「モテる」という概念に疲れた。男ウケ服、ケータイ小説が作った“平成モテ文化”にアラサー世代が思うこと

アラサー世代が思春期だった頃、女性誌には、決まり文句のように「モテ特集」が存在した。現代では、価値観がアップデートされつつあるものの、マッチングアプリや婚活の場面では「モテる」「モテない」の指標が当たり前のように存在している。アラサー世代が抱える「モテ」の呪縛とは?

今のアラサーは「モテ」「愛され」「男ウケ」に染まってきた世代?


現在のアラサー世代が思春期だった頃、おしゃれや恋愛に関する情報集めの定番は、ファッション誌や“ガラケー”だったのではないだろうか。
 
特にファッション誌には決まり文句のように「モテ」「愛され」「男ウケ」という特集が並び、次々と新しい「モテ文化」が登場した。2000年代後期の代表的なものをいくつか振り返る。
 

■王道モテ系を確立した「エビちゃんコーデ」

2000年代後期から、モテ系ファッションが登場したといわれている。赤文字系雑誌『CanCam』のモデルだった、エビちゃんこと蛯原友里さんが王道の「モテスタイル」を確立し、当時10代後半~20代前半だった現在のアラサー世代に人気を博した。エビちゃんコーデとは、いわゆるキラキラOL風や、女子アナ風の着こなしを指し、王道のモテコーデとされた。
 

■男ウケ抜群と言われた「ゆるふわ系女子」の誕生

「自然派」「ナチュラルメイク」などをうたい、Aラインの膝丈スカートや、ゆったりとしたワンピースなどを着こなした“ゆるふわ系コーデ”も男ウケ抜群と言われた。俳優の蒼井優さんや、宮崎あおいさんがファッションアイコンに。
 

■デコログ(Decolog)や前略プロフィールで「恋人います」アピール

アラサー世代が思春期だった頃の発信ツールといえば、元祖SNSともいわれる、デコログや前略プロフィール。前略プロフィールは質問に答える形式で、自身のプロフィールを作成でき、友人に見せたり、他の人と絡んだりするツールとして人気を博した。ギャル文字とデコメを乱用し、自分に恋人がいるアピールをする人や、モテ自慢をする人も。デコログには「since~」と、恋人との記念日を記載し、2人のプリクラをアップする人もたくさんいた。
 

■とんでもない展開も“純愛”だった「ケータイ小説」

ポエムではじまり、ポエムで終わる。アラサー世代の恋愛バイブルといえば「ケータイ小説」。2006年に書籍化された『恋空』が大ヒットし、クリアカバーの本がクラスで回し読みされていた。題材は、レイプ、妊娠、死など、かなり過激なものを扱っているが、それらを含め、宣伝では「純愛」と打ち出される。主人公が何人もの男性に言い寄られ、その中から純愛を見つけていく……というのが定番の展開で、ケータイ小説の主人公のようにモテたい女子も続出。
 

■ネット恋愛も流行「モバゲー」「GREE」「mixi」

携帯電話向けポータルサイトとして普及し、一時代を築いたネットサービス。日記や掲示板はもちろん、地域ごとに作られたサークルで交流する人も多く、そこから恋愛に発展することも。顔が見えない分、かわいいデコメやアバターなどで自己アピールし、現実世界では恋人がいないけれど、ネットには複数恋人がいる猛者も現れた。
 
上記に挙げたものは、どれもアラサーの筆者が実際に使い、触れた文化だ。こうやって羅列していくと私たちアラサー世代と「モテ文化」は密接に関わり合っている。
 
「モテ」「愛され」「男ウケ」……そんな言葉とともに青春時代を過ごしたアラサー世代だが、今、残酷な現実にぶちあたっているようだ。
 

あの頃の“モテ文化”が生んだ残酷な現実

「モテないほうじゃないけど」
 
こう話すのは、リョウコさん(仮名・33歳)。10代の頃に読者モデル経験がある彼女は、すらりとした美人で、いわゆる“女子アナ風”のファッションに身を包む。
 
リョウコさんは、合コンにいっても必ず後日男性からデートに誘われるという。しかし……
 
「先日、真面目そうな男性たちと合コンしたら、『女性は1人6000円ね』って言われて。割り勘とか人生初めてでびっくり。そのうちの1人の男性に、デートに誘われたので行ってみたら、全然リードしてくれなくて。草食系男子っていうんですかね? 今まで肉食系とばかり付き合ってきたから、なんだかピンと来なくて」
 
表面的に見れば「モテる女性」の代表であるリョウコさんだが、受け身で高飛車な彼女は、婚活苦戦中だ。彼女の中に根強く残る「自分はモテる」という意識が、婚活で大きな障害となっている。
 

いまだ根強く残る「男ウケ」ファッション

「恋愛コラムに『モテない』と書いてあって」
 
こう話すのは、ミチコさん(仮名・29歳)。彼女は昨年、彼氏と別れたのをきっかけに、新しい出会いを探しているが、ある婚活記事が目に留まったのだという。
 
「マッチングアプリで出会った男性とデートしたけど、うまくいかなくて。なんでうまくいかなかったのかな……とスマホで検索してみたら、もしかしたら私の服装が良くなかったんじゃないかって。その恋愛コラムには、『婚活中、ブランド物のバッグやアクセサリーは身につけないほうがいい』と書いてあったんです。金のかかる女だと思われる、と」
 
ミチコさんは、デートの際、ボーナスで買ったカルティエの時計を付けていたという。自分で買ったブランド時計が非モテにつながるとは到底思えないが、ミチコさんはこの恋愛コラムを信じている。
 
「次回からは、ノーブランドでデートにいく予定(笑)」
 

受け身な「平成モテ」から脱却し、主体的な「令和モテ」へ

リョウコさんとミチコさんの話を聞いてみると、彼女たちは共通して「モテ」は、受け身で、男性に選ばれるためのものだと考えている。
 
実際、彼女たちは男ウケを狙った服装を意識し、リョウコさんのように男性から好意を寄せられても、アプローチされない=モテないことを不満に思う。ミチコさんのように「あれがモテなかったのかな」と“男ウケ”にとらわれる……そんな現象が生まれている。
 
前述したように、アラサー世代は「モテ文化」の中で思春期を過ごし「モテる」「モテない」が自分の価値を図る指標となっているのは事実である。
 
しかし、令和に入り、「モテ」はアップデートされているようだ。近年、ファッション誌から「モテ」「愛され」「男ウケ」という言葉は消えつつある。その代わり、「選べる私」「自分磨き」「私らしく恋したい」など、自分主体の言葉が並ぶ。
 
アラサー世代が思春期を過ごした「モテ文化」は、万人の男性ウケを狙い、モテることに受け身な文化であったが、今は自分が主体性を持ってモテにいく、選びにいく、という価値観に変わりつつあるようだ。

ここまで考えていくと、もはや「モテ」は、死語のように思えてくるが、否定することはできない。誰だって、好きな人には「モテたい」のだから。これは時代が移り変わっても変わらない事実。好きな人に好かれるためなら、努力だってする。
 
しかしそれは、誰かのための努力ではなく、自分のための努力。好かれるため、全て自分が主体性を持っている……そう考えれば、アラサー世代の「モテ」アップデートも完了しそうだ。


※回答者のコメントは原文ママです


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