国立社会保障・人口問題研究所が発表した「第16回 出生動向基本調査」によると、「女性のライフコース」の項目において、パートナーに仕事と子育ての「両立コース」を望む男性が約4割で過去最多となった。結婚して出産をしても、働き続けることがスタンダードになりつつある現代。共働きに対する3人のアラサー女性の本音を紹介する。
仕事は好き。でも、共働きじゃないと「やっていけない」のも本音
「子育てにはお金がかかるので、共働きじゃないとやっていけないですよね」こう話すのは、千奈美さん(31歳/広報)。彼女は夏に第1子を出産、現在育休中で、年内には職場に復帰する予定だ。
「出産前もギリギリまで働いていて。元々テレワークが普及している会社だったので、自宅で仕事ができたのは助かりました。これから子どもが大きくなるにつれて、いろいろとお金もかかってくると思うので、職場復帰しようと思っています。旦那は都内の会社で経理の仕事をしているのですが、彼1人の給料で、家族3人、我慢することも増えると思うし……。現在子どもは1人ですが、来年再来年にはもう1人欲しいねと話しています。旦那の給料だけで、東京で2人を育て上げるのは大変だと思うので、私は仕事を続けるつもりです」
千奈美さんは会社のホームページに働く女性のロールモデルとして取り上げられている。会社の育児制度をフル活用しながら、今度も仕事と子育てを両立するつもりだ。
「もちろん仕事が好きだから、ずっと続けたいと思っているけれど、共働きじゃないとやっていけないっていうのも本音です」
現状は専業主婦。理由は「会社のみんなに申し訳ない」から
結婚・出産をしても、働き続けると言う千奈美さんに対し、出産と同時に仕事を辞めた人もいる。美紀さん(33歳/専業主婦)もその1人だ。「広告代理店の営業の仕事をしていました。昨年、出産したのを機に退職し、今は専業主婦です。会社の制度として、産休や育休はあったのですが、私の所属していた部署の案件は若い独身が多く、チームで動かしているので、休んだ分、誰かの負担が必ず重くなるし、もし、子どもが熱を出して早退、とかの緊急事態のときに、『会社のみんなに申し訳ない……』って思っちゃうから。これは、私の性格の問題だと思います」
美紀さんは、子どもが大きくなったら職場に復帰することを考えている。
「旦那の給料だけで生活はできるのですが、やっぱり自分でもお金を稼ぎたいな、と思う瞬間があります。たとえば、友人の誕生日プレゼントを選ぶとき、毎月の自分の稼ぎがあれば、もっとすてきなものを買えるのに……と。それに、最近児童館で仲良くなったママさん達は、みんなバリバリ働いているんです。だから私も会社に迷惑をかけない程度に子どもが手を離れたら、働きにでるつもりです。夫もそれを望んでいます」
男性も女性に「経済力」を求めている
前述した「出生動向基本調査」で、「女性のライフコース」の項目において、パートナーに仕事と子育ての「両立コース」を望む男性が約4割で過去最多となった。また同調査の中で、男性は、女性に「経済力」を重視または考慮するようになり(48.2%:前回41.9%)、女性は男性の「家事・育児の能力や姿勢」を重視する割合が大きく上昇している(70.2%:前回57.7%)。
先日、玉のこし婚を狙うアラサー女性を取材したが、彼女のように、元から専業主婦志望の女性は少数派で、現在は共働きが主流なようだ。
「DINKs=共働きで子どもを持たない夫婦」を選んだ理由
そんな中、こんな共働き夫婦の意見もある。「やりがいのある仕事をやって、夫がいてくれたらそれでいいなって思います。連日、テレビで子どもが巻き込まれた事件が流れているのを見ると、子どもは欲しくないと思ってしまう」
こう話すのは、琉美さん(29歳/ファッション販売)だ。彼女は結婚しているが、一生子どもを作る気はないという。その条件が一致した夫と今は2人暮らしだ。
琉美さん夫婦は、自分たちの意思で「子どもを産まずに2人の生活を続けよう」と決めた夫婦=DINKsだ。
DINKs(ディンクス)とは、「Double Income(共働き)No Kids(子どもを持たない)夫婦」を示す造語で、現代の新しい夫婦生活の形としてたびたび話題に上がる。
「昔からあまり子どもが欲しいと思ったことがなくて。親は遠方に住んでいるので子育てのサポートを受けることもできないですし。友人に『働きながらちゃんとした親になれる自信がない』と言うと、『えー、親って生まれたら勝手になれるものだよ』みたいに言われた時『は?』でした。だったらこんなに子どもの事件・事故のニュースは流れないだろう、と。それに私は、子どもの頃に、金銭的に苦労することもあったので、自分の子どもに我慢させてしまうことがあるかもと考えたら……。やっぱり今の自分に子育ては考えられないかな」
琉美さんは「今まで通り共働きで、夫婦2人で豊かな生活を送るのが理想」と語る。
共働き、子育て事情は「東京か地方か」にも大きく左右される
今回取材した「子育てと仕事を両立する女性」「仕事を辞めて子育てに専念した女性」そして、そもそも「子どもは欲しくないと考える女性」の3人は、ライフスタイルこそ異なるものの、2つの共通点があるように感じた。1つ目は、3人とも仕事に対する意欲が高いことだ。千奈美さんと琉美さんは、会社での地位を確立している。一方、美紀さんは、仕事に対しての責任感が高いがゆえ、退職を選択したようにも思える。
2つ目の共通点は、全員、大学進学を機に地方から上京し、現在都内の会社で働いていることだ。
「昔は結婚・子育ては地元でしたいと考えていました。でも、地元にはやりたい仕事がないので……」
前述した千奈美さんはこう語る。彼女は九州出身だ。
総務省が1月に発表した住民基本台帳に基づく東京都の女性の「転入超過」は、6777人。年代別で見ると、全体の約3割が、20~24歳の若い女性だ。
上記に紹介した3人と同じく、大学進学とともに上京し、自らのキャリアを大切にしながら生きていきたいと考える女性は多い。しかし、地元に戻ると、キャリア志向の女性たちが就きたいと考える職場は少ない。結果として、東京に全国からキャリア志向の女性が集中する状況が続いているのだ。
「子育てだけを考えたら、親もいるし、地元がいいなと思います。だって東京で子育てするにはお金がかかるし。でも、東京でしかできない仕事をしたい。結果として、東京で働いて子どもを育ててって感じですかね。夫とは家事や子育ても分担してます」
千奈美さんは今後も東京で、仕事と子育てを両立していくという。
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