脇毛を「剃らない」発信に批判? 女は“見られるもの”で、男は“見るもの”という理不尽な差別

【TikTokで話題】人気インフルエンサーが脇毛を剃らない自身の姿を発信して話題になった。ありのままの姿を否定されるのは、なぜ女性ばかりなのだろう。

脇毛を“剃らない”のは気持ち悪い?

TikTokで5万人以上のフォロアーを抱える20歳のインフルエンサー・Grace Rivers(以下グレース)が脇毛を剃らないことについて発信、それに対しては「男性にモテない」「気持ち悪い」「不衛生」などの批判も含むさまざまなメッセージが寄せられているらしい。

 


今年7月にも、世界的ファッション誌『VOGUE』の表紙に脇毛を処理していない有名女優が登場して話題になった。

>脇毛を剃らない女性たちの実際の投稿を見る

男性は剃らなくていいのに女性は剃るべきという考え方は、今の時代においては理不尽かもしれない。あくまで個人の自由なのだから。

一方、40歳の女性インフルエンサーが肌を露出するなと言われたり、ふくよかな女性がおへそのチラ見せを非難されたり、と「人のこどなど放っておけば?」の類いがネットをにぎわせている。対象になるのはいつも女性。他人は他の女性の外見がそれほど気になるのだろうか。
 

「きれいならいいけど……」という差別目線

「何をしようときれいならいいけど、というのが一般人の本音かもしれませんね」

そう言うのはアヤノさん(40歳)だ。周りを見ていても、スレンダーできれいなママ友がノースリーブを着ていても誰も非難はしないが、少しぽっちゃり体型の人が同じようにノースリーブを着ていると「なにあれ」と噂されることが多いと言う。

「ママ友だけじゃないですね。私はパートで働いていますが、若い女性が肌を露出するのはいいけど、結婚していたらダメみたいな風潮はある。年齢や属性でファッションが決めつけられるのは少しめんどうだなと感じています」

彼女がなにげなく夫にそんな話をしたら、「でもさ、太っている人が肌を見せたりするのは公害だよね」と不穏当な発言があった。

「だったら男が短パンはいてすね毛を見せるのも、非常に不愉快だからやめてほしいと思う。自分が不愉快だからって他人を批判するのは社会生活で許されるものなのかと言ったら、夫は黙ってしまった。しばらくたって『だって、女性は見られてなんぼでしょ』と。その目線がすでに差別だよと思いました」

女は見られるもの、男は見るものという、長きにわたる理不尽な差別。実際には今や男も客体として見られていること、見られて評価されていることを知るべきだとアヤノさんは言う。

「若い男のすね毛はいいけど、40歳過ぎたらやめてくれと言われたら、男性たちはどう思うんでしょうね。私の友人で、家の中で夫の短パン禁止令を出している女性がいますが、彼女の言い分は『気持ち悪いから』だそう(笑)。家の中で夫に対してなら通用しますよね。うちの夫も夏は家でも短パンなので、本当はやめてほしいところです」

家ではくつろぎたいという夫の意向を尊重はしていると彼女は苦笑した。
 

「したいようにすればいい」けど……

「私の周りでも必要以上に肌を露出している女性がいますし、職場では気になることもあるけど、基本的には好きにすればいいと思っています」

そう言うのはナルミさん(44歳)だ。こういう問題はTPOが大事だから、職場では首を傾げざるを得ないこともあるが、それも本人のありようだし、よほど会社として困惑するようなことでなければかまわないと鷹揚だ。

「私が若いころは職場で、ネイルは一切禁止、カラーリングもダメと言われていたんです。今はピンク系のネイル、濃いめの茶髪ならOK。お堅い職場なんですが、それでも変わってきた。勤続20年で3週間ほどの休みをもらったとき、私、金髪にしました(笑)。一度はやってみたかったけど仕事を続けている限りできませんから。そうやって息抜きできる場はあるから、ふだんはマニュアルに沿った範囲でおしゃれを楽しんでいます。それも含めてのお給料だと思っているので」

どんなかっこうをしようが個人の勝手という考え方もあれば、多少規則が厳しくても職場の雰囲気を乱さないとする人もいる。このあたりもそれぞれの価値観なのだろう。

「ただ、自分とは違うからといって人を非難するのは違うと思う。私の勤務先でも、濃いめのピンクのネイルをしている人はいますが、それが社外の人にどう思われるかが問題ですよね。私はある程度、濃いめでも見て見ぬふりをします。誰が見てもちょっと……と感じるようなら問題でしょうけど」

「誰が見ても」というのがむずかしいところではある。真っ赤なネイルをなんとも思わない人もいれば、派手すぎると感じる人もいるだろうから。肌の露出に関しても同様だ。誰にも何も言われないようにしようと思えば、ファッションはつまらないものになる。

「常識の範囲」が通用しない世の中になりつつあるのかもしれない。だからこそ「個性」はそのまま尊重されるべきなのか、あるいは他者の「不愉快」まで甘受しなければいけないのか、誰もが迷うところなのではないだろうか。

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亀山 早苗プロフィール
フリーライター。明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。


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