「配布」と「配付」の違いは? 正しい使い分けや意味、英語表現を現役アナウンサーが解説

「はいふ」という言葉には「配布」と「配付」で2種類の表記があります。これらは何が違うのでしょうか。言葉の使い方や似た言葉についてもフリーアナウンサーが解説しましょう。

「配布」と「配付」の違いは? 正しい使い方や似た言葉を現役アナウンサーが解説
「配布」「配付」の違いはなに? 

何かを配るという意味で使う「はいふ」という言葉。漢字で書くと「配布」「配付」と2種類の表記があります。
 

同じ読み方で、意味もよく似た2つの言葉ですが、どのように使い分ければよいのでしょう。
 

今回は「配布」と「配付」の違いについて、現役フリーアナウンサーの笠井美穂が解説していきます。


<目次>
「配布」と「配付」の違いとは? それぞれの意味
「配布」と「配付」の使い分け方
新聞では「配布」という表記が一般的
「配布」と「配付」の例文・使い方
「配布」「配付」の類語は?
「配布」と「配付」の英語表現
「配布」と「配付」は何を目的とするのかに注目

 

「配布」と「配付」の違いとは? それぞれの意味

まずは、それぞれの言葉の意味を『大辞林 4.0』(三省堂)やNHK放送文化研究所のWebページ(2001年4月1日掲載)で確認してみます。

・配布
「配布」の意味は、広くゆきわたるように配ること。「広く配って行き渡らせる」「あまねく一般に行き渡るように配る」ことを意味します。

「配布」の「布(ふ)」は「広く行き渡らせる」という意味です。

「布教(ふきょう)」や「分布(ぶんぷ)」などの熟語はこの意味で「布」が使われています。

・配付
「配付」の意味は、一人一人にくばりわたすこと。「特定の人々一人一人に配る」「関係者めいめいに与え渡す」ことを意味することばです。

「配付」の「付(ふ)」には、「物を手渡す。授け与える。」という意味があります。

「給付(きゅうふ)」や「付与(ふよ)」「交付(こうふ)」などで使われる「付」はこの意味です。

「配布」と「配付」は、いずれも「配る」という意味は共通していますが、どのように配るかに違いがあります。

「配布」と「配付」の使い分け方

「配布」と「配付」は、意味に違いがあるとはいえ、厳密に使い分けるのは非常に難しい言葉です。
 

例えば、『類語大辞典』(講談社)には「配付」の用例として「生徒にテスト用紙を配付する」とある一方、『日本語 語感の辞典』(岩波書店)には、「配布」の用例として「教室でプリントを配布する」とあります。

どちらも非常に似た状況ですが、それぞれ違う「はいふ」が使われています。
 

この2つの違いを考えてみると、「生徒にテスト用紙をはいふする」という場合、テスト用紙を受け取るのはそのテストを受ける生徒、つまり特定の対象・関係者ですから「配付」。
 

一方、「教室でプリントをはいふする」は、特定の個人に対して配るのではなく、その集団(学校や学年、クラス)に所属している人に広く行き渡らせることを目的に配るため「配布」としていると考えられます。
 

ただ、この「プリント」というのが難しいところで、一般的なお知らせではなく、返信が必要なものや、授業で使う教材や課題などの場合は、テストと同様に「配付」とする方が適切に感じます。

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新聞では「配布」という表記が一般的

さまざまな辞書や、NHKの放送の基準では「配付」と「配布」の使い分けが示されていますが、新聞では少し勝手が違います。
 

『朝日新聞の用語の手引』(朝日新聞出版)や『記者ハンドブック 新聞用字用語集』(共同通信社)など新聞や通信各社が出している用語集には、新聞では「はいふ」は「配布」という表記に統一すると基準が示されています。「配付」と「配布」を細かな意味で使い分けるのではなく、広く「配る」という意味を表す言葉としてまとめてくくり、「配布」とされているようです。
 
使い分けに迷った場合、「配布」という表記を使えば、それが厳密には「配付」の意味であったとしても、大きな違和感を与えることはないかもしれません。

「配布」と「配付」の例文・使い方

「配布」と「配付」の使い分け方を、具体的な例文と共に示します。
 
「配布」の例文・使い方
・イベント会場で1000枚のチラシを配布する予定です。
・街頭で無料サンプルを配布しています。
・開業1周年に合わせて割引券を配布します。
 
「配付」の例文・使い方
・教科書はオリエンテーションの後、各教室で配付されます。
・会議の参加者には事前に資料を配付しておいてください。
・今回の作業で使う道具は現場で配付します。

「配布」「配付」の類語は?

最後に、「はいふ」と読むもう1つの言葉をご紹介します。

・配賦
個々に割り当てること。個々に割り振ること。配分」(『大辞林 4.0』)という意味で、「資金を配賦する」などのように使われます。
 

「配付」や「配布」が実際に何かを配ることを表すのに対し、「配賦」は割り振ることを意味する言葉ですので混同することは少ないかと思いますが、この機会に覚えてみてください。

「配布」と「配付」の英語表現

「配布」は英語で 「distribution」と表現されることが多いです。「配付」も同様に「distribution」または「handout」と表現されることがあります。

ただし、文脈によっては「dissemination」や「allocation」などの言葉が適切な場合もあります。

「配布」と「配付」は何を目的とするのかに注目

何かを配るときに使う「はいふ」。
 

不特定多数の人に行き渡るように広く配る場合は「配布」、特定の対象に対して配る場合は「配付」と表記します。
 

よく似た言葉ですが、何を目的として配るのかに注目して使い分けてみてください。


■執筆者プロフィール

プロフィール写真

笠井 美穂(かさい みほ)
福岡県出身。九州大学文学部を卒業後、KYT鹿児島讀賣テレビに入社。退社後は、報道番組を中心にフリーアナウンサーとして活動。これまでの出演は、NHK北九州放送局『ニュースブリッジ北九州』、NHK BS1『BSニュース』、NHK Eテレ『手話ニュース』、NHK ラジオ第1『NHKきょうのニュース』『ラジオニュース』など。

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