一般人の「ご報告」投稿にモヤッとする人が続出。なぜSNSで自分の不幸を“ネタ”にしたがるのか

芸能人やインフルエンサーの中には、破局や離婚をSNSなどで公表する人が多い。最近では、一般人でも「ご報告」と題して、破局や離婚の旨を投稿する人が多いようだ。なぜ私たちは、一般人の「ご報告」投稿にモヤっとしてしまうのか。令和のSNSとの向き合い方について考察する。

9月27日、ブロガーで作家のはあちゅうさんと、セクシー男優のしみけんさんが、事実婚を解消したことをSNSで公表。また、離婚騒動があったタレントの坂口杏里さんも、実は離婚していなかったことを報告した。このように、芸能人やインフルエンサーは破局や離婚を公表することが多いが、一般人の中でもSNSで“ご報告”をする人は多く、一連の投稿にモヤっとする人も続出している。“ご報告投稿”であふれる「令和のSNS」とどう向き合っていけばいいのだろうか。

 

「芸能人でもないのに」Instagramでの“離婚のご報告”にモヤモヤ

「幸せな『ご報告』に紛れて、不幸な『ご報告』が流れてきて」
 
こう話すのは、サチさん(28歳)。彼女は友人のInstagramでの離婚報告にモヤモヤしているようだ。
 
「周りが婚約ラッシュで、特に6月は『【ご報告】かねてよりお付き合いしていた彼と婚約しました!』みたいな文面と婚約指輪の投稿であふれていました。幸せな報告を見るのはうれしいのですが、その中に、青空画像とともに離婚の【ご報告】という投稿があって」
 
「離婚し、自分らしく生きていく」といった内容の投稿だったようだが、サチさんはこの投稿に違和感を覚えた。
 
サチさんの取材から作成したイメージ画像
 
「芸能人でもないのに、わざわざ【ご報告】を世界に発信する必要があるのだろうか、と。Instagramはオープンで誰でも見られるようになっていて、タグに 『#離婚したい人と繋がりたい』とついていました。まるで離婚をネタにしているようにも見えて。『フォロー外から失礼します。離婚おめでとうございます!』みたいな見ず知らずの人からコメントがついていました。それに対しても丁寧に返信したり、離婚に悩む人にアドバイスをしていたり」
 
離婚した旦那さんとも知り合いだったサチさんは、見方によっては「旦那さんだけに離婚の原因がある」とも読み取れる文面にも嫌悪感を抱いたという。
 
「後日、友人同士でお茶をしていると『〇〇離婚したみたいだね。旦那さんに原因があったらしいね。不倫とか?』と、そんな話になっていました」
 

SNSでのご報告自体、見たくない

 有名人でもない一般人の離婚報告にモヤっとする人は多い。しかし中には、結婚報告ですら「モヤッとする」という声も。
 
「3カ月前に、FacebookとTwitter、Instagram、全て辞めました」
 
こう語るのは、ハルミさん(27歳)。フリーのWEBライターとして働く彼女は、突然全てのアカウントを削除した。
 
「仕事の情報収集として、SNSはやるべきなんですが、プライベートのアカウント兼仕事のアカウントなので、地元や大学時代の友人の情報が入ってくる。その中で『【ご報告】かねてより付き合っていた方と~』みたいな投稿が目に入ってくると、病むんです。自分が東京で消耗している間に、地元の友人たちは前に進んでるんだって。結婚は、本来お祝いすべきことなのに、それを喜べない状況にも自己嫌悪に陥っちゃって」
 
ハルミさんは、SNSを辞める前、こんなことを考えていた。
 
「自分がうまくいっていないときって、SNSは見ないほうがいいと思うんです。アカウントを消す前に、Twitterで『友人たちは結婚したり、子どもを産んだりして、前に進んでるけど、私は何も変わってない。27歳こんなはずじゃなかった』みたいな投稿をしたところ、わりと反響があって。あぁ、私と同じように悩んでる人っているんだな、って。それからわりと、病み投稿と言うか、不幸自慢と言うか、そういう投稿をすることが増えました。でも、『いいね』の数が少なかったりすると、落ち込んだりして。精神衛生上よくないな、と思って全てのアカウントを消したんです」
 
「当分SNSはいいや」と言っていたハルミさんだが、この取材の4日後、Twitterアカウントが復活していた。

 

「幸せ」「不幸」二極化するSNS投稿

 2人の話を聞いた後、改めてSNSを覗いてみた。すると、ある傾向に気付く。Instagramに流れてくる投稿は、おおよそ二極化しているように見えたのだ。

「結婚しました!」「高級フレンチへいきました!」「マイホームを買いました!」「子どもができました!」といった、幸せな報告。毎日のように豪華な食事やブランド物を紹介する一般人アカウントもある。一方で、「今日は〇〇を食べました」と言った日常を切り取ったような投稿は、あるにはあるが多くはない。
 
また、もう1つ目立つのが「別れました」「身内が亡くなりました」といった不幸投稿。この投稿がよく見られるのは、いずれも一般人アカウントではあるものの、一般人とインフルエンサーの境目であるフォロワー500~1000人程度のオープンアカウントであることが多いようだ。
 
幸せ投稿、不幸投稿は共に、「いいね」やコメントを獲得しやすいネタである。他人から認められたいという心理が強く働いているのかもしれない。
 

Twitterの“自称〇〇”の正体は……

 先日、Twitterで数万人のフォロワーを持ち、“モテテク”を投稿している男性とリモート越しにお会いした。彼のアカウントには、モテるために「こうあるべきだ」といった名言がツイートされ、投稿には毎回数千の「いいね」がつく。
 
「きっとイケメンなんだろうな……」と、ドキドキしていたが、画面に映ったのは、口数の少ない小太りの中年男性で、毒舌に恋愛格言を吐くTwitterからは想像できない優しくて寡黙な男性だったのだ。
 
筆者は仕事柄、SNSの投稿を見て取材を申し込むことも多い。そこで感じるのは、SNS上で毒舌な人が実はとても優しい人だったり、逆に素晴らしい人格者だと思っていた人が横暴な態度を取ったりするケースが多いことだ。それはインフルエンサーに関わらず、一般人にもいえることかもしれない。
 
SNSの投稿に真実はない。「幸せ」と「不幸」を極端に切り取った投稿に一喜一憂せず、「全て虚構」と思うくらい割り切ったほうが、SNSとうまく付き合っていけそうだ。


※回答者のコメントは原文ママ


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