAM DUNK』も成長したのだな、と。新たに加えられたストーリーを見て、時の流れを痛いほど感じるのでした。
 

三井のバスケ復帰や安西先生の名言。もっと語ってほしかった原作の魅力

井上雄彦さんの思惑どおり、『THE FIRST SLAM DUNK』は、“こんな『SLAM DUNK』は初めて観た”という衝撃を与えてくれました。

しかし、ファンとしては「映画内でもっと描いてほしかったシーン」が多かったことも事実。

例えば、映画だけでは、湘北高校の対戦相手「山王工業」の選手1人1人の愛らしいキャラクターは描かれていません。三井寿がバスケに復帰するエピソードは、とてもコマ切れには語り切れないし、最後の花道と流川のタッチは、今までの2人の関係を知ってこそ、震えるほどの重みがあるのです。

そして何より、今まで、受験、仕事、恋愛にいたるまで、人生の随所で励まし鼓舞してくれた、安西先生の「あきらめたらそこで試合終了ですよ」という名ゼリフ。筆者にとっては人生の格言ともいえる言葉が、劇中では突然さらりと、あまりにもさらりと言い放たれていて、一瞬耳を疑ったほど……。ここは少しショックでした。
 

30年間変わらない魅力と、これからの『SLAM DUNK』


連載当時、兄が買ってくる『週刊少年ジャンプ』で『SLAM DUNK』を読んだ印象は、とにかく「かっこいい」のひと言。登場人物の表情、髪型、体つき、制服の着こなしを表現する圧倒的な画力。キャラクター設定やバスケの動き、何よりも「自分もやってやる!」という思いが込み上げてくるストーリー。全てが“イケてる”漫画だったのです。

『THE FIRST SLAM DUNK』でも、その魅力は変わりませんでした。さらに、原作そのものの湘北メンバーが動く姿が見られるなど、叶わないと思っていたことが現実に。テレビアニメも好きでしたが、井上雄彦さんの並外れた画力による登場人物が、まさにリアルに動き出したのが、今回公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』でした。

 1ファンとしては、井上雄彦さんの思い描く『SLAM DUNK』を、「FIRST」だけとはいわず、まだまだ見せてほしい……。何より、私たちの青春を、こうして物語にしてくれて感謝の気持ちが止まらない……映画を見終わった今でも心地よい余韻に包まれています。


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