日本ならではの判子(ハンコ)を押すという文化。判子を押すときに、2つの言葉をが使われれます。「捺印する」「押印する」という言葉ですが、どちらを使えば正しいのかご存じですか? 一見同じ言葉に聞こえますが、実は意味が異なります。今回は「押印」「捺印」それぞれの意味と使い方を解説していきます。
<目次>
・「押印」と「捺印」の違いと読み方
・「押印」の意味
・「捺印」の意味
・「押印」と「捺印」の法的効力における違い
・脱ハンコが求められている理由・背景
・【押印】を使うシーンは? 気になるマナーについて
・【捺印】を使うシーンは? 気になるマナーについて
・「調印」や「押捺」など他にも間違えやすい類義語
・ビジネスシーンでは「押印」「捺印」を正しく使おう
「押印」と「捺印」の違いと読み方
押印とは、「押」を音読みして「オウ」、「印」も音読みして「イン」と読みます。押印するという漢字を見てみると印を押すと読み取れるため、ハンコを押す作業を意味すると理解できます。
このハンコを押す際に、印刷された書類にハンコを押すことを「押印」といいます。つまり、住所や名前を自筆で書いたものとともに押したハンコに関しては「押印」とはいいません。
捺印とは、「捺」を音読みして「ナツ」と読みますが、訓読みすると「オス」となります。押印と同じ意味合いがあり、印を手で押し付けるという意味があります。捺印は、押印と違って、自筆でのサインとともにハンコを押すことをいいます。
「押印」の意味
印判を押すこと。捺印(なついん)。もと「捺印」が用いられたが、当用漢字の制定、および「法令用語改正要領」の施行によって、この語が用いられるようになった(『精選版 日本国語大辞典』)。
「捺印」の意味
捺印とは、契約書などにおいて署名(サイン)したことを証明するために印鑑を押すことである。「署名捺印」は、自分の名前を自筆で手書き(サイン)し、判子を押すことである(『実用日本語表現辞典』)。
「押印」と「捺印」の法的効力における違い
「押印」と「捺印」は、法的文書に対して印章を押す行為を指しますが、その効力には以下のような違いがあります。・押印の場合
印章を使って紙の上に直接押すことを指します。押印は、印章の形状やデザインが明確に見えるため、印章の真正性や所有者の確認が容易です。また、押印された文書は、印章の形状やデザインが変更されない限り、後からの改ざんが困難です。・捺印の場合
印章をインクや転写テープなどに付けて、それを紙に押し付けることを指します。捺印は、印章の形状やデザインが直接見えないため、真正性や所有者の確認が押印よりも難しい場合があります。また、捺印された文書は、後からの改ざんが比較的容易に行われる可能性があります。したがって、法的効力を重視する場合は、押印が推奨されることが一般的です。ただし、国や地域によっては、捺印も法的に有効とされる場合がありますので、詳細な法律や規制を確認することが重要です。
脱ハンコが求められている理由・背景
・効率化、コスト削減
ハンコを使用するプロセスは時間がかかり、非効率的です。電子承認などのデジタル化により業務の迅速化が図れます。また、紙や印鑑の製造、保管、管理にかかるコストを削減できること、紙の使用を減らすことで、環境保護にも貢献できます。・デジタル化(DX化)の推進
政府や企業のデジタルトランスフォーメーションを進めるため、紙ベースの作業から電子化への移行が必要になります。・リモートワークの普及
新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが普及し、物理的なハンコが障壁となっています。・セキュリティの向上
デジタル署名などは、改ざんが難しく、セキュリティが高いとされています。【押印】を使うシーンは? 気になるマナーについて
社内での稟議(稟議書、各種申請書等の決裁書類)や、出勤や退勤などの勤怠の承認では押印を使うことが多いです。いわゆる社外向けではなく、社内でのルーティンワークで使われるのが押印にあたることが多いといえます。
【捺印】を使うシーンは? 気になるマナーについて
契約書の締結など社外での取引き(契約書、請求書・納品書などの帳票)では、サインと捺印を求められることが多いです。何か金額の高い買い物をする際も了承しましたというサインと捺印を求められることが多いでしょう。
これは、自筆のサインに加えてハンコを押す方がより効力があるとされていることが挙げられます。
「調印」や「押捺」など他にも間違えやすい類義語
調印とは、条約・協定などの内容が確定したとき、それに関係する当事国の代表者がその公文書に署名すること。※「平和条約に―する」『デジタル大辞泉』(小学館)より
この通り、普段生活している中で使うことのない用語ではありますが、国際的な公文書などに署名をすることとなっているので、他国との取引きの際に使われるのが調印とされています。
押捺は、印判を押すことのほか、指紋を押すことについても使われます。1952年に施行された外国人登録法で、日本国内に滞在する外国人が、生年月日や居住地などを「登録」する際、指紋を押すようこの押印が義務付けられていました。
これは、よりそのハンコに効力をもたせるために使われた手法です。
ビジネスシーンでは「押印」「捺印」を正しく使おう
ビジネスシーンにおいて必須なハンコ文化ですが、ハンコの起源は紀元前7千年以上前のメソポタミア文明からの歴史があります。もともとは、「版行・板行(はんこう)」が音変化した言葉で、漢字で「判子」と書くのは当て字(語源由来辞典)です。
そんな歴史あるハンコですが、現在では、ビジネスシーンにおいてなど契約を結ぶときには必ずといっていいほど用いられています。
このハンコを押す際に用いられる押印と捺印には、大きな違いはありません。しかし、綿密にいえば押印はハンコを押すこと。捺印は署名してハンコを押すことです。よって、捺印の方がより効力があるとされています。
書類に手書きでサインをするのかしないとかで、押印と捺印を使い分けてみてください。
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