「値上げしない」企業は他企業と比べて何が違うのか
では、こんな厳しい時代に「値上げしない」に踏みとどまることができる企業というのは、価格競争から脱落した企業と比べて何が違うのか。
よく言われるのは、「スケールメリット」だ。
例えば、イオンの「トップバリュ」がなぜ安いのかというと、製造委託先のメーカーに対して計画的に大量に注文をするからだ。メーカー側からすれば工場の稼働率も上がるのはもちろん、先々の生産計画が立てられるため原料などを一括して調達できるので、コストを圧縮して価格を抑えているのだ。また、全国にあるイオンの物流センターを活用して、輸送費のコストを削減している。
もう1つ大きいのは、「製造直販」だ。つまり、原料の調達から輸送、そして販売まで他社へ委託することなく、全て自社で一括して行うのだ。その代表が「外食における製造直販業」を目指すと宣言しているサイゼリヤだ。
《中間に様々な人手が介入すればするだけ意思が通じなくなるばかりか、コストが嵩んでいきます。サイゼリヤは自ら産地に赴き、素材の開発、素材の採り方、保管の仕方、加工の仕方、輸送の仕方に至るまで、すべての工程に踏み入り、品質の向上とムダの削減に取り組んでいます》出典:サイゼリヤホームページ
自前で全てやっているので価格もコントロールしやすい。もちろん、このようなインフラを整備するにはそれだけの資金と手間はかかるので、やはり「スケールメリット」の1つという見方もできる。
そこに加えて、ベタな手法だが「効率化の追及」というのも大きい。
例えば、シャトレーゼは輸送コストをかけることなく生産をするため、原料を調達する契約農家の近くに自社工場を作る「ファームファクトリー」という手法を用いている。また、同社ではコスト削減策を社内公募する制度もあり、「今年1~5月の5カ月間で採用された提案を全て合わせると、年2億円以上のコスト削減効果が期待できる」(週刊朝日7月15日号)