2021年の自殺者数は前年よりやや減少したものの、2万人超。この中には18歳以下の子どもも含まれています。しかも小中高生の自殺は長期休み明け前後に増加する傾向にあり、間もなく夏休み明けの時期。周囲の大人はどんなことに心掛ければよいのか、あらためて考えておきたいところです。
学年が上がるごとに増加… 自殺した子どもが置かれていた状況は?
文部科学省が公開した「令和2年度(2020年度)児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2021年10月公開)の結果によると、- 小・中・高等学校から報告のあった自殺した児童生徒数は415人
- 前年度(2019年度)317人と比べると98人の増加
- 調査開始以降で最多
学年別では、小1から高3まで、学年が上がるごとに人数は増加傾向にあります。男女別でみると、中学生ではやや女子が多く、高校生になると男子の割合が高くなる傾向。「自殺した児童生徒が置かれていた状況」としては、「家庭不和」「父母等の叱責」「進路問題」「友人関係での悩み」など多岐にわたります。
夏休み明けを控え、政府からもメッセージ
文部科学省「児童生徒の自殺対策について」(2022年2月)には、「18歳以下の自殺は、これまでの自殺者数の推移によると、学校の長期休業明けに自殺者数は増加傾向にある」
と記載されています。この傾向を受け、文部科学省は、児童生徒や学生に向けた自殺予防に関わるメッセージを文部科学省公式サイト・SNSに掲載しました。
と子どもたちに呼び掛け、保護者に向けて掲載されたメッセージには、下記のように記載されています。みなさんへ文部科学大臣よりメッセージがあります。
夏休みが終わって、学校が始まることで悩みや困ったことはありませんか?
※文部科学大臣メッセージ「~不安や悩みがあったら話してみよう~」より引用
・これまでに関心のあった事柄に対して興味を失う
・成績が急に落ちる
・注意が集中できなくなる
・身だしなみを気にしなくなる
・健康管理や自己管理がおろそかになる
・不眠、食欲不振、体重減少などのさまざまな身体の不調を訴える
こうした子供の 態度に現れる微妙なサインに注意を払っていただき、子供たちの不安や悩み の声に耳を傾けて適切に受け止めていただくとともに、学校、家庭、地域、 警察や医療機関などの関係機関等で緊密な連携体制を築いていただきますようお願いいたします。
※文部科学大臣メッセージ「~不安や悩みがあったら話してみよう~」より引用
子どもの「変化」はどうチェックする? 保護者目線で発見したい
小学生の場合は、自分の状況や気持ちをうまく表現できずにいるかもしれません。一方、中高生以上で思春期・反抗期を迎えている子どもは、素直に親と向き合えなかったり、そもそも家庭内での会話が減っているなど、親が気づきにくい年代といえます。子どもが抱えている悩みに向き合い、解決するヒントとして、教育評論家・親野智可等さんは以下のようにアドバイスしています(参考:親野智可等さん公式サイト「親力で決まる子供の将来」より)。
例えば、子どもが「私なんていない方がいいんだ。もう消えてしまいたい」などショッキングなことを言い出したときは、「急にどうしちゃったの? そんなこと言わないで」と動揺したり、「何言ってるの?そんなこと言ってないでもっとがんばりなさい」ととがめるような口調で返すのはNGなのだとか。
「やっぱり言うんじゃなかった。もう何も言わないようにしよう」と思って、口を閉ざすようになり、ストレスを自分の中に溜め込むようになってしまうそう。
とのこと。こういうNGな対応にならないために、まずは親が冷静になることが大切です。
そして、閑かな落ち着いた声で、しかも優しく温かい口調で次のように言ってください。
「そうなんだ……。すごくつらいんだね。よっぽどイヤなことがあったんだね。ママにお話聞かせて」
「それはつらいね。でも、よく言ってくれたね。ありがとう。何があったのか教えてくれる?」
このように共感的に言ってもらえると、子どもは話しやすくなります。
というのも、「お母さんは私のことをわかろうとしてくれている。お母さんなら私のつらい気持ちをわかってくれる」と思えるからです。
大切なのは、まず子どもへの共感を最優先して、その次にもう少し詳しく話してもらうという順番にすることです。
※親野智可等さん公式サイト「親力で決まる子供の将来」より引用
先生や親に叱られたり、勉強や習い事でうまくいかなかったり、子どもなりにさまざまな悩みを抱え、日々の生活と向き合っています。少しでも様子がおかしいときや、SOSを発信してきたときは、落ち着いて向き合えるような心構えをしておきたいところ。
宿題が終わっていなくて提出できなくても、久しぶりの早起きに機嫌が悪くても、ひとまず無事に登校できたら◎ということにしてあげたいですね。
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